古今亭志ん生の「まぐ茶」

0
maguchatara.jpg

ボクの本業がなんなのか、最近訳がわからなくなっている。
けれでも、常に仕事の一端には必ず神保町が絡んでいる。
初めて神保町に足を踏み入れたのは大学一年のときだから、もう30年以上前になる。
大学がニコライ堂下で駿河台。
坂を下れば神保町。
それからずーっと神保町・お茶の水界隈から抜け出せない。

さて、仕事場に向かうべく、地下鉄を出たら、古本祭をやっていた。
時間に遅れ気味なのに、ついついのぞく。
ちなみにデパートの古本市はすきだけど、神保町古本祭、実は嫌いである。
神保町古本屋街はいうなればボクのショ場なのであり、そこによそ者がどたどたやってくる。
ボクの根底にある根強い排他的精神がむくむくとふくらんでくる。

さて、地下鉄の出口の前で見つけたのが『志ん生の食卓』だ。
300円という値に釣られて買い込む。
著者・美濃部美津子さんは志ん生の長女で、金原亭馬生、古今亭志ん朝の姉にあたる。
ボクは志ん生、馬生のファンなのだけど、それだけではなく美濃部美津子のファンでもあるので、300円は安い、申し訳ないくらいに安い。
ちなみにこの美濃部美津子の語る志ん生一家の暮らしがいいのである。
飾り気がない、素、であってしかも下町らしい人情が感じられる。

さて、今回の『志ん生の食卓』からもいくつかの発見があった。
なかでも極めつきが「どんどん焼き」、そして「志ん生のまぐ茶」。
志ん生のマグロ好きは有名だけど、肴にしていっぱいの後の「まぐ茶」がなんとも魅力的だった。
単純なのがいい。
材料も作り方にもどこにも格別なところがない。

そういえば、志ん生の落語は間違いなく至芸というものだろう。
でも、その芸に光を与えているのは明らかに「素」というものだ。
「素」とは志ん生自体と言い換えるといい。
志ん生一家の暮らしにも美濃部美津子の本を読む限りムダな演出や飾り気がない。
「かっこつけたってしょうがねーじゃないか」てな具合。
ボクはこんな暮らしにあこがれるのだ。

と、時計を見ると深夜(?)三時。
もう一度本をめくりながら、宮城県塩竃の「浦霞 純米酒」を一献。
「浦霞」を初めて飲んだのは大学時代だった。
その頃は地酒を売る店と言っても知るかぎりで四谷の鈴傳か伊勢丹くらいしかなく、背伸びして買ったのだろうな。
これがうまかった。
酒の肴はトルコ産本マグロの中トロ。
〆は「志ん生まぐ茶」でお後がよろしいようで。

材料
刺身用マグロ適宜、もみのり適宜、しょうゆ、緑茶
作り方
1 ごはんの上にもみ海苔をのせる。マグロをのせて生醤油をかけ回す。
2 お茶をかける。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、クロマグロへ


このエントリーをはてなブックマークに追加

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://blog.zukan-bouz.com/mt-app/mt/mt-tb.cgi/2842

月別 アーカイブ

このブログ記事について

このページは、管理人が2010年11月 3日 10:04に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「美味極まりなし、アカエイのみそ汁」です。

次のブログ記事は「干ものは、こう下ごしらえするべきだ」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。