2012年 ふな市の旅 07 佐世保朝市

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6時半過ぎ、米倉鮮魚店の米倉宏太郎さんに
佐世保朝市まで送っていただく。
佐世保魚市場から15分ほどで
『佐世保朝市』の看板が見えた。
 
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九州北部にある佐世保はまだ夜明け前。
非常に寒い。
暗闇からのぞく朝市は屋根だけでがらんと広く、
床面の6割がたしか出店者がいないように思える。
いつもながらに市場歩きの前は
うきうきふわふわして落ち着かない。
あたりはまだ暗く、市場の中の明るさとの対比が大きく、
入り口近くにあった水仙の花の前で
一息ついて浮き立つ心を静める。
 
台に板を渡しかけたくらいの簡単な店舗ばかりで、
なかにはちくわを入れた段ボール、かごだけという人もいる。
野菜、相物、練り製品、魚などが売られている。
寒さのせいだろうか、野菜の種類は少なく、
お客もまばらで閑散としている。

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花やさんを見ていると「沖縄菊」という文字を見つける。
たぶん厳冬期、沖縄から菊の切り花が送られてくるのだろう。

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練り製品が豊富なのも長崎県の特徴である。
今回気になったのが高島竹輪。
高島という島には竹輪やさんがたくさんあり、
どれも味がいいのだという。
1本だけ買い、食べて見るととてもうまい。
なんといっても表面のやや強い焼き具合が、
いい風味を作っている。

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魚店はそれぞれ大きく地魚中心で魅力的だ。
野田鮮魚店、松本鮮魚と魚屋が二軒並び、品揃えが豊富だ。
イカが並んでいて、スルメイカ、アオリイカ、
ケンサキイカ、メガイアワビ、アサリがある。
マガキは地元九十九島産で小振り。
これがまことにうまそう。
九州ならではのもので「びら」というものがある。
タイラギの貝柱以外の部分で
ヒモ(外套膜)が「びらびら」しているのでこの名があるのだろう。
これが実はまことにうまいもので、
関東で売っていないのが残念でならない。

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ウチワエビ、キシエビ、サルエビ、アカエビ、イセエビ。
ヒラマサ、マダイ、シマアジ、イサキ、サヨリ、スマ、
ホウライヒメジ、サワラ、スズキ、アカムツ、クロダイ、
アオハタ、キジハタ、メイタガレイ、マイワシ、キビナゴ、
マサバ、マアジ、キダイ(レンコ)、カサゴにメバル。
活魚槽のなかもにぎやかそうである。
場内には他にも鮮魚を売っている店がある。
佐世保に観光に来たらホテルの朝食の前にここを散歩して、
素晴らしい魚をお土産に自宅に送ってはいかがだろう。
わざとらしい観光客目当てのものよりも
数倍魅力にあふれていると思う。
 
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さすがに長崎にはアゴ(ホソトビウオ)の干ものが多い。
乾物などを売るお母さんのところで
「あごのみりん干し」、「あご丸干し」を買い、
和菓子などを売る店で白い餅状の生地に
あんこを巻き込んだ「けいらん」
仏壇などに飾るという鯛をかたどった
「こうさこ」というものを買う。

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「こうさこ」の意味、漢字は売っている人も知らなかった。
地納豆があったので買い求める。
 
朝市内の食堂でうどんとおでん。
うどんを食べていると市場で店を出している人だろう、
「今日のおかずは?」なんていいながら顔を出す。
8時前、疲れが足に来て朝市を後にする。
この朝市、厳冬の季節なので、
この寂しさなのかもしれない。
また来なくてはならない。
 
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さて、朝市の食堂で昔の写真が貼っていた。
昭和30年代ではないかというその白黒写真が魅力的だ。
路上にそのまま置かれた野菜。
たくさんのトラック。
木造家屋の上にある空が広い。
朝日がまぶしく、差し込んでいて早朝なのがわかる。

こんな写真を見ると、最近の街作りは
空間を作りすぎていると思う。
実は人類には密集が心地よいのだ。
密集する場がないと心が空虚で攻撃的になる。
この密集した市場の健全な空気感と
無味乾燥な大阪駅・京都駅周辺とを比べてみて欲しい。
時代はすでに縮小、密集に変わりつつあり、
堺屋太一などのいうコンパクトな街作りを行うべきなのだ。
まったく最近の街作りをするヤカラ、
建築家の頭にはコンクリートが詰まっているに違いない。
その作り出す物には腐敗臭がして困る。
 
午前8時、ホテルに帰り、少々休息。
メモの整理。
10時前に戸尾商店街に向かう。
魚屋でクジラとマントの湯引きと
すぼかまぼこを買い、送ってもらう。
高島竹輪とともに平戸でつくっている
「すぼ蒲鉾」は非常に興味深い。

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「すぼ」とは「わらすぼ」のことで
「わらすぼ」とは「わらしべ(藁蘂)」のこと。
すなわち魚のすり身を板にのせるのではなく、
棒状にして藁(わら)をまとわせ、
くっつかなくして蒸したものだ。
ちなみに関東でお馴染みの板にのせた蒲鉾を
西日本では「板つき」もしくは
「板つけ」ということが多い。
後でアミガレイ(コケビラメ)の干ものを
買い忘れたことに気がつく。
長崎でもコケビラメのことを「アミガレイ」ということ、
アミガレイの干ものが珍しくないことがわかったのはいいが、
非常に残念。

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このページは、管理人が2012年2月 5日 23:06に書いたブログ記事です。

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