新いかを食べて、今年もやっとほっとする

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 「新子」というのはコノシロの幼魚である。
 毎年初夏を迎えると、河岸の話題をさらう。
「今年の初物はいくらかね」
「二万円だったら、今年は豊漁かね」
 それが4万円、5万円(キロ当たり)になると
「今年は不漁だね」
 これは東京だけの話であって、首都とはいえ、ローカルな話だと思っていい。
 ミシュランで三つ星を獲得した有名すし屋、またそれに準じる超高級すし屋が林立する大都会だけの特異な現象ですね。

 またその首都東京に「新いか」というのがある。
 コウイカのまだ生まれたばかりのそれこそ小鳥の卵くらいから、ちょっと大きくなって桃屋の花ラッキョの瓶くらいの大きさのコウイカの子供である。
 早ければ7月下旬、8月には、こちらも河岸を騒がせる。
 はやり初っぱなは2万だ3万だの世界となる。
 でも、そんな「走り」にこだわるのは超高級すし屋だけ。
 ボクの「新いかはじめ」はたいてい9月になってから。
 この頃になると「新いか」も安いのは800円(キロ当たり)、高いので3000円くらいに落ちてくる。
 手が届くときに気をつけなければならないことは、「いいもの」と「わるいもの」との差が大きいということ。
 9月初旬の築地場内。
 探せど、めぼしい「新いか」が見つからない。
 ボクは場内でも荷(魚貝類)ばかり見ているものだから、店なんて無関係に「いいもの」に反応してしまう。

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 その日、いちばんのを見つけた。
 目の前の「新いか」、値段はいくらなのだろう。
 まことに表側の色合いがよく、身にふくらみを感じる。
「これいくらですか」
 目の前には小林亜星に似た(小さくしたような)頑固そうなご主人がいて、
「2500円ですよ」
「あの、500(グラム)買えますか」
「いいよ、このしと(人)に入れてやんな」
 若い衆が4尾いれて、
「500だと3尾になりますね」
「それじゃけちくさいな。4尾ください」
 こんな会話に、ガンコそうなオヤジさんが笑う。
 こういった瞬間がボクを築地場内に誘う。
 ちなみに築地場内に通う資格は“いいものをわかろうとする目があること”、それだけでいいと思っている。
 ついでにいっておくと、わからなくても「素直であること」はもっと、もっと大切だ。

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コウイカのエンペラをもって、「えいや!」とまな板に打ち付ける。するとトンと甲が飛び出してくる

 この「新いか」が素晴らしいものだった。
 姫に甲羅を抜かせて、水洗いする。
 胴の皮、薄皮をとり、ゲソは塩もみ。
 ゆで上げて、刺身と家族盛り(家庭料理の盛り方)にする。

 「新いか」のよさはやはり上品は甘味と、その軟らかくて、しかも爽やかな口当たりだろう。
 残念ながら4尾でもけちくさかったのだと、改めて気づいた。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、コウイカへ
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このページは、管理人が2008年9月18日 21:27に書いたブログ記事です。

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