岩美町観光課の川上寿郎さんにお会いできたのは、今回最大の幸運だった。
テレビなどでも散々取り上げられていた、「ばばちゃん」の生みの親が、なんと川上さんであると言うこと。そして岩美町の振興に心砕いている、またいろいろアイデアを出して、新しいきっかけを探してもいる川上さんの日々に驚かされた。
さて、今回の島根県を目的地とする旅の最初に、いろいろ考えて、島根に行く前に出来ることの第一は、お隣の鳥取県の水産物を見ておくことだという結論に達する。
それで我が家にある本や知り合いの仲卸業の人たち、はたまた市場関係者から聞いて出てきたのが、当たり前のようだけど「松葉がに」のことだらけ。「松葉がに」にはとても手が届かないと思案しているとき「それじゃ、『ばばちゃん』のこともあるし、岩美町によったらどうだろう」と言ってくれた人がいた。そのとき丁度、古い雑誌を見ていたら、これまた岩美町の「ばばちゃん」があるではないか。
やっと立ち寄る場所が決まっても、岩美町へのとっかかりがない。仕方なく安易に町役場に電話すると、対応してくれたのが産業観光課の川上寿郎さんだった。
そして実際に岩美まで来て、本当に懇切丁寧に、あらゆる面でお世話になってしまった。その最たるものが「ばばちゃん」料理を食べさせていただいたことだ。
場所は岩美町内の『かまや旅館』である。ここは木造の簡素な建物だが、柱などに歴史を感じる。
どうやら少々遅すぎたようで、旅館に入ると大急ぎで二階の部屋に通される。
待っていたのが名物の「ばばちゃん鍋」と様々な料理。「ばばちゃん」の本場である岩美町で、その料理を目の前にすると感慨一入である。
まずは川上さんが「ばばちゃん鍋」を作ってくれる。「ばばちゃん(タナカゲンゲ)」は大振りの切り身になっていて、湯通しされている。
これを塩と味醂で味つけされた鍋に入れて待つ。ここで改めて「ばばちゃん」の鍋材料としての実力のほどを思い知る。身はマダラよりも弾力性があり、キアンコウよりも繊維質で口中でほろっとしている。ここに旨味が感じられて、いい味なのだ。残念ながら汁に味醂を使っているために、少々重く感じられるが、川上さんによると、まだまだ試行錯誤をしている最中だという。
その内、昆布だしで塩と酒だけ、もしくは酒と醤油という、もっとも「ばばちゃん」に合う単純なものに変わっていくのだろう。
しかし、「ばばちゃん」の味わいはよし。
他には刺身、焼き物、南蛮漬けなどがあった。どれもこれも美味ではあるが本来期待した野性味は感じられなかった。
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ここでしか食べられない「ばばちゃん(タナカゲンゲ)」の刺身と地元であがった「赤えび(ホッコクアカエビ)」。
どうやら『かまや旅館』での「ばばちゃん」料理は割烹料理の修業をつんだ人が作るもの、「ばばちゃん」本来の味わいはないと思う。でも「ばばちゃん」を初めて食べてみるという向きにはむしろ最適かもしれない。この日もわざわざ遠くから「ばばちゃん料理」を食べに来ていたグループがあって、観光客のいちばん少ない時期としては異例のことだとのこと。
確かに「松葉がに」はうまい。しかし1人前で1万、2万とかかるとしたら、なかなかおいそれとは食べにこれないだろう。そこに「ばばちゃん」という手軽な名物があると、庶民としてはとてもありがたい。
また最後に、岩美町で「ばばちゃん料理」を出す店、宿は多い。この珍しくも美味な魚を岩美町でお試し願いたいものである。詳しいことは町の観光課などに問い合わせを。
鳥取県岩美郡岩美町
http://www.iwami.gr.jp/
かまや旅館
http://ichiko.kdn.ne.jp/saninnoyado/kamaya/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、タナカゲンゲへ
http://www.zukan-bouz.com/suzuki/gengeamoku/genge/tanakagenge.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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