岩手県からの八角

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 関東では八角という名前がすっかり定着している。標準和名のトクビレを知る人なんて皆無であろう。この八角も寒い時期なら値も張ろうけど、そろそろ単衣でいいか? なんて言うときにはぜんぜん値がつきはしない。今回のものは岩手県産だという八角でオスメス混ざり合って、しかも小振りだ。それで市場での値段がキロ当たり1000円ほど。当然、これも買いだね。

 八角(トクビレ)だけを狙う漁はない。たぶん底引き網の副産物なのだけど、冬にはキロ当たり2千円も3千円もするのだから漁師さんといてはありがたい魚だろう。でも高いのは寒い内だけ。しかも八角は、標準和名のトクビレすらも、本来オスをさす言葉なので、メスが高い値をつけることはまずない。
 じゃあ、安い時期の八角がまずいのか? というと、そんなことはない。市場で見つけて、触ってみて、張りがあって、鮮度がよければ先ず間違いなく美味。
 通ぶったヤカラが八角の旬なんてあれこれいうが、ボクが声を高くして言いたいのは「本気で通ぶるヤツはバカだ」ということ。「通ぶる」というのは「除外する」ことであって、心を狭苦しくするだけの愚かな行為。

 閑話休題。
 持ち帰った八角は素直に塩焼きにした。
 刺身でもいけそうだったが、この魚、焼くとすこぶるつきにうまい。
 まずは背から梨割りに開く。
 肝を壊さないように鰓とワタを取り去り、軽く汚れを洗う。
 水分をよく拭き取って、振り塩。

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 このまま1時間以上置く。よく塩焼きは20分以上塩をして置け、というが八角は脂が強いので1時間でも足りない。
 これを硬いウロコ側から焼いていく。そして身は強火で焼き。
 できたら熱々の内に一気に食べる。

 2匹ずつ焼き、どんどん食べて、6本食べ尽くすのにそんなに時間を必要としなかった。
 やはり八角は肝がうまい。ボクは肝の部分をもらって、酒の肴にする。子供達は尾の身の剥がれやすい部分を手づかみで食べている。身に強い甘味があるのは脂からくるものだろう。

 さて、いくら八角が市場で売られているといっても「普通は買えないでしょ」と思われそうだ。そんなことはない。千葉県柏市、我孫子市の京北ストアには発泡トレイに入れられてどんと冷蔵ケースに並んでいた。東京都八王子ではスーパーイシカワという食料品店の店主、石川栄二さんが箱で仕入れて行く。これが夕方には刺身となって店頭に並ぶのだろう。
 ことほどさように最近では珍しいと思う魚だって、探せば買えるのである。ようは身近な場所に優れた小売店を探す努力をすることだ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、トクビレへ
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コメント(6)

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キロ1000円とは、お買い得!!!
いつもは、春をすぎた頃から八角は見かけ
なくなりますが、今年はよくせり場で見かけます。
先週、セリ人に八角の値段を聞いたら、
キロ2000円と言っておりました。
この時期でも脂があるのですね!
今度、安いの見つけたら買いたいです!
いつも刺身ばかりでしたので、思いっきり
塩焼きでたべてみたい!と思う今日この頃
です!

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史郎さん、八角はオスだけで、大きいと高いんです。
ただし小さくても味がいいので、狙い目なんですね。
また骨板が張り巡らされている八角って、強火で焼くと旨味が凝縮される気がします。
この骨板にも風味があるように思えるし。

お久しぶりです。ここのところ、PCの速度が遅く調子悪かったのでなかなか見れませんでした・・・八角ですが、北海道小樽では田楽焼きにして物もありました!甘めの味噌にネギを混ぜ、鰭の部分だけ切り内臓を出した丸のままの八角を焼き、鰭を落とした部分などに味噌を塗り軽く炙ったものです。本当に、昔は捨てていた魚だったと、父が言ってました。

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ラオウさん、トクビレが流通に乗るようになった歴史も調べてみたいと思っています。
間違いなく20年と経っていないはずなんです。

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北海道発祥の「炉辺焼き」がチェーン展開で関東に来た頃からではないかと睨んでいますが・・・。
北の家族創成期のメニューにあったと思います(想像ですが)
一時期、炉辺焼きが大ブームで、アスパラ、唐黍、じゃが芋なんかも焼いてました。

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尻高鰤さん、ボクも「北の家族」に通ったんです。
この居酒屋チェーンはNHKのドラマがあって、すぐに出来たのではないでしょうか?
とすると1974年か1975年頃。
ボクはまだ未成年ですけど、この時期に行ったと思います。
でも八角なかったなー。

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このページは、管理人が2008年5月15日 06:00に書いたブログ記事です。

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