「婆の手」よりも「母の手」

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 八王子綜合卸売協同組合『マル幸』に「ババノテ」という貝が入荷していた。
 クマゴロウが「なんだろね、これ?」というので見たらエゾキンチャクガイだ。
 エゾキンチャクガイは東北より北の枚貝で、ホタテガイなどと同じ場所に暮らす。当然、ホタテガイ漁をすると混ざるのでまとまれば関東の市場にも入荷してくる。ただし量的には非常に少ないものだ。
 1個100円は高いが、めったに入荷するようなものではない。とにかく10個ほども買い求めて、『市場寿司 たか』で握りを撮影。
 そのとき奇遇にも、ボクの『つり丸』のコラムを読んでくれているという方が居合わせて、一緒に『寿司図鑑』体験をしていただく。
 その身も肝、ワタなどもうまかったー。ヒモだってコリコリと甘味があって、感激。おっ、おおっと、ここでのことは『寿司図鑑』に書くとして。

 持ち帰ったものを刺身と、ムニエルにして味わう。それがまた「絶品」としか言いようのない味わい。刺身の甘さもホタテガイの負けず劣らず、なによりもムニエルがうまかった。どうもこのように「貝自体がうまい」というものには複雑な料理は必要としないようだ。

 久しぶりに味わうエゾキンチャクガイに感激しながら「婆の手」という呼び名は失礼だろう、と改めて思う。「婆の手」というのは根室地方の呼び名らしいが、これが函館だったら「母の手(母貝)」なのだ。
 千葉市の、『どんぐりつうしん』変集長・谷口さんから、お聞きしたところでは、函館では「お母さんの手のようにごつごつしている」から「母貝」というらしい。その昔の炊事で手が荒れた優しいお母さんの手のような貝、これは優しそうだし、いい表現であるな。

 ボク、ぼうずコンニャクは幼い頃に「母ちゃん」を無くしており、その母の愛情というものを知るすべもなかった。これは我が人生でどうにも取り返しようにない、補いようのないもの。当然、母の愛情というのには強く憧れている。
 ひとりエゾキンチャクガイの節くれ立った指のような畝を見ながら、突然名状しがたい気持ちになってきた。なんだか寂しいなー。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、エゾキンチャクガイ
http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/pteriomorphia/itaya/ezokinchaku.html


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このページは、管理人が2008年2月 6日 12:29に書いたブログ記事です。

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