7月10日水
商店街の位置関係が、なんとなくわかりかけてきたとき「さかな館」という魚屋さんを見つけて入る。
店は狭く真四角、壁面と真ん中に鮮魚や総菜、加工品などがところせましと並ぶ。
鮮魚の値段が、とにかく安い。
平凡な魚ばかりだな、と思って、なかば店を出てしまおうとしたとき、真ん中の総菜の並ぶなかに「べらの塩焼き(380円)」を発見。
発泡トレイに頭を落としたキュウセンの塩焼きが3本並んでいる。
いかに旅先でもこれを買わないわけにはいかない。
(後に明石市内のホテルで食べてみた。これが絶品中の絶品だった。旬のキュウセンはうまいとあらためて、と思ったしだい)
「ナイス市場」にもどり、大きく膨らんだお腹をなでなでし、考えた末に、お好み焼きの「寿々屋」でイカ豚玉焼きとビール小。
狭い店内に鉄板のついたテーブルが5つか6つ。
端っこに腰掛けると、お尻が抜けなくなるくらいに狭い。
「ごめんなさいね」と中央のテーブルに移り蹲踞じゃなくて座って、お好み焼きを待つ。
左手に家族連れがいて、まずはそちらでボウルをかき回しで生地を広げ、ボクのテーブルのガスをつける。
そういえば、関西でお好み焼き店に入るのは、例えば関東で"吉野やに入る"くらい気軽な行為である。
千日前などでサラリーマンがお昼にひとりでお好み焼きも普通だし、神戸で大の大人が、お好み焼の店で「そばめし」を食べているのも当然すぎるくらい当然だ。
ということで、胃袋の隙間を鑑みるに無理をしてまで、この店ののれんをくぐったのは、「尼崎でやたらに粉もんの店が目についたこと」と、「お好み焼き店に入ると関西に来ているのだ」という実感がわいてくるためだ。
店のオネエサンが、テーブルに"かつおぶし粉、青のり、七味唐辛子、ソース"のお好み焼き界必須アイテムを置く。
コショウがなくて七味唐辛子は珍しいな、などと思う。
鉄板に手をかざし熱くなったのを確かめて、オネエサンが油引きで油をしく。
ぷーんとごま油の香りが立つ。
お好み焼きにごま油を使うのは、いかな関西でも珍しいだろうと思う。
まずは豚の厚めの三枚肉を鉄板に置き、横に生地を流す。
生地の形を整えて、豚三枚肉の焼けている方を裏面にして生地に乗せる。
火はかなり強め、時間をかけて焼いて裏返すと、しっかりと焦げ目がついている。
「よく焼くんですね」と聞くと、「まだ焼き足らん」とコテで焼いている面をめくって見る。
裏側もかなり、焼いて、焼いて、イラチーなボクの我慢の限界点一歩手前というくらいになって裏返すと表は焦げ焦げなのである。
たぶん、普通のお好み焼きの二倍近い時間をかけて、「ソース塗って、後はお好きに」と出来上がり。
ミニコテで切り取って口に放り込むと、表面は香ばしく、なかはしっとりしている。
イカや豚肉もいい味だが、コロコロとしたコンニャクが主役を食うほどにいい。
久しぶりのお好み焼きに大満足して大きな腹を思わずなでまわす。
ナイス市場の路地から商店街に抜ける。
数軒してまたお好み焼きの店。
これだけお好み焼きの店があると、店ごとの特徴を出さないと、生き残れないのかもしれない。
商店街から尼崎駅までの間、「神戸東店」に来るとやっぱり角打ちしたくなる。
店をのぞくと、来たときに群れていた、なんとなく怖そうなオッチャン達もいないようだ。
えいやっと気合いを入れて店の奥に進む。
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
尼崎で無駄歩き 03 後の記事 »
尼崎で無駄歩き 06