「あめあめふれふれ」が来てるよ。
近所の居酒屋のオヤジがすれ違いざまに市場で声をかけてきた。
この場合、北原白秋作詞の童謡「あめふり」ではなく、阿久悠作詞「雨の慕情」のこと。
演歌に詳しくないとわかりません。
さて、来ているのはヤツシロガイなのは、わかる人はわかる。
ボクはまったく演歌を知らないので、最初は何が何だか意味がわからなかった。
歌って通り過ぎた居酒屋オヤジというのが、ちょっと変わりネタの好きな御仁。
ボクに相通じる部分を感じてか、琴線に触れるものを見つけると、このような「むわっとする接触」をしてくる。
八王子総合卸売センターにある『高野水産』の店頭に、やはりあったのがヤツシロガイ。
浅い箱にきれいに並べられて、これがなんとも美しい。
けれど、正箱(出荷した状態)のまま。
だれも手をつけた様子がない。
無言で2個ばかり袋に詰めると、元八王子の忠さん(鮨忠)が
「これなんて貝?」
なんども教えたでしょう、と思いながら。
「八代亜紀でヤツシロガイ」
こんな会話を交わしていたら、貝殻のきれいなことからどっと買い手がついた。
これを秤に乗せたら、高野水産の社長が「もってて、いいよ」だって。
うれしいね。
ありがとう!
ヤツシロガイを料るのは簡単至極。
貝殻に穴を開けて、どばっと出てきたワタを切り捨て、滑りをもみ、最後に塩でもう一回もむ。
後は「とんとん、とんだい(立川談志風に)、江戸っ子だってね」てなぐあい。
ネギ、みそ、酢でたたいて、これは紛うかたなき日本酒の友。
あまり個性的ではない、自己表現のへたな素材は、みそのようなアミノ酸豊かなものと合わせると化けます。
内田光子と出会ったジェフリー・テートのようなものですかね。
シコシコとしたなかに貝そのものの味わいもあって、どこかしら野性味がある。
酒が進みすぎて困ります。
お後がよろしいようで。
材料
ヤツシロガイ2個、みそ適宜、ネギ適宜、酢適宜
作り方
1 ヤツシロガイは足を出して中の唾液腺などを取り、まずとにかくもむ。ほどよく滑りがとれたら最後に塩でもむ。小さく切る。
2 ヤツシロガイにネギ、みそを合わせて包丁でとんとんとたたく。
3 味を見て、酢を加える。みそが足りなければみそを足す。
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ヤツシロガイへ
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