『長浜地方卸売市場』の加工場前には午前5時前についた。
黒猫が足もとをかすめて、ボクの約2メートル先から振り返る。
金色の目がふたつくっきりと闇に浮かぶ。
加工場の扉を開ける宮田勝さんがにこやかに
(最初はにこやかなのか怒っているのかわからなかった)迎えてくれて、
すでに串にさしてあった大きなサバをガスの焼き台に並べていく。
「これ何年やられているんですか」
「50年、くらいやな」
「このあたりでは昔からサバ焼いていたんでしょうか」
「そうだよ。敦賀が近いせいやろね」
上下の火にあぶられて、サバはすぐに脂をじゅうじゅうと落とし始める。
宮田さんが焼き台をのぞきながらサバの位置を変えていく。
「今日のは国産ですよね」
「そうやね。秋田県のだね。一時はノルウェーを使ってたんやけど、
最近は国産ばかりになったね」
焼き台に入れて約10分くらいだろうか?
思ったよりも短時間で見事な「焼鯖」が出来上がった。
「あっという間ですね」
「今日はね。昨日いっぱい焼いたから特別少ない。
多いときには何百本も焼きやるから大変よ」
焼き上がったサバを木箱に並べていく。
この焼き上がったサバから立ち上る香りに陶然とする。
朝ご飯前なので腹にみしみしと差し込んでくる。
突然振り返った宮田さんが入り口に突進。
ドアをどしんとしめた。
「猫や。油断がならん」
お土産にいただいた「焼鯖」2本を抱えて場内に向かう。
ボクの真後ろにはまた黒猫がつかず離れず。
「かわいいけど油断がならん」
『湖北の焼鯖』を帰宅後、適当に切り、
温めては何度にもわけていただく。
しょうがじょうゆで、湖北の酒の肴にしたら、
大きなサバがあっという間になくなってしまった。
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