アカヤガラという魚は一見、煮ても焼いても食えそうに思えない。
身体の大方の部分が、長大なクチバシで、これを“笛のようだ”とした呼び名もあるし、そんなもんじゃねえ、“大砲のようだ”とする呼び名もある。
ところがこの怪異でとりつく島のないような細長い魚が「食ったらうまい」のである。
おおよそ魚を食べるとき、例えば「バターで焼くと」、もしくは「フライにすると」、もっともっと考えて「唐揚げにすれば」食べられます。
こうなると、この魚は本当はまずいのだ。
だからいろいろ工夫する。
そこに「塩焼きがいちばん」というのがあると、これは心底うまい魚であるということになる。
そしてアカヤガラの塩焼きはまことに「うまーいのだ(赤塚不二夫を偲んでバカボンのパパ風に読んで欲しいのだ)」。
当然塩焼きがうまいのだから、干物にしたらもっとうまい。
アカヤガラの頭部、クチバシの後部胸ビレ部分とシッポの部分を一塩して軽く酒にくぐらせる。
これを猛暑日につき冷蔵庫で半日干してできたのが「やがらのやがら干し」である。
一見、「つき合いづらそうでいないがら、実はいいヤツ」という人物がいるが、それを「やがらのやがら」のようだと言い換えるのも面白い。
干物だからあとはじっくりあぶり焼くだけ。
あぶった皮のうまさをいかに表現するべきか?
まず言語に置き換えるのは無理だろう。
皮自体に甘味がある。
これは酒からくるコハク酸と相乗効果を起こしているのだろう。
白い身をむしくって食らっても、強い旨味が押し寄せてくる。
そう言えば昔、岩田昭人さんから尾鷲の魚屋さんが作っているというアカヤガラの干物を頂いたことがある。
あれは、もっともっとうまかった。
きっと塩をして尾鷲の風で干しあげたからだろう。
早く干物の季節が来てほしいものである。
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、アカヤガラへ
http://www.zukan-bouz.com/fish/togeuo/akayagara.html
『一日一魚』へ
http://www.pref.mie.jp/OKENMIN/HP/ichigyo/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
徳島と高知で魚貝類を探す旅 後の記事 »
アカガイはまだ子持ちが多い