紺ののれんをくぐり店に入る。店内はやけに奥行きがあり、広い。清潔感のある店内は外観とは違い落ち着きがあり好ましい。
品書き総てが麺類。そしてそのほとんどがそばであり、温かいうどん三品がなんとなく余計に思えてならない。あとは郷土料理の「里芋の煮っ転がし」、「山菜漬け」、「味つけにしん」、「ゴボウの唐揚げ」。なぜ「ゴボウ」とカタカナなのだろう。それにそばの後に付け足されたような「ご飯(白飯)」は何で食べることを想定しているのだろう。まさか福井県では、そばでご飯を食べるのだろうか?
さて、あらかじめ「福井に来たら"おろしそば"だ」と思い込んでいたとおりに「おろしそば」(500円)をお願いする。
待つこともなく、やってきた「おろしそば」はあまりにもこぢんまりして慎ましやかだ。器は明らかに昭和に作られた"なます皿"で、もっとも基本的な5寸(約直径15cm)である。そばを盛るのに5寸は小さすぎないだろうか。中に太めの白っぽいそば、ねぎ、鰹節。左手の小鉢には大根下ろしを溶かし込んだつゆ、そして厚手の筒型の湯飲みにそば湯。この3点があまりにもお行儀良く並びすぎている、ような気がする。
「おろしそば」を食べるのは何度目だろう。初めてではない。前回は確か鯖江市で食べた。でもその折りの記憶も写真も残っていない。とするとこれをもって「おろしそば」の初食いとしてもいいだろう。まずはこの3点の配列、器使いを「おろしそば」の基本型として銘記しておく。
食べ方は、つゆを"なます皿"のそばにぶっかけて、あとは食べるだけ。鰹節とねぎ、そしてそばがつゆとからんでまとまり、まずは汁の控えめな辛みと味が先に来る。これが実に爽やかで、そばの香りはかなり後から感じられる。
"なます皿"一杯のそばではもの足りないというか、あっけない。
そばを食い終わり、追加注文した「里芋の煮っ転がし」が実にうまかった。そばの印象を完全に消し去るほどにうまい。これなら先に「里芋の煮っ転がし」を食べた方がよかったのかも。
ではこの「おろしそば」の味はいかがなものだったかというと、不思議なことに大野市を離れて、勝山市市街に行き着いたとき、もう一杯食べればよかったと後悔したのだ。この時間差でくる「おろしそば」のうまさとはなんだろう。
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