名駅にもほど近い那古野というところはまことに不思議な区画だ。名駅の高層群が見えようかというところなのに円頓寺という昔ながらの商店街がある。そこから路地に入り込むと仕舞た屋や古い食堂があり、もっと狭い路地に入りこむと地蔵尊のほこらがあったりする。
この円頓寺商店街のいちばん外れにあるのが『五条』。正確には「どて焼 五条」なのかも知れない。もつを豆味噌で煮込んだ、「どてやき」、「みそおでん(これも「どて焼」と言うらしい)」、「串かつ」、「焼き鳥」などがある。酒は主に焼酎と日本酒。一品は総て300円以下。「串かつ」は1本70円と非常に安い。
オヤジさんは愛想がよく聞くと丁寧に対応してくれるが、女将さんの無愛想振りは稀に見るといったところ。
「串かつ」は豚肉を串に刺し、フライに揚げたもので、名古屋居酒屋でもっとも重要な品のひとつ。値段は、高くて1本100円前後、安いとこの店のように70円ほどしかしない。これなら子供にも買い食いできるはずで、きっと駄菓子屋などにもあるのではないか? 要するにいたって下手な料理である。
名古屋ならではと思うのが、この「串かつ」を「どて焼」の煮汁(豆みそで作ったソースのよう)に浸して出してくれること。
これは明らかに名古屋の居酒屋の基本中の基本、「どて焼」の鍋が店の中央部というか、分かりやすいところにあり、揚げたての「串かつ」を「つけてみてもおかしくない」状況にあることから自然発生的に生まれたものだろう。
ちなみに「串かつ」はいつ頃、どこで誕生したのだろう。例えば「とんかつ(揚げ油に泳がせるように揚げる)」の誕生が明治の終わり頃だとして、この料理店の料理が、「串かつ」というより簡便な形に変わった、その意味合いを探るといいのだと考えている。ようするに「串かつ」の誕生は屋台などの屋外的な料理提供の場から生まれたに違いない。
さて、名古屋で「串かつ」を食べるときは、必ず半分は「どて焼」の煮汁に浸したもの、半分はソースにする。どちらかを選ぶとすると、よそ者のボクには「どて焼」に汁につけていただくことになりそう。
この『五条』でもソースと「どて焼」を半々でお願いする。この「どて焼」の汁が色の割りにはあっさりして、少々脂っこい「串かつ」と相まって飽きの来ない味になっている。食べ過ぎ、飲み過ぎに要注意。
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