春のカツオは皮つきで

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 静岡県駿河湾の真ん中で年老いた漁師と、カツオ談義に花が咲いた。
 ボクが「やっぱり脂ののったくだりが好きですね」と言うと、
「そんなことねーな。オラは春から初夏かな。秋になっと刺身じゃくわねーよ。このへんじゃくだり(秋のカツオ)は角煮にするだら」
 どうして秋のカツオを刺身にしないのかというと、静岡県では腹側を皮付きで刺身にする。秋になると皮が硬くなって、皮引きしないと食べられないからだという。
「カツオは皮がうまいだら、もったいねーだよ」

 確かに春のカツオは皮がうまい。皮下の薄い脂を帯びた層は身自体よりもうまいと思うことが多いので、「くだり」よりも「のぼり」ガツオの方が刺身にするによしと、老漁師が力説するのもうなずける。

 さて、本日の皮付きのカツオは千葉県産だというが産地ははっきりしない。八王子総市(仲卸)のさぶちゃん(今年で70歳)が2,5キロの小振りのを4つ割にしていて、その腹皮を500円で買ってきた。
 当然皮付きのまま、柳包丁も出さずに、文化包丁で無造作・適当に切りつけた。薬味はショウガ、別の皿にエシャロット(ラッキョの若いもの)を添えて、若いカツオを食らう。

 やはり脂はほとんどない。むしろその分、カツオの酸味がかった旨味が浮き上がる。皮はほどよく柔らかく、噛みしめると微かに脂が甘味のとって感じ取れる。これこそ爽やかな春を感じる味覚である。脇に添えたまだまだ値の張るエシャロットもぴりっと辛くていいものだ。

 外は満開の桜が、花びらをそこら中に撒き散らしていて、睡眠不足のためかやたらに酒の回りが早い。
 今年は、毎週カツオを食い、皮の硬くなって、脂がのってくるのを確かめよう。きっといつの間にか春は去り、夏となって秋が来てしまうに違いなく、一年ももはや去りにけりなんてなりかねない。まことに五十路オヤジの思いは重い。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、カツオへ
http://www.zukan-bouz.com/saba/saba/katuo.html


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コメント(3)

カツオは上り下り共にうまいですね。
すっきりとした魚らしい上りを取るか、しっかりと脂の乗った下りを取るか好みが分かれるかもしれませんね。
お書きになっている老漁師の仰るとおり刺身には上りがあっているように思えます。皮が気になりにくいこともありますしすっきりした味は刺身向きのように思えます。
一方下りはタタキ向きでしょう。あぶって皮とその下の脂を程よく香ばしく焦がせば硬い皮もいい味にやわらかくなりますし。

それにしても千葉県産といっても、まだ千葉県沖にカツオが回遊しているとは思えないのですが・・・?
私の思い込み?地球温暖化?単に水揚げが千葉県の港?

腹身を皮付きのまま刺身に引いたものは『銀皮造り』と呼んでます。我が家では定番です。さっぱりとして、ぷりぷりして、喉越しの良いカツオは春の宝物ですね。

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あ2さん、Cavemanさん、返事が遅くなって申し訳ありません。
島根は遠く、土日は事後処理に追われています。

さて、千葉県でも勝浦のものは遠洋や伊豆七島のものがきます。
また静岡県御前崎などは新年になってすぐに入荷が始まるんです。
また確かに春のカツオは秋のカツオとは別物ですね。
まだまだ初夏までは腹の皮が柔らかいようなので、たっぷり楽しみましょう。

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このページは、管理人が2008年4月 3日 10:54に書いたブログ記事です。

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