なぜなら次に来た一品でまるで電車道で押し出された力士の如く圧倒されたからだ。
それが「ベニガニの煮つけ」である。
考えてみると静岡県沼津市戸田の漁師料理でもエビの煮つけは当たり前。
甲殻類の煮つけのうまさはわかっているはずなのに、ベニズワイに応用しようとは思い至らなかった。
たぶん甘辛い煮汁の中で、ベニズワイの旨味が染み出し、また身に染みこみしながら出来上がったのだろうけど、やや水っぽいベニズワイの弱点を逆手にとってあまりある。
「カニを煮つけるなんて思いもしませんでした」
「そうですか、ベニガニは煮つけると最高ですよ」
ウエカツ氏が島根生まれであること、釣りの話などがでて、なんとも楽しい宴となった。
常々思うに、各地で産品を使った料理が作られている。
その多くが大きく的を外している。
下手な小細工ばかりしてむしろ素材の持ち味を失わせている。
料理は工夫するのではなく素材の特性を見極めるべきなのだ、という基本中の基本がわかっていない。
この『ベニガニ産品開発有志の会』でやっていることは素直にベニガニのうまさ、よさがわかっている。
そして無駄がなく、的のど真ん中を射ている。
唯一気になったのが大根のあく抜きが充分でなかったところだが、そんなことはどうでもいい。
手をべたべたにして、ベニガニをむさぼり食うのだけど、幾ら食っても飽きが来ない。
ところがこれがまだ序盤戦でしかなかった。
その後に続いたのがベニガニの素揚げ。
粗挽きの黒コショウがピリピリして、また違うベニガニのうまさを思い知る。
このうまさを例えるに、だれが食べても間違いなく「クセになる味」としておこう。
さて、その次は中華風だけど、これはやや平凡。
それなりにうまいことはうまいけど、真打ちの後に二つ目が出てきたような感じがする。
鍋に火がついた、煮立ってきたらベニガニの甲羅下の身が放り込まれる。
これがなんとだし代わり。
そこにベニガニの足と野菜が入って、これもまた凄い味わいなのだ。
さて、ボクの息の根は、この後の雑炊で止まったと言っていい。
だしにした甲羅下の身、またゆでガニの残り、味噌を集めて、総て鍋に放り込む。
このぞうすいの味だけど、言葉になるわけがない。
カニの旨味甘味を凝縮したもの、この一椀の中身はいったいなんなんだろう。
さて、宴も終わり近くに、たぶん、美佐さんと思われる艶やかな女性が現れた。
このひとときがまたよろしい。
ウエカツ氏が美佐さんにほめられて、照れているのが絵になる。
最後に『味処 美佐』はベニガニだけではなく「松葉がに(ズワイガニ)」、季節の魚貝類も楽しめる。
境港は美味の宝庫だと確信したのだ。
今回はウエカツ氏に乾杯してしまった。
このベニガニ料理は「松葉がに」と比べてなんら遜色がないばかりか、味の多彩さでは、数段勝ちをおさめている。
これではぼうずコンニャクの立つ瀬がない。
ここいらで島根と鳥取に提案。
二県とも美味の宝庫である。
境港で妖怪うまいもん大戦争をやらかそうではないか?
審判長は目玉のオヤジ、行事は鬼太郎。
勝った県が境港をもらえる。
毎年行うので「今年境港は島根県だね」とか「やっと鳥取に境港が帰ってきた」なんて話題になる。
バカなことを考えるとウエカツ氏よりも上の、ぼうずコンニャクなのだ。
●ウエカツ水産総本舗
http://ueka2007.naturum.ne.jp/
味処 美佐 鳥取県境港市京町6
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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ムラサキインコ発見!
境港出身です。
いつもブログ拝見させてもらってます。
しかし紅ガニの煮つけなんて。。。
食べたことも聞いたこともないのはもちろん、
発想すらできなかったですなぁ。。。。!
今年帰省した折には煮付けてみたいと思いまっす。
境港では今回さまざまな発見がありました。
観光市場に惑わされて、本当のよさを見てこなかったことを痛感しました。
huckemさんも地元ならではの情報をお持ちのことと思います。
いろいろ教えていただきたい。
huckemさん、今回境港でさまざまな発見をしました。
いい町ですね。
地元の方ならではの情報がありましたらお教え下さい。