鳥取県岩美町『浜勝商店』一九百(つづお)さんから「ばばちゃん(タナカゲンゲ)」、「おとく(ガンコ)」、「どぎ(ノロゲンゲ)」、ヒメクロザコエビが送られてきた。
タナカゲンゲは岩美町の役場職員川上寿郎さんの発案で、地元名「ばば」に「ちゃん」をつけて、鍋ものになって現地での名物になっているもの。ガンコのうまさはわかっているものの、この大きなタナカゲンゲをいかに調理するか? 考えあぐねて、八王子総合卸売センター『さくら』のまささんに丸投げすることにした。
八王子総合卸売センター『さくら』はラーメンの世界ではかなり有名な店。でもこの店の本当の凄さは、自由な発想で作り出される中華料理にある、とボクなどわかりかけてきている。中華料理の腕がいいので、「中華そば」がうまいわけだ。
タナカゲンゲの半身を持ち込み「ハイ!」と手渡し。これを三枚に卸して、あれこれ勝手に悩んでもらっている間に隣の『市場寿司 たか』へ。ここで「おとく(ガンコ)」と「ばばちゃん(タナカゲンゲ)」の握りを撮影。
「これはうまくはないなー。生で食べても旨味がない。こっちは皮目を焼いたヤツ、これが湯引きね。そしてなんにもやってないの。こっちの小さいヤツ(「おとく」)はもっと難しいね」
たかさんの感想に同感である。
撮影の合間に、『さくら』にもどる。
「まず生で中華のタレで食べますか」
まささんの作ったタレは酢と醤油と自家製唐辛子味噌と各種調味料を合わせたもの。これをキュウリを包んで食べる。
撮影は『さくら』ではなく『市場寿司 たか』で行う。これは『さくら』よりも『市場寿司 たか』の方がホワイトバランスがとりやすいため。
たかさんとふたりでこれを味見する。
「このタレうまいね」
「魚はどう?」
「どうって、なに? わかんねーや」
すなわち味がないのである。
またまた『さくら』にとって帰ると、かたくり粉をまぶしたタナカゲンゲの身をゆでている。これをスープで煮込んで出来上がったのが、まるで高級中華料理店の一皿のごときもの。
「どうでしょうね?」
これまた『市場寿司 たか』で撮影するとともに、試食する。
「うまいねー。うまいよ。火を通すとうまいんだね」
たかさんはお代わりまでして、このタナカゲンゲの中華風煮込みを大絶賛。
『さくら』にもどると八王子総合卸売センター『総市』商事部のタヌキオヤジが来ていたので、コヤツにも味見させる。
「塩味が足りないけど、うまいよ」
このタヌキオヤジ、漬物にでも、あらゆるものに醤油を湯水の如くかける病的な塩分大好き人なので「塩味たりない」は無視していい。
この「ばばちゃん中華風煮込み」がすこぶるつきにうまい。ほとんど「皿をなめ回したいほどのうまさ」とはこんなものを言うのかも知れない。なかでも驚いたのがタナカゲンゲの身がうまいことだ。生で食べて旨味がほとんど感じられなかったのに、不思議で、不思議で堪らない。
そして最後に来たのが、これは『さくら』の奥さん特製の「ばばちゃんスープ」。中骨で出しをとり、ただ単に塩味のスープなのに、これがまた美味なのである。
●クリックすると拡大
もっとも単純な塩味だけのスープがうまい
しかし『さくら』、おそるべし。これからも魚の料理に悩んだら、まささんにお願いするしかない。
「まささん、お願い。絶対に繁盛店にならないでね。ボクと遊んでくれなくなったら困る(注/最近徐々に客の数が増えていて不安だ)」
あまりのうまさに、ついついあらぬ事を口走ってしまった。ごめんなさい。
また滅多に手に入らない「おとく」を探して、タナカゲンゲなどと詰め合わせて送ってくれた『浜勝商店』一九百(つづお)さんに感謝。
『浜勝商店』
http://www.hamakatu.co.jp/
八王子の市場に関しては
http://www.zukan-bouz.com/zkan/sagasu/toukyou/hatiouji/hatiouji.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、タナカゲンゲへ
http://www.zukan-bouz.com/suzuki/gengeamoku/genge/tanakagenge.html
ガンコへ
http://www.zukan-bouz.com/kasago/uranaikajika/ganko.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
お父さんが子供のために作る02 アカザエビのタルタルソースサンドイッチ 後の記事 »
ごっこ鍋はうまいか?