47都道府県すし屋図鑑: 2008年4月アーカイブ

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 一年でもっともマアナゴの少ない時期だ。このようなとき悪戦苦闘するのが『市場寿司 たか』である。
 格安で江戸前寿司を提供しているので、ちょっと材料が値上がりすると手が出なくなる。
「おまかせに(おまかせ握り)に穴子がなけりゃ困るよな」
 なんてぼやく日々が続いている。そこで登場してくるのが「煮いか」である。
 不思議なことに今年は「ばらいか」が少ない。これはスルメイカの若いもので、市場に入荷してくるときに、並べないでどさっとランダムに放り込まれてくるものだ。「煮いか」にはこの小振りのスルメイカがいちばん向いている。
 仕方ないので、産卵期の大振りのスルメイカを「煮いか」に。今年は「ばらいか」がないせいか下氷のスルメイカも高い。
 そんなこんなで仕込んだ「煮いか」が煮穴子ほどには人気がない。これほどうまいネタもないだろうと思うのに、なぜなんだろう。答えは知名度がないためだ。「煮いか」は古くから基本的な寿司ネタのひとつだが、市販品もなく、最近では手間がかかる(本当はかからない)といって作る寿司屋が減ってきている。
 だから、だれも知らない寿司ネタになってしまったのだ。
「オレの手間はただみたいなもんだからさ」
 売れない「煮いか」を握りながら、たかさんがぼやく。

 ぼやきながら握られた、「煮いか」のうまいこと。たかさんが作るのは“煮る”のではなく、軽く煮汁に通す程度である。当然スルメイカは柔らかく、甘味などはツメでおぎなっている。このスルメの味わいがいいのである。ふわっと来るのはなんだろうね。スルメイカが持つグリシンなどの旨味だろうか、そして甘味、香りのようなものも感じるが心地よいものだ。

 ふと、マアナゴは当分とれなくてもいい、と思うのであった。

市場寿司 たか
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八王子の市場のことは
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、スルメイカ
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 温暖化のためだろうか、さごち(サワラの若魚)が市場に溢れている。しかも鮮度的にもすぐれたものが少なくない。こんなにまとまって入荷してしまうと、さごちに飽きてしまったという料理人も多く、値段は安めで安定しているようだ。
 これを寿司ネタとして使う場合、酢締めにする、あぶる、という二通りの方法がありそうに思う。それでまずは実験。「あぶる」というのを試してみる。

 寿司職人、渡辺隆之さんに「あぶる」から始めようではないか? というと首をひねって、「やめようよ」という。
「『さごちのあぶり』は生のまま握って上からバーナーで焼くんだろ。ガスであぶったら皮がとれるだろ」
 我が家でなんどもやっていると言って、実際に寿司ネタを作ってもらう。

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 思ったよりも簡単に出来る。ネタの切り付けも難しいというほどではない。

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 しかも、である、これが非常にうまいのだ。皮目の香ばしさがあって、身は熱を通したためにとろっとしている。
「色がよければねー」
 たかさんの意見では血合い肉が「うまそうに思えない」のだという。

 まあ、いいではないか、これなら誰が食べてもうまいと思うに違いない。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、サワラへ
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