日本全国の市場をめぐり、日本全国の市場飯を食べている。ただし、うまい市場飯にはたびたび出合っているが、魅力的な市場のすし屋はほとんどない。非常に少ないのである。
仙台中央市場に着くと、すぐに警備員さんに教えられて、市場の棟につながる細長い歩道橋に上る。歩道橋を渡り、最初に行き着いたのが関連棟の2階で、ここが食堂街。食堂、喫茶店などがニョキニョキと、今時の建売住宅のように無機質な色で並んでいる。よくもこれほど無機質な空間が作れるものだと、設計をした人のすさまじい無能ぶりというか、不気味さにおののく。そしてまた歩道橋を渡ると水産棟に行き着く。
場内を隅々まで散々見て歩いた。朝っぱらからの市場歩きは疲れるし、腹が減る。うまい市場飯を食べようと、仙台の市場人に教わったのが『誠鮓 市場のすしや』だ。市場人にすし屋を教わることは珍しい。
無機質な関連棟の食堂街にもどると、ニョキニョキを2つ分くっつけたという感じで『誠鮓 市場のすしや』と『みちのく汐里』の一枚看板が見つかった。どうやらこの2店舗は同じ店らしい。
店に入ると、まん丸い顔の巨漢の職人さんが笑顔で迎えてくれる。この職人さんのプニプニュした笑顔がいいのである。無機質な砂漠にやっとオアシスを見つけたようでほっとする。外観からすると期待は出来そうにない。いろいろ悩んでいると、今日はいいイワシがあるというのでイワシ丼にする。連れは市場丼。
このイワシ丼がいい意味での期待外れ、超美味であった。すし飯はややソフトで甘くもなく酸っぱくもなく、なかなかの出来だし、その上にのせられた宮城県産のマイワシが、とろとろと口溶けしながら甘い。蛇足だが、ネタの上にも刻み海苔なのは宮城県だからだろうか。
連れの市場丼にも創意工夫を感じて、思わず、なにか追加したくなる。念押しのつもりの玉(卵焼き)をもらうと、青じそ入りで甘さ控えめ、いい味である。
玉につられて、先ほどの美味の余韻をもう一度とマイワシの握りをお願いする。やはり言うこと無しの味だ。
このときはまだ7時前後で、すしダネが揃っているはずもないのに、こんなにうまいのは実力の表れだろう。
最後に名物の穴子。出てきたのはふんわりと厚みのある煮穴子で口の中に入れたら、溶けた。これはもう一かんといきたいね。
丼2、煮穴子、鰯の握り、卵焼きで計2700円くらいだったはず。安さ、お手軽度を加味するに、この店、「市場ずし」の名店とみた。
市場のすしや 仙台市若葉区卸町 仙台中央市場内
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