北海道、青森県などで「ごっこ」と呼ばれている、ぶよぶよして、やたらにメタボリックで、不細工で、汚い色合いの魚は標準和名をホテイウオという。この魚を布袋さんに例えたのは天才的な閃きというしかない。前から見てご覧よ、本当に布袋様なんだから。
この魚、その昔には漁師さんたちが賄いで食べるくらいで、あまり食用として出回るようなものではなかったようだ。それがいつの間にかぶよぶよした不思議な食感のせいか、鍋材料として北海道などで人気が出てきている。値段も決して安いものではない。
市場にはオスとメスが分けられて入荷してくる。メスが大きくオスが小柄な、それこそノミの夫婦そのもの。そして体格に合わせるかのようにメスの方が断然高い。なぜかというに、そのメスの太り気味のゴムマリのような身体の半分近くが卵巣で占められていて、これがうまいからだ。
北海道では、メスの「ごっこ(ホテイウオ)」をとにかくぶつ切りにして、卵巣共々鍋にするようだ。ところが、ボクが思うに、この卵巣入りの鍋がうまいとはぜんぜん思えない。湯引きして、滑りを丁寧に水洗いして昆布だしで鍋に仕立てるのだけど、卵巣はバラバラになって沈んでしまう。このバラバラした卵のどこがうまいんだろう、理解不能だ。
我が家では卵巣は別に醤油漬けにする。そして身は肝、胃袋などとともに湯がき、きれいに滑りをとる。
これをじっくり昆布だしでたくのだ。そうするとこのぶよぶよした身からジワリと旨味が染み出してくる。素晴らしい出しとなる。味つけは醤油と酒だけでいい。
ここまで書いたらおわかりだろうけど、鍋にする限りオスでもメスでもなんら違いはない。あえて言えば白子のあるオスの方が旨味に富んでいる。だから「鍋」と決めたらオスを買い求めて、とにかくぶつ切りにして、うまい出しとともにぶよぶよした食感を楽しむのだ。ちなみにボクは、このぶよぶよした身がそんなにうまいと思ったことはない。鍋材料としては下手だな、とも思う。
でも寒い夜には、このブニュブニュしたとらえどころのない鍋もまた“よろし”と思えるようになっている。五十路になって、間口の広い考え方が出来るようになったということか。これまた感慨深いものである。
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ホテイウオへ
http://www.zukan-bouz.com/kasago/sonota/hotei.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
迷惑を顧みず、『さくら』のまささん、『市場寿司 たか』のたかさんに奮闘努力してもらう 後の記事 »
おとくさんは鍋物の秘密兵器か?
殆ど同感ですね。
昔安かったので何度か鍋で食べましたけど、卵はまさにその通り。
しかも加熱するとなんだか微妙に不思議な渋味みたいなものまで出てきたり。
なんでこれの値が上がってきたのかサッパリです。
骨が殆ど無いのは食べるに楽でいいんですけどね。
せつなさん、
ボクの記憶では昔から珍しさもあって、
それなりの値段がついていましたね。
築地などでは珍しいということでも
値段がつくんです。
また魚好きなら一度は
お試し願いたいモノですよね。