柳橋の市場群の一角にあるのが「柳橋食品ビル」。「丸中」や「水産物協組」などと比べると小さく、総菜などを売る店が数軒あるのみ。
この中ほどにあるのが『食堂 かつや』。細身のご主人と、女性二人で切り盛りしている。ほかには小皿盛りの総菜、串カツ、フライ類、ラーメンなどもある。
ご主人は恐ろしく寡黙。ただただお客の注文に応じて料理を作る。女性2人はたぶんご飯をよそおうのと、みそ汁をつぐのとくらいかも。出前があるかなどは不明である。
ちなみにラーメンも実にうまい。
愛知県で「あかしゃえび」というのはサルエビだとか、アカエビのことだとかいろいろ聞くが、ようするに三河湾で揚がる小エビ類の総称のようである。三河湾に面した一色に通っていたので、この小エビ類がいかに三河、名古屋などで重要なものなのかは知っていたが、名古屋のスーパーで普通に売られているのを見ると改めて思い知る。
さて、この愛知県ならではの「あかしゃえびの天ぷら」が手軽に食べられる店が柳橋中央市場の一角にある。「食堂 かつや」である。両手を広げた程度の間口しかない小さな店で、厨房を囲むようにあるカウンターだけの店。そのくの字型のカウンターに座ると目の前に頭部の硬い部分と胴の殻を取り去ったエビが置かれている。
これを指さすだけで、即座に天ぷらに揚げてくれる。朝だけの営業とは言え、名駅から10分足らずの場所にこれほど優れた愛知ならではの天ぷらが食べられる店がある。これも名古屋の底力かも知れない。まあ無機質で人間性に欠ける名駅から脱出して、ここに来るとやっと一息つける、そんなよさもある。
揚げるや無造作に皿に盛り、出てくるのだけど、カウンター上に天ぷらがある時間は数秒でしかない。まだ熱いうちに口に放り込むとエビの風味がふんわりと広がり、香ばしくて、身が甘い。そしてまた口に放り込むと、エビの風味がふんわりと広がり、香ばしくて、身が甘い。この繰り返しなのだけど5、6尾揚げてもらって1分足らずで皿の上は空である。
これも愛知県の22世紀まで残したい食の財産である。
現在、休業中とのよし。
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愛知県編 『浅田屋』みそ煮込みうどん