沖縄記 07 初めての牧志公設市場

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市場に入ったら、思った以上に狭い。
例えば(いい加減な表現だが)郊外型のスーパーの5分の1以下、多摩地区だと駅前のはやらない古いスーパー程度しかない。
でも密度は濃い。
天井が低い。
狭い通路の両側に並ぶ店の冷蔵ケースが高く、その前に、またものが置いてあったり、店の人が立っていたりで、歩きづらいし、品物をゆっくり見るのが、なんとも難しい。
ただし市場で大切なのは、実はこの狭さと密度の高さなのだ。
近年街作りに関わっているノウタリンどもも「市場は密度が必要だ」と知らなきゃダメダメ、なのだ。

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入った場所が、珍味や漬け物を売っているところで、いきなり島ラッキョを手渡された。
これがなんともうまいのだけど、隣のお店でも試食、そして試食。
試食責めというのは、北海道だけの名物か? と思っていたら沖縄もそうだったのか。
いやな気分になりかけていたが、明らかに沖縄の方が暖かい。
北海道の市場のように陰険で恐いという印象がない。
「買わなくていいよ」とは言うものの、内心は「買ってね」なんだろう。
けど、「帰るのは土曜日なんで」というと、「もっと食べて」なんて......。
この手渡された島ラッキョがもう一度繰り返しになるが、とてもうまい。
今回最大の後悔というのが、最終日にこれを買い忘れたこと。

漬け物などと一緒にシナチク、昆布、豚の内臓などの千切りの袋詰めが売られている。
これが「スンシーイリチー」のセット。
スンシーはシナチクのこと、イリチーとは炒め煮のことである。
袋から出したらすぐに調理が出来るわけで、合理的で、まことに好ましく、また魅力的。
不思議なことに、こんなものを見ると沖縄で一定期間住んでみたいというアグレッシブな思いにかられるのだ。

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目を上げると、肉屋が並ぶ通路だった。
なんとなく南国風の美しいお姉さんが一段高い冷蔵ケースの内側で、豚の塊を山のように盛り上げている。
必ずマスコミで取りあげられる豚の顔もある。
お決まりの〝豚の頭にサングラス〟の前には、シーズンオフなのに人だかりが出来ている。

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肉屋のお姉さんって外見は皆優しそうに見えるけど、この豚の顔の皮を毎日剥いでいるのかな、なんて想像すると恐い。
明らかに観光客ではないオバアが、豚の顔を買っている。
これは那覇の食堂では「煮つけ(間違ってるかも)」という料理に入ってものに違いない。
この「煮つけ」、おでんみたいで、おでんではない、というものだけどなかなかうまいのだよ。

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まことに風情のある「かまぼこ屋」があり、これがじっくり見るとまことに面白い。
代表的なのは1本1キロくらいありそうな紅白カマボコ。
最終日に農連市場で知ることになるのだけど、紅白、まったく同じもので、買い手がくるとそのつど白いカマボコを赤く塗るのである。
またカステラカマボコはどの店にもある。
すり身に卵を加えたもので、なんともひなびた味わい。
チキアゲーは関西の天ぷら、関東だと薩摩揚にあたる。
沖縄の練り製品は意外に種類が少ない。
が、出番は多く、チャンプルー(炒め物)にイリチー(炒め煮)、イナムドゥチ、スバ(沖縄そば)など料理や汁の具材として無造作に使われる。
これは推測だが、南西にいくほど練り製品を料理に使い、特に関東だが、北東にいくほどそのまま食べるという傾向があるのではないか?

肉屋の一角を通り過ぎ、魚屋の通路に向かおうとしたら、なぜか団体さんたちがワイワイガヤガヤ通せんぼをしている。
仕方なく一度市場を出る。
市場周りで海藻などを売るオバアに「今日は寒いね(聞き取れなくて、たぶんこのような意味のことを言ったのだという想像)」と声をかけられる。
この日、那覇では今冬最低気温を記録した日だった。
しかもしとしとと雨が降る。
オバアの足下に電気ストーブがある。
「お土産どう」
「土曜日に買います」
「そうかい。ムーチ食べたかね」
またムーチだ。


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このページは、管理人が2011年2月 2日 10:58に書いたブログ記事です。

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