岩手県上閉伊郡大槌町は、
今回の震災でももっとも大きな被害を受けたところ。
暗闇のなか、港を目指したときには気づかなかった
生々しい震災の傷跡が漁港からの帰り道に目の前に現れる。
このときはボク自身が大きなショックを
受けていたことに気づいていなかった。
実は帰宅後1週間になるというのにときどき
防災センターや壊れた防波堤が目に浮かんでくる。
そこでお亡くなりになった方達の生きていた日々のこと、
震災当日のことを想像して、早朝に目が覚めて眠れなくなる。
ただ、眠れないとき、
ボクのような一般人ができることを考えてみる。
それは、できるだけ被災地に行くこと、
しっかりこの津波の爪痕を見ることかな、などと思うのである。
そしてこれも重要なのだが、例えば大槌湾の美しさや、
おいしい海の幸を堪能して欲しいと思う。
さて、大槌町の2日目。
漁港はサケの豊漁にわいていた。
その分、変わった魚貝類は少ないのだが、
サケ満載のダンベに船いっぱいのマイワシを見ていて、
心が浮き浮きしてうれしくなってきた。
そこに宿である『六大工』のご主人小國さんが現れて、
袋に入れたヤリイカを渡してくれた。
「帰ったら刺身にしてもらえ」
小國さんは昔漁師であった。
そして今でも仲買、加工業、宿の経営などその仕事は手広い。
9時前に宿に帰ると宿泊客はすでに出払っており、
食堂はボクとマクブ(敬称は略なのだ)二人っきりの貸し切り状態だった。
朝食は比較的一般的な日本旅館のもの。
長逗留の方が多いので大変だろうと想像するが、
実はご飯もおかずも非常にうまい。
しかも毎日、違った品が出るなど工夫が見られる。
このなかで特筆すべきは「銀子(ギンザケの卵巣)」である。
釜石、大槌、宮古をスーパー巡りしたが、
総ての店舗にあったものが「銀子」と「紅子(ベニザケの卵巣)」、
「助子(スケトウダラの生の卵巣)」、「鱈子」だ。
三陸の方達はどうやら魚卵好きのようなのだ。
そこに女将さんが造ってくれたヤリイカの刺身がやってきた。
透明で身がピンと固い棒のようになっている。
釜石市で作られている甘口の「富士しょうゆ」を
かけて食べると無闇矢鱈にうまい。
尾鷲の岩田昭人さんなら「ヤリイカを食べに大槌町にきませんか」
と書くに違いない、そんなうまさである。
思わずご飯にのせて食べたら、ご飯の甘さとヤリイカの甘さ、
「富士しょうゆ」の甘さが三重奏をかなでて満足、満腹なのだ。
思い出すに、出っ張ったお腹を見て、お代わりをやめたのが残念だった。
被災地は考えさせられるだけではない。
大槌町は海の幸のおいしい町なのだ。
『六大工』
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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岩手県大槌町の『割烹 岩戸』、スエの刺身