八王子綜合卸売協同組合『マル幸』の前で思わず脚が止まる。
あれれれれ?
「赤エビ」じゃないの。
「おーい、クマゴロウ、これどこの。懐かしいなこれ。沼津じゃないの」
「これなんていうエビなんだ」
「ツノナガチヒロエビだけど」
「産地わかんねーや。適当に考えて」
箱の脇には「赤エビ」とあるから、やはり沼津産じゃないだろうか?
秋の解禁から一度も底曳網の水揚げを見ていない。
深い深い駿河湾の底からあがる、深紅のエビ、それがツノナガチヒロエビだ。
生で食べると油で胸焼けする。
それが甘辛く煮るとうまいんだな。
思わず産地不明のまま買ってしまった。
そしてお父さんのひとりだけのお昼ご飯は、「赤エビの煮つけ」だ。
戸田(静岡県沼津市)の底曳網漁師さんは、ユメカサゴ、チゴダラなどの魚にツノナガチヒロエビを必ず加えて甘辛く煮て、船上での昼ご飯のおかずとする。
これがまことにこたえられないほどにうまい。
普通、船上でうまいものが、自宅なんかで食べると、思ったほどうまくない、なんてことが多い。
でもツノナガチヒロエビに限っては自宅で食べても、やっぱり感激一入のうまさだ。
さて、煮つけを食べ食べ、ご飯をかきこみ、最後に煮汁に熱湯をかけてすする。
このときも、煮汁は加減すること。
思ったよりもクセがある。
クセがあるんだけど濃厚にうまいのだ。
さて、戸田の底曳船にまた乗りたいものだ。
そして未知の生物に出合いたい。
2009年2月27日
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ツノナガチヒロエビへ
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