アマダイの若狭焼き

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 ボクが船釣りを始めたのがちょうど27年前のこと。
 相模湾の比較的近場でマダイ五目で出船していた。
 マダイが主役ではああるが、いろんな魚が釣れるわけで、水深の深い場所で必ず混ざってくるのがアマダイであった。
 その当時、釣り宿の年寄り船頭(明治生まれ)にとって、不思議で困ることというのがあって、それがアマダイなのである。
「おらお、子供の頃あお、こんなもんクズだったお。食ってもうまかねえし、みそ汁にもなんねーお」
 その当時から、アマダイ釣りで稼ぐ漁師がいたそうで、それが小田原、茅ヶ崎などのジイサン達には不思議で仕方がなかったのだ。

 ぐっと現在に話をもどす。
 今では相模湾で延縄などをやっている漁師はほとんどいない。
 例えば横須賀市佐島大楠漁港でも一人もしくは二人といったところ。
 その延縄であげたアマダイが幾らするかというと、浜値で1本一万円以上なのだ。
 同時にあがったマダイの2倍近い値段。

 これは漁師の手取りなのであって、ここから築地などに行くと、いったいどのような値段となるのか、想像できない。
 さて、築地を歩きながら探すアマダイはキロあたり5000円前後が妥当だと思っている。
 小振りで500グラムくらいなら3000円出しておつりが来る。
 持ち帰ったら半分だけウロコをすき引きし、半分はそのまま。
 そう言えば、アマダイの鱗を包丁でバリバリなんてやっているのをテレビで見たことがある。
 あんなことをやってしまったら柔らかすぎるアマダイの身がすり身になってしまう。
 アマダイは持ち方からして、卸かたからして細心の注意を要する。
 二枚に下ろしてすき引いた半身は昆布締めにし、半身には振り塩をしてビニール袋に密閉して1日寝かせる。
 これを翌日焼くのである。
 残った半身はウロコがついたままである。
 こちらに日本酒を塗りながら焼き上げる。
 ウロコ側はこんがりと、身の方はしっとりするのがいい。
 このとき慎重であらねばならぬのが串打ち。
 今回もちょっと失敗して、4本打つ金ぐしの1本が浅すぎた。
 アマダイの季節は秋から冬にかけてで、産卵期をすぎると味ががくんと落ちる。
 この時期に何本のアマダイを食べられるのか、できれば2桁食べたいものだと思うのだが、無理だろう。
 だからいつまで経っても串打ちがうまくならない。

 さて失敗とはいえ、若狭焼きは本当にうまい、
 鱗側の皮を剥がしてカリカリと食べてから、練り絹のような柔らかい繊維質の身を食べる。
 このアマダイ独特の風味をどう表現していいのか未だにわからない。
 皮で蓋をしていただけに、取り去り、身を剥がすと一度期にアマダイの香りが立つ。
 そしてアマダイが「甘鯛」じゃなかろうか、と考えた人の気持ちがわかる、その甘さ。
 この半身をそれこそ骨の際まで食べて食べて、しゃぶってしまうので、後に残るのは骨だけとなる。
 アマダイの若狭焼きだけは猫もお裾分けに預からないのでつまらなさそうだ。

 最後にクイズをだす。
 アマダイでどこがいちばんうまいのか?
 部分(場所)で答えていただきたい。
 食べてみるとすぐにわかるはずだ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、アマダイへ
http://www.zukan-bouz.com/suzuki/amadai/amadai.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/


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コメント(2)

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のど仏!
でも自分は身は食べた事がなかった!
捨てられていた頭を塩焼きで食べただけでした!

わたしが初めて『ぐじ』を食べてから30年位でしょうか・・京都・錦市場で母親が求めてきたものでした。
その後相模湾・東京湾口で尼鯛ならぬアマダイが乗合船で釣れると聞き、勇んで出かけたのが25年以上前ですね。
まあその頃でも一日釣って5枚も釣れば大威張りでしたがサイズは30cm級が揃いましたね。
余談ですがオマケで釣れる『アカボラ』も船頭に教えてもらってから大切に持ち帰りました。
既にその当時、相模湾で職漁で揚がる尼鯛は大半が京都に行ったという話でした。
私は尼鯛を料理する時は絶対に鱗は引きません。
釣れて、或いは買って帰ったらすぐに開いて軽く一汐して一晩寝かせます。
翌日刺身にする時は皮を下にして柳刃で身を皮から削ぐように薄く造ります。
ねっとりした刺身はぽん酢と紅葉おろしと浅葱がよく似合いますよね。
その他の料理・・蕪蒸し、唐揚げ、浜焼き・・も鱗
は絶対必要ですね。
私は皮下のぷるぷるした脂、というかゼラチン質と
香ばしい皮(鱗)が好きですよ。

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このページは、管理人が2008年12月 8日 07:57に書いたブログ記事です。

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