管理人: 2012年4月アーカイブ

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初ガツオの入荷が続いている。
「初鰹」などと書くと、どうにも不思議な時代で
例えばどこから初で、どこから初ではないのか、
わからなくなってしまったけども、
木の芽時のカツオはやはり「初鰹」と書きたい。
八丈島から来た大型を樽から引き抜くと
縦縞がくっきりとあまりにきれいなので買う。
なんと4キロ以上ある。

撮影用なので、用済みになったらあちらこちらに配り、
あらだけ我が家に残す。
昭和24年に作られた中江百合という人の
お料理カルタに「身よりあら」というのがあるが、
鰹のうまいは、中落ちにあり、なのだ。
忙しい日々なので、中落ちを蛤の貝殻でかく。
これをぬらしたペーパータオルにくるんで大切に冷蔵庫にしまう。
そして曲がった鉄砲玉のように駅に向かう。

帰宅後、自宅仕事。
疲れているときに限って、なかなか寝付けないものなので、
こいつを寝酒のアテにするのだ。
シャワーを浴びる前に、
書き落とした中落ちに煮きり(醤油、みりんを煮きったもの)、
にんにく、生姜をからめる。
ネギを切り、中落ちと合わせてゴマを振ったら出来上がり。

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風呂上がり、冷たいビールに、中落ちでぼんやりしていると
すでに午前3時。
中落ちは半分くらい、350ミリリットルのビールで過ごす
この何も考えないひとときがボクには極楽なのである。
中落ちは半分食べて、ラップをかけてしまい込む。

翌日7時が基本的な起床時間。
頭がぼんやり、ひりひりするのだけど、すぐにお湯を沸かす。
沸騰したら、今朝の残りの中落ちに熱湯をそそぐ。
これを飲みながらメールの返信などをする。
つくづく思うに、中落ちを食べるとき、
このお湯かけを飲みたいために食べるのではないか、
なんてたびたび思い、それは「間違いない」と思うのだ。
熱々の湯の中で中落ちの表面が白くなり、点々と脂が浮かんでいる。
調味料の醤油、みりんがとけてきて、ネギとゴマの香りが立つ。
だしの味わいの奥深さ、滋味にあふれていることこの上ない。
健全な朝なら、これを飯にぶっかけて食う。
これも極楽、なんだよなー。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、カツオへ
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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今回の明石の旅の目的のひとつがうまい玉子焼きを食べること。
明石に来るたびに食べているのだが、
うまいものに未だ出合っていない。
ちなみに「明石焼き」というのは明石以外の人が、
明石人が「玉子焼き」と呼んでいたものに勝手につけた名前。
もともとは、江戸時代から大正にかけて作られていた
この地の名物珊瑚を模した宝飾品「明石玉」を作る際、
卵の白身を材料にしていて、
余った卵黄を小麦粉と合わせて玉状に焼いたもの。
主な原料が卵であるから「玉子焼き」で、
これが正式名称と考えた方がいい。
もうひとつの明石名物がタコであって、
2つの出会いは必然的なものだっただろう。
今や全国区となっているタコ焼きのルーツともいわれている。
 
正午過ぎ、明石浦漁協を後に、漁協近く岬町にある
宮部さん行きつけの玉子焼きの店
『今中』に連れて行っていただいた。
住宅街にある小さな店で、
まず観光客は来ない店のように思える。
外観からしてこざっぱりして好感が持てる。
がらりと引き戸をあけると、
左手に厨房とカウンター席、右手に机席。
厨房にいたのは、眉の濃い、きりりとした男性で、
もとは漁協にいた方だという。
 
テーブルについて、品書きを見ると玉子焼きとビールだけ
当然のごとく玉子焼きを注文する。
漁業の仕事が終わると、
ここで毎日のように玉子焼きを食べているのだという宮部さんが、
「ここのんは前浜もの(タコ)を使ってるんです」となんども強調する。
あげくに大将にお願いして、
小鉢に玉子焼きの具として使っているタコをもらってくれた。

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そのタコをまずは味見。このゆでダコのブツ切りがうまい。
さすがに前浜のタコは香りが高く、ほどよい甘さが舌に心地よい。
暇を持てあました午後など、ここにきてビールのつまみに、
このようなものがアテとしてあったら、
幸せだろうなー、そんな味である。
 タコに舌鼓を打ち、話に夢中になっているところに
玉子焼きがやってきた。

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柾目の真四角の板に20個の玉子焼きがのっている。
目の前に置かれた途端、もあーっと湯気が立ち、
そこに鉄板で焼かれた卵の香りが強く感じられる。
「熱いから気をつけてくださいね」なんて声がかかり、
まずはだしに1個落としてそのまま食べる。
このだしは、ややもの足りないほどの味で、
玉子焼きをほどよく冷やす役割と、
軟らかな玉子焼きを中で2つ3つに割って、
その味わいをほどよく包み込んで邪魔をしない、名脇役的な存在だ。
玉子焼きは、はんなりした味わいである。
けっして強い味ではなく、卵とタコの旨みをじっくり味わえるほどに、
そのもの自体に塩気や甘みをあまり感じさせない。
目の前にきた20個の玉子焼きが、最初は多すぎないかと心配したが、
一個食べてみると、この2倍あっても食べられそうに思えてくる。
明らかにここにあるのは魚の棚で食べたものとは別物。
玉子焼きってこんなにうまいものであったのだと、
名状しがたい気分になる。
 
宮部さんから
「だしでまず食べて、途中から塩とかソースとか
お好きなように食べてみてくださいね」
とアドバイスを受ける。
半分だし、半分ソースで食べる漁協の若い衆が多いともいう。
ためしに塩で食べて、ソースで食べて、まただしで食べてみる。

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ボク的にはだしで5個、塩で5個、ソースで10個だろう。
圧倒的にソースがいい。
考えてみると子供の頃からソース好き。
だいたい生まれ故郷貞光町(現徳島県美馬郡つるぎ町)は
間違いなくソース圏で、天ぷらにソースは当たり前、
目玉焼きにもソースをかけていたのだ。
このような店で通ぶっても仕方がない、
食べたいように食べるのが、玉子焼きの真の姿なのだ。
 
最後に、明石市で玉子焼きを食べるなら、
中心部をさけるべきなのかも、と思い至る。
宮部さんおすすめの店がこの岬町にもう一軒。
また駅に向かう途中にも一軒あったが、
どれも目立たない普通の構えであった。
こんど明石に来たら、あの店、そしてまたあの店と
宮部さんおすすめの玉子焼きを食べ尽くしてやるのだ!
 
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今中 兵庫県明石市岬町26−5
注/今中には駐車場がない。駅や魚の棚周辺の駐車場に車を駐めても
歩ける距離なので、車で向かうのは避けて欲しい
 
明石浦漁業協同組合

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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いつの間にか正午近くになって、
明石海峡から吹き寄せる風の冷たさに
身体がカチンカチンにかたまり
疲れとあいまって身体がゆらゆらしてきた。
事務所にもどり、コーヒーをいただくとやっと人心地がつく。
そしてほどなく、あっと驚く美味がやってきた。
「ふるせ」の塩ゆでである。
水揚げの途中で宮部さんがすくった「ふるせ(イカナゴの2年魚)」
とこんな形での再会である。
 
白い洋皿に、短いシャープペンシルくらいの太さの
「ふるせ」が腹の方に少し折れ曲がって小山になっている。
よく見ると、このイカナゴの身体のそこここに
蛍光イエローの脂が点々とついていて
あまりにうまそうなので、
思わず手でつまみ上げて口に放り込んだら、
すぐに上品な甘みが来た。
ああ、これが蛍光イエローの脂からくるのだと思っていたら、
今度は「ふるせ」本体が柔らかく舌の上で心地よくつぶれるのである。
中骨すら気にならないほどの脆弱さである。
この「ふるせ」のはらわたがほろ苦く、旨みが濃厚で
甲殻類のような風味があり、少しだけ甘みがあるのだが、
これは胃袋につまったエサの味であるようだ。
取り込んだエサの旨さを感じることが出来るのは、
とれたてだからに違いない。
 
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いくら食べても食べ飽きないなんて考えていたら、
5〜6本でイカナゴ特有の脂っこさ、
くどさをしっかり感じるようになる。
そこに宮部さんがポン酢をもってきてくれる。
明石では「ふるせ」の塩ゆではポン酢で食べるのが普通だという。
この「ふるせ」ポン酢がすこぶるつきにうまい。
「ふるせ」を丼一杯でも食べられそうだ。
さて、このときは「ふるせ」にお茶、であったがビールに合うだろうな。
 
宮部さんも、山下さんも盛んに箸を動かしている。
このような地元ならではの味に出合えることこそ、旅の醍醐味だ。
だから旅はやめられない。
 
明石に着いて最初の美味、「ふるせ」の塩ゆでを
作っていただいたのも畳谷さんであるという。
蛸壺とともに重ねて感謝。

明石浦漁業協同組合

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