三島市広小路は伊豆箱根鉄道広小路駅を中心として、また沼津に向かう大通りが東西に走り、それが分岐するところとして賑わいがある。言うならば三島にあって下町のようなところだろうか。その分かれ道が作り出す三角地帯の路地にあるのが「魚正」である。
魚屋を見つけたら入ってみる、それがボクの旅の目的でもあるので何気なく品揃えを見る。沼津底引きのしまえび(ヒカリチヒロエビ)が置かれている。発泡から魚を出しているオヤジさんに「沼津から帰ってきたんですか?」と聞くと「そうだよ」とのこと。その受け答えにとても気安さがある。
まだ午前中なので沼津魚市場からもどって間もなく、ちょうど品物を整理している最中。それでも丸のイサキの脇に初めて見る「自家製味付おするみ」というのがある。これは底引き網の魚であるギスをすり身にして卵白やデンプンを加え味付けしたものであるという。三島ではすり身を「おするみ」というのである。底引きの初競りの日なので、これは今日ほんの少し前に出来たばかりなのは間違いない。
これから魚が出そろうというときで店は慌ただしい。そんな目の前に出てきたのが「味付まぐろ」である。マグロの種類はわからないのだが、味見させてもらうと甘辛く煮あげて、すこぶるつきにうまい。その上、決して硬くないのはどうやって作るのだろう。ボクがあんまり食べたそうにしていたので味見させてくれたおっかさんが「どうおいしいだら」とにこやかに笑っている。ついでにお買い物中の近所の女将さんもボクの方を見て笑っている。なんと居心地のいい魚屋であることか。あんまりうまいので2パック買ってきたのが大失敗だった。4パック買えばよかったのだ。そうすればもっと楽しめたのに、「味付まぐろ」は当日、そして翌日の朝ご飯できれいさっぱりなくなってしまった。
こんどは品揃えがととのった時間にお邪魔していろいろお話しして、たっぷりうまいものを買ってきたい、そんな魚屋なのである「魚正」は。
魚正 静岡県三島市広小路町8-6
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