伊勢平野の郷土料理『かど飯』

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三重県尾鷲、松阪などへの旅で得たものは思った以上に多い。
ボクの旅が、所謂「旅行」と違うのは
例えば民俗学のフィールドワークなのであって、
見たもの、聞いたことが総て後々ディスクワークの素となるからだ。
今年に入っての旅である長崎県佐賀県だけではなく、
昨年の熊本県、鹿児島県の旅に関する
後始末(帰宅後の整理)が終わっていないというか、
旅先で持ち帰った情報が、
その土地や、料理を体系化する素粒子のひとつなのであるから、
旅の重さは宇宙的に思えるほどだ。

三重県の旅は一泊旅行で、比較的気分の軽いものであった。
が得たもの、情報の素が巨大だった。
そのひとつがサンマに関すること。
例えば『秋刀魚の歌』の
佐藤春夫は和歌山県新宮市出身であって、
詩は「幸薄い妻がとってきた青いミカンをしぼって食べる」、
その食卓の情景をうたったものだが、
これは熊野地方全体の食習慣だ。

さて帰宅後、『聞書き 三重の食事』を読む。
一度軽く読んでいても、十分に読むことはできない。
その土地に行ってから、課題を持って読んでこそ意味がある本だ。
三重県でも伊勢平野の料理に『かど飯』がある。
「かど」は伊勢平野でサンマのこと。

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秋に売りに来たサンマの尾を目に通し
円く輪にして、「かど先」(この場合の「かど」は「庭」のこと)で
藁の火で焼く。
この身をほぐして、ご飯に醤油味で炊き込むのだ。

ここに問題があって秋に売りに来たサンマの産地と、
無塩ものであったのか、塩物であったのか、
もしくはぬか漬けであったのか。
ボクの推測では、サンマは伊勢湾でとれたものではなく、
熊野灘から来たもので、
無塩ではなく塩物もしくは干ものだったのではないか?

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そこで試しに北海道産塩蔵サンマを焼いて、
ご飯に醤油味で炊き込んでみた。
これが予想以上に簡単で、しかもうまかった!
青魚を炊き込んだのに、あっさりしている。
しかも味わい深く、ついつい食べ過ぎてしまうくらい。
その上、そのまま食べるよりも、お茶漬けにして
もっともっと、もっとうまい。

普段の料理(食事)のヒントは
意外にも伝統料理にあり、などと思うのだ。

作り方
北海道産塩蔵サンマ1本。
醤油小さじ2分の1(サンマの塩加減によって違う)
胡麻少々、青じそなど
作り方
1 塩サンマを焼き、一度冷やす。冷やしたほうがやりやすい。
2 炊飯の用意をし、ほぐしたサンマの身を乗せ、醤油を入れる。
3 後はたくだけ。
臭みが気になるならせん切りのショウガを。

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このページは、管理人が2012年2月25日 01:29に書いたブログ記事です。

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