干物図鑑・干もの日和: 2007年12月アーカイブ

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 寒くなるとキビナゴの入荷が増えてくる。キビナゴはたくさんとれる時期が旬である。その上、値段は安く、市場では箱売りとなる。当然、2キロ、3キロと買い込むことになると、大量消費するための算段が必要となる。そんなとき必ず作るのが干物である。
 干物には家庭で作った方がうまいものと、市販のものがいいものに分かれる。市販のものでうまいものというと干すときに熟成が必要なもので、例えばキビナゴのような小魚だと、この熟成がむしろ無駄な苦みとなってしまう。だからうまいキビナゴの干物は家庭で作るに限るのだ。
 さて、実際にキビナゴを一箱買い込む。そのあらかたを干物にし、そして夕食には鍋、刺身が定番だ。今回は鍋、刺身は置いて、さて干物作りの話。

 八王子総合卸売センター『総市』水産部で見つけたのが愛媛県産のもの。一箱2キロを半分だけ買う。この値段が400円なり。
 鍋用をとりのけて、まずは大きめの発泡に放り込み、上から塩をふる。この塩加減はやや控えめに。

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 ここで20分ほど待つ。ただ待っていてもつまらないので『市場寿司 たか』でお茶をみながら無駄話。
 20分たったら、これを水洗いする。
 これを発泡のフタの上に揚げ、斜めにして少し置き水切り、持ち帰る。
 後は干しザルに並べてしっかりと干す。このときネコなどに注意すること。ザルに広げる最中にも油断は禁物。

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松太郎よせ!

 キビナゴはやや硬めにしっかり干した方がうまい。

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ザルを傾けるとパラパラとする感じが、干しあがり

 この脂ののった時期のキビナゴの干物の味をどう表現すべきだろう。その魅力の最大のものはやはり旨味と適度な苦み、脂から来る甘味かな? とにかく食べても食べても食べ飽きない。

 我が家に松太郎というネコがいて、ボクが食べている干物の半分はくれるものと考えているようだ。でもキビナゴだけは2本しかあげない。面白いのはキビナゴの干物をあげると「ウニャー、ウニャー」と鳴きながら食べている。この「ウニャー」は「うまい」なんだろうか? ネコ研究家のヒモマキバイさんにお聞きしたい衝動に駆られる。まあとにかく「ウニャー」と鳴いても、もうあげないからね。

 さて、朝昼晩、お茶請けに食べてもうまいものだが、ボクとしてはやっぱり肴としたい。キビナゴの干物にビール、合うぞ! 例えば熱燗、合うなー。焼酎、もっといいかも。ということで酒の進むこと。
 後々、必要となってくるのは食べ過ぎない自制心だけかな?

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、キビナゴへ
http://www.zukan-bouz.com/nisin/kibinago.html
八王子の市場に関しては
http://www.zukan-bouz.com/zkan/sagasu/toukyou/hatiouji/hatiouji.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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 ムロアジの仲間の味の特徴は“干物にしてうまい”ということ。特に冬になってオアカムロに脂がのってきて、その干物も旬を迎えているわけで、市場で見つけてはせっせと干物作りに励む。

 我が家ではアジ科の魚は総て背開きにする。今回の三重県産は背開きした切り口からして白濁して、頭をなし割にする包丁に脂がべっとりと着いている。
 さてどうして背開きかというと、初めて作った干物を背開きにしただけの理由で、深い意味合いはない。よく干物の開き方の説明で腹側、背側の利点をアレコレ書いているが、どうも説明に説得力がない。きっと産地でも昔からのやり方だからという「あまり深く考えないで」やっているだけだと思えてならない。

 これに振り塩をして、もう一度開いたものをとじてラップで密封してひと晩寝かす。家庭で作る干物は当然あまりたくさん作るわけではなく、ボクなど1匹でも2匹でもかまわずに干物にしてしまう。というわけで例えば干してから「えん蒸(干物を束ねて密閉してねかす)」できるわけでもなく、また立て塩にして塩水をもなんども使うわけでもない。すなわちアミノ酸発酵(熟成)させる余地がないのだ。振り塩にするのは立て塩は塩加減、つける時間が難しく、「いつもの塩焼き」のように味つけするほうがわかりやすい。
 要するに塩加減は塩焼きと同じ、熟成は干す前に寝かせることで補うのが我が家風。

 これを初冬の素晴らしく晴れ上がった日に、8時間ほど干し上げる。この日は適度に風があり、吊した干物がゆらゆらと揺れている。絶好の干物日和だ。

 これを翌日、お昼ご飯のおかずにする。大きすぎるので半身にして、焼きながら、ワクワクするような香りが立ち。「早く焼けないかな」とそわそわする。
 残りご飯を温めて、みそ汁はインスタント(八王子総合卸売センター『総一商事部』で買ったもの。最近のものはよくできている)だけど、なかなか主菜が出来上がらないのだ。
 やっと焼き上がって干物をむしり始めると食卓に走りのぼってきた野生むき出しの動物がいる。これがまるで獲物を見つけたチータのような姿勢をしている。ということは、やっぱり干物に突進してきた。
 あとは猫との戦いとなった。仕方なく尾の方も焼き、仲良く食べる。この猫にもわかる味の良さというのは本物かもしれない。まず香りがいいし、旨味が強く、身質も素晴らしい。

 猫を追い払いながら食べても、あまりじっくり味わえるということにはならないようだ。うまいことはうまいが、満足そうに手をなんどもなめなめ、顔をぬぐう猫ほどにはオアカムロの味を楽しめなかった。
 次回は猫の寝ている間に食べることにするのだ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、オアカムロへ
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 ハガツオは関東では「ほうさん」「とうさん」よ呼ぶが、これは身体の縞模様から「棒桟」、「唐桟」という江戸時代に流行した織物に名を借りたもの。また多いのが「きつね」という呼び名で、これは顔つきがずばり似ているからだ。ハガツオの呼び名ではこの「きつね」というのが、ボクとしては好きなわけで、これはまあ他の食べ物でも「きつね関係」はみな好きだというのに起因している。私のこの単純な発想を笑っていただきたい。
 さて、今回試みようとしているのはハガツオの干物。「きつね」とつくと“きつねうどん(大阪の)”でも、“きつねずし(関東のいなりずし)”でも食べ始めると大食いに走る気があるボクだから、これもそれにちなんで“きつね干し”と名付けることにする。

 きつねうどん、きつねずしに共通する材料が醤油だ。だから今回は唐辛子醤油、味醂のみで味つけする。「唐辛子醤油」は熊本県宇土市の『熊井醤油』のもので、八王子総合卸売センター『伸優』にいただいた優れもの。ハガツオは細長く棒状に切り、地に漬け込む。

 漬け込むこと一夜にして早朝から干して、晴れた日で夕暮れまで。やや乾き気味にしてみた。

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 これがなかなかホクホクした身であり、そこに青魚特有の旨味があって、舌にちょっとピリリとくる。ビールの友にいい。残念ながらご飯のおかずとはならず、もっぱら肴として消費している。

 過去にヒラソウダガツオの干物を作って、これがとてもうまいものだった。それ以来、サバ科の回遊魚をみつけると干物を作って試しているが、ハガツオはなかでも上々のもの。ハガツオは小さくても1キロを割ることはない。とすると往々にして、タタキなどにして余ったところは煮つけや、唐揚げなどにしていたのだけど、ここに定番料理として干物が加わったのだ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ハガツオへ
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伸優
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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