島根県浜田市は大きな港を持ち、また石見地方ならではの古典芸能を保持している歴史の町でもある。
この町は当然のごとく水産加工の盛んなところで、カレイの干物生産量では日本一ではないかとも記憶する。
港に入港してくるのは巻き網船、底曳網などで、多種多様な魚貝類が大量に水揚げされるのだけど、中でも浜田市民の大好物であるのがマトウダイだ。
マトウダイは浜田市では「馬頭(ばとう)」と呼ぶ。
「的鯛」は側面にある大きな斑点からくる漢字で、「馬頭」はそのユーモラスな顔つきからきている。
ボクはどちらかというと、「馬頭」の方が好き。
フランス語ではサン・ピエール。
聖人ピエールという意味合いだけど、きっとこのひと馬面だったに違いない。
さてこの浜田市民が、いや島根県人が大好きなマトウダイを、フライに加工したのが『大磯』。
市内にある、それこそ元気いっぱいの食品加工会社だ。
ボクなど部外者からみたら、輸入魚を使っても採算がとれそうにないフライ材料に、それ自体、なかなか値の張るマトウダイを使ったらさぞや「儲からないだろうな」と心配してしまう。
そんな心配も食ってみると解消する。
マトウダイというのは一定の大きさのものが揚がるわけではない。
それで「いそまる本舗(大磯)」のもてんでんばらばらだ。
これを見て感激するのは魚をよく知る人だけだろう。
なぜなら、これこそ前浜の魚(地魚)を使っている証拠だからだ。
さて、とにかく揚げてみる。
フライなんだから、当然おいしい。
さくっと揚がったのに魚のジュ(エキス)が飛び出してきて、これがまったく生臭くなく、旨味がほんのり浮かんでくる。
うまいうまいとたっぷり揚げたマトウダイのフライをすぐに平らげてしまったけど、フライというのは本来そんな料理なのだ。
さて、パンに挟んで食べていた太郎が、「もうないの。パンが余ったんだけど」と文句を言う。
ご飯を食べていた姫も、「もっと欲しいよ」ときた。
仕方なく的鯛のフライ、追加だーい!
いそまる本舗
http://www.rakuten.ne.jp/gold/isomaru/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マトウダイへ
http://www.zukan-bouz.com/fish/matoudai/matou.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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エゾメバルの塩焼きいいな!
こんな魚があったのかと初めて見たのが28年前でした。魚の形はヘンテコですが、地元の画家さんなどがこの魚を素材として描かれているのを見るにつけ、地域にとっては馴染みのある魚だなと思ったものです。
図体の大きな魚の割には、身は少ししか取れなくて、安いなと思って買ったのにとつい思ってしまいます。
捨てるところばかりある魚だなと思っていましたが、昨年、島根県の大田で鍋材料にする教室があって、大きなマトウダイが調理台に乗っていました。取った身は刺身用に調理をして、あとのアラは捨てるのかなと思っていたところ、肝臓や消化管はきれいに洗って鍋の具に、その他のアラは、大きな出刃でガンガン切り刻んで、やはり鍋の具としてドンドン入れていきます。
魚臭くなって、大丈夫かなと思っていましたが、その後の試食会では、「ええっー」と思うくらい、魚臭さも出ません。肝は元々美味しいんですけど、ホネホネしたアラも結構食べやすくて、驚きました。
この記事に載っているフライの量だとどれだけのマトウダイを捌いたのかが気になるばかりです。
魚種によっては、フライは魚臭さが出るものも多くて余り好かないのですが、マトウダイのフライは、全く骨もなく、フライのために生まれたような魚といっても良いくらい、特別美味しいのは保証します。