魚屋出会い旅の最近のブログ記事

築地場内加藤水産

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築地場内を何年も歩いていると、のぞいてみないと帰れない店というのができてくる。

例えば『大音』さんとか『かね十』さん、『尾辰』さんなど。

なかでも近年めきめき面白さを増してきているのが加藤水産である。

店頭をにぎわす活魚がめちゃくちゃにおもしろい。

そして安い。

気になる小物などを持っているのもいい感じである。

蛇足になるが店の方達が少々明るすぎるのが気になる。

しっかり仕事しろよ!


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

『海鮮市場 魚かつ』、古川佐幸さんが、我が土曜会に遊びにきてくれた。
会場で見事な魚さばきを見せていただき、また山口の魚の話もうかがった。
もっと時間があったらよかったのだけど、ネットのページを見て、なんとも魅力的なのに驚く。
山口県宇部市と聞くだけで魚の絵柄が浮かんでくるのは小数派なのだけど、ここは知る人ぞ知るといった魚の宝庫なのだ。
まだまだ間に合うだろう山口県のハモ、ブトエビ(サルエビ)、マダコ。
私ぼうずコンニャクも一度宅配をお願いしたいな。

海鮮市場 魚かつ
http://www.rakuten.co.jp/uokatsu/


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 さて、和歌山県、魚々ちゃんの通販専門魚屋「魚々ちゃんさかなや」の開店も近い。どんどんホームページの作成は進み。「来週にでも開店の運びとしたいなー!」と勝手に協力者となっている、ぼうずコンニャクは意気込んでいるのだ。
 そこで今回は“ネット上仮想競り”を行います。春に日の紀州和歌山「魚々ちゃん地魚便」あなたなら幾らで買う。(あくまで仮想なので実際にはお魚を送ることはありません)
●中身のご紹介
マトウダイ これは刺身。ムニエル(フレンチではサンピエールと呼ばれる)、煮つけに鍋物
アイブリ  アジ科の魚。身質はメダイに近い。刺身、フライ、煮魚
マゴチ   これからどんどんうまくなる。刺身、洗い
クルマダイ ちょっと小さいのだけれど刺身は絶品。ウロコを取らないままひいた皮の唐揚げもうまいんじょ!
アカエイ  煮つけにしてうまいぞ。コラーゲンたっぷり肌によし
ホタルジャコ これは唐揚げ
キントキダイ 刺身がいいんです
テナガダコ 我が家ではゆでタコ、桜煮
コウイカ(はりいか) 当然、刺身、げそなどは茹でる。天ぷらもうまい
スルメイカ 卵を持ってます。刺身、煮つけ、一夜干し

さあ、これ丸でいくら。私思うに寿司屋さんなどには持ってこい。また団塊の世代のこれから新鮮な魚貝類を極めたいという向きにも最高だ!
また内臓を取って欲しい。もしくは頭もいらないなど意見を聞かせてね。

魚々ちゃんさかなや仮店舗へ
http://www.zukan-bouz.com/zkan/toto/index.html
問い合わせは
cfdbt706@jtw.zaq.ne.jp


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 お茶の水から湯島天神に向かい、坂を下って地下鉄湯島駅までのコースはボクの無駄歩き最短コース。時間があればそのまま上野広小路、御徒町と歩くのだが、冬の夕暮れ時を楽しむのには、この最短コースでも充分である。
 その湯島駅に下りてしまおうという交差点そばにあるのが「よろずや」である。夕暮れ時にみる「よろずや」がなんともいい風情なのだ。陳列ケースの下側が白いタイル張り、その奥の裸電球の色合いがなんとも美しい。
 いつも冷蔵ケースをのぞいて、「やっぱり湯島という土地はお高いんだな」と思いながら通り過ぎる。この日も“生ダラ1切れ600円”“生かじき1切れ800円”とあって足がすくむのだ。でもその奥にうまそうな「こはだ」がある。

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 見たところ間違いなく“こはだサイズ”。この時期は「なかずみ」が多く、小振りのを見つけるのは大変だろうな。見ている内に「こはだ」を買いたくなる。
 店の脇に回ると女性がいて、白衣の老人がまな板の前に向かっている。
「こはだ幾らですか?」
「一人前700円です」
 やはり、そんじょそこいらの魚屋よりは値段は2段くらい上である。でもせっかくだから一人前お願いする。「サヨリを混ぜましょうか?」というので2種盛りに。ついでに「タコ酢500円」。合計1200円は我が家としては散財である。

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 この「こはだ」がなかなかうまい。〆ぐあいがやや軽く、ほんのりこはだの味わいが生きている。仕入れが上手なのだろう。まったく生臭みがない。サヨリも上々。タコ酢の酢の味わいが上品で爽やかである。
 まあ、酒場で遭難するよりも、「よろずや」で散財する方が遙かに健康的である。月に一度は「よろずや」で〆ものを買うというのもいいだろう。


よろずや 東京都文京区湯島3丁目34-12


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 相模原綜合卸売市場「デイトレード」は本来冷凍ものなどを扱っている。本拠地は神奈川県平塚市。それが今年4月に相模原綜合卸売市場に支店を開業。それとともに平塚、大磯、佐島など相模湾海の幸を運んでくるようになった。その魚が素晴らしい。相模湾の地魚というと相模原、三多摩地区からも近くふんだんに見かけてもおかしくないだろう、と思うはず。ところが残念なことに関東での流通は東西にはあっても南北は手薄だ。八王子などにくる相模湾の地物も総て築地や太田、横浜中央から経由して一日置いての入荷となる。
 そんな状況にやっと「デイトレード」を見つけたときにはうれしかった。相模湾であがったばかりのヒラソウダが炭焼き(クロシビカマス)が活けのホウボウが平塚に揚がってから数時間の後には相模原に来る。これから寒くなるとアラやアカアマダイ、マダイなども来るはずで大いに楽しみである。

「デイトレード」は相模原綜合卸売市場の奥の目立たぬところにある。市場内を見て回ると、鮮魚を扱う仲卸は多く優秀な店や貝を多く扱う店などなかなか充実していると感心させられた。でもどの店舗もあまり特徴があるとは思えない。さあ帰ろうかと諦めかけたとき薄暗い通路の奥に相模湾のスマ、白むつ(ワキヤハタ)を見つけたのだ。市場の1区画だけの小さな店舗ながら。店長の小田剛さんをはじめスタッフも若く、従来の仲卸とは一線を画している。
 この小田さんにさっそく平塚の定置網、魚市場の状況をお聞きして、17日には相模湾に向かい早朝の国道を南下した。平塚魚市場、平塚港で見聞きしたことは別に記すが、小田さんを通じて平塚定置の責任者磯崎さん、大磯の大磯森谷さんなど多くの知古を得た。

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 残念ながら当日そして、今週初めまでの相模湾は不漁をかこっており、市場に並ぶ魚は少なかった。でもそこで見たさまざまな魚たちの見事さは水揚げ港ならではのもの。ボクはあっという間に相模湾の魚貝類の虜になってしまったのだ。それから土日を挟んでの3日間、毎日「デイトレード」に通う。

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活けのアイブリ、ホウボウ。どれも「活かし」の難しい魚たちなのだ

 相変わらず不漁続きながら「市場寿司 たか」に多くの寿司ネタをもたらした。それをこの週末から寿司図鑑の1ページにまとめるが、相模原という内陸部で水揚げされたばかりの魚貝類を手にする感激は例えようもなく、またありがたいものである。

「デイトレード」 神奈川県相模原市東淵野辺4-15-1 相模原綜合卸売市場内
相模原綜合卸売市場のことは
http://www.sagamihara-ichiba.co.jp/


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 時間があると無駄歩きをする。歩くのは下町の商店街が多く、そこで「いいな」と思った魚屋を見つけると「しめ鯖(大阪では生ずし)」を買う。
 個人で経営する魚屋が年々減少している。これはとても残念であるとともに、子供を持つ身には「食を学ぶ場所」が消えつつあるわけで大変嘆かわしい。今時の政治家や都知事は「破壊者」ではあっても「温存」を重要視する、「平和的な存在」ではない。だからまだまだずーっと魚屋の減少は続いて行くに違いない。早く一軒でも多くの魚屋を見て置かなくては絶滅してしまうのだ、魚屋が。

 横道にそれるが、今時流行(流行でしかない)の「食育」というのがある。これを声高々に言っているヤツら、どこかずれている。またおかしい。「食育」が無農薬・自然食と置き換わったり、「料理を楽しみましょう」なんてバカ野郎までいるのだ。「食育」というのはそんなもんじゃないだろ。無駄金、無駄な労力を使うよりも「子供達を、また食に無知なヤカラを魚屋に行かせろ」、その方が何千倍も意義がある。

 閑話休題。
 西日暮里から三河島、そして地下鉄日比谷線三ノ輪橋駅に向かっているとき、突然煌々と灯のともる店が見えた。冷蔵陳列台(この言葉正確ではない)があるので魚屋に違いない。
 時刻は5時前。店の中には優しそうな女将さんがいて「めじまぐろの刺身」を並べている。その横に「しめさば350円」「さんまの酢300円」。

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 これはどうみても自家製のもの。値段も安くて「いいな」と思っていたら、女将さんが出てきて
「なにか差し上げましょうか」
 この間がなんとも絶妙である。
 もう一度陳列台をみる。よく見ると中がピカピカにみがかれてる。「さんまの酢」というのに少し惹かれて迷ったが初志を貫徹して「しめさば」を買う。
「あの少し撮影してもいいですか」
 おずおずと聞くと
「いいですよ。どうするんですか」
「いえ、下町歩いてしめ鯖を買うのが趣味なんです。この店は何年くらいやってるんですか」
「ウチは2代目なんです。お父さん何年くらいね」
 店の前を掃除していたご主人が、
「どこから来たんですか」
「八王子の方なんです」
「へえ驚いた。ええとねウチは60年かな」
「この辺りも昔は賑やかだったんでしょ」
「そうだね。昔はにぎやかだった」

 最近気がついたことだが、魚屋さんや和菓子屋、パン屋さんで創業の時期を聞くと「60年くらいかな」というのが多いのだ。これを単純に考えると終戦後すぐの食糧事情のもっとも悪い時代にあたる。街の復興よりも「まず食べること」が最優先だったのだろう。それを裏付けるかのごとく1946年に復活したメーデーを「食料メーデー」と呼んでいる。

「魚正」の間近にオリンピックというスーパーがある。ボクとしてはスーパーとは今のままでは「食文化の破壊者」でしかない。たぶんまだまだ健在な商店が多いとはいえ、この商店街もこのような大型店舗につぶされてしまうのだろうか?

 ぼんやり考えていると「魚正」のご夫婦が
「また立ち寄ってください」
 優しい声をかけてくれた。

 さて自宅に帰り着いてさっそく「魚正」の「しめさば」を肴に酒を飲む。この「しめさば」がうまいのである。酢はやや控えめ、ほんのり味わいに甘味を感じるのは砂糖を使っているのかも知れない。使っているサバもいい。家人などボクの肴だというのに半分以上横取りをする。失敗したと思ったが遅い。
「さんまの酢も買えばよかった」


魚正 東京都荒川区東日暮里1丁目31-1 03-3801-0046


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 三島市広小路は伊豆箱根鉄道広小路駅を中心として、また沼津に向かう大通りが東西に走り、それが分岐するところとして賑わいがある。言うならば三島にあって下町のようなところだろうか。その分かれ道が作り出す三角地帯の路地にあるのが「魚正」である。
 魚屋を見つけたら入ってみる、それがボクの旅の目的でもあるので何気なく品揃えを見る。沼津底引きのしまえび(ヒカリチヒロエビ)が置かれている。発泡から魚を出しているオヤジさんに「沼津から帰ってきたんですか?」と聞くと「そうだよ」とのこと。その受け答えにとても気安さがある。
 まだ午前中なので沼津魚市場からもどって間もなく、ちょうど品物を整理している最中。それでも丸のイサキの脇に初めて見る「自家製味付おするみ」というのがある。これは底引き網の魚であるギスをすり身にして卵白やデンプンを加え味付けしたものであるという。三島ではすり身を「おするみ」というのである。底引きの初競りの日なので、これは今日ほんの少し前に出来たばかりなのは間違いない。

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 これから魚が出そろうというときで店は慌ただしい。そんな目の前に出てきたのが「味付まぐろ」である。マグロの種類はわからないのだが、味見させてもらうと甘辛く煮あげて、すこぶるつきにうまい。その上、決して硬くないのはどうやって作るのだろう。ボクがあんまり食べたそうにしていたので味見させてくれたおっかさんが「どうおいしいだら」とにこやかに笑っている。ついでにお買い物中の近所の女将さんもボクの方を見て笑っている。なんと居心地のいい魚屋であることか。あんまりうまいので2パック買ってきたのが大失敗だった。4パック買えばよかったのだ。そうすればもっと楽しめたのに、「味付まぐろ」は当日、そして翌日の朝ご飯できれいさっぱりなくなってしまった。

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 こんどは品揃えがととのった時間にお邪魔していろいろお話しして、たっぷりうまいものを買ってきたい、そんな魚屋なのである「魚正」は。


魚正 静岡県三島市広小路町8-6


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 沼津魚市場に買い出しに来ている三島の魚屋を菊地さん(沼津の魚の達人、菊貞・山丁 菊地利雄さん)に紹介してもらった。これは三島市を無駄歩きをするに何軒かの魚屋を見て回りたかったためである。無駄歩き出来る時間はいつも少なく、今回は本町の「魚貞」さんを目差す。三島市は小さな街であり、商店街もそんなに多くはない。中にあってもっとも賑やかなのが三島大通りなのである。ここから一筋北にある通りに「魚貞」はある。
 午前10時過ぎ。とりあえず自転車で店の前にくるとちょうど沼津魚市場で仕入れてきた魚を下ろしているところ。ここから荷を出し、店に並べ、また魚などを水洗いする。とても忙しい時間なので、三島市街を見て回って、ふたたび店に舞い戻ったのが11時半。
 ちょうど落ち着いた時間だろうか? と店内に入ると、あにはからんや「魚貞」さん、今まさに巨大魚と格闘していたのだ。
「これはたぶん島(伊豆七島)のものかな。「もろこ」だけど、こんなもの仕入れる魚屋も少ないでしょう」
 見たところ魚は30キロを優に超えている。そのウロコをすきびいている。背ビレ、顔つき、色合いから伊豆半島、伊豆七島での「もろこ」はクエであることは明白である。
「これを切り身にして店に出すんですか?」
「いや、これはこのまま下ろしたら料亭や旅館だね。一般家庭じゃ買えないね」
 そう一般の魚屋ではとても扱えない高級魚、しかも目の前にあるのはクエとしてもかなり巨大なもの。この魚、ウロコが硬く、シャキシャキと引いて取ることは出来ない。それでウロコと真皮の間に包丁をいれてすきびきにする。なかなかこれが難しいのであるが、「魚貞」さんは手早く的確にすきびいていく。
 これを店の前から撮影させてもらったが、その迫力やみものである。こんどはじっくり三島での時間をとり、「魚貞」の刺身や切り身を買って帰りたいものだと思いながら、八王子で沼津のエビを待っている「市場寿司 たか」を目差して帰途につく。

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魚貞 静岡県三島市本町4-5 電話055-975-1895


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 肥満の軽減のためにときどき自転車で遠乗りする。いつもやや上り坂の高尾あたりまで行くのだけれど、西の空当たりからドドドッ、グドルングドルンと重苦しい音が響いてくる。ここがちょうど西八王子駅の入り口。左折して西八王子駅南口に回り「スーパーアルプス」を越えて『魚善』を探す。

『魚善』は間口2間ほどの小さな魚屋、表から、
「善さん、いるかい」
 声をかけるとまだ開店準備中らしく冷蔵ケースには発泡スチロールのフタを貼り付けている。
「善さん、なんでこんなフタ貼り付けてるの。みっともないだろ」
「まあね。格好悪いんだけど、ここ触ってごらん」
 ケースの発砲ののっていない部分を触れと言う。触るとひんやりする。そして発砲をどかせると、
「触ってみて」
 発砲の下はひんやりではなく冷たく痛いくらいだ。
「わかっただろ。この差が大きいんだよ。ウチなんてお客が来るのが夕方だからさ、まだ準備中ってこと」

 空は真っ黒になって風が出てきた。店内に入ると、マイワシの酢締めの仕込みをやっている。気温は30度を遙かに超えているだろう。店内に入るとほっとする。青白い蛍光灯の下でみると、ちょっと善さんの髪の毛薄くなったなと思う。でもだからといって疲れている風でもなく、いつもながらに淡々としてマイペースの語り口を崩さない。

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「やっぱ、今、サバはダメだな」
 手開きにして塩をしたマイワシを酢に浸す。薄くなった髪の毛のことが気になって、つい、
「善さん、店は始めてどれくらい」
 突然紋切り型の質問を投げかけた。
「そうだね。魚屋になって40年目だから、どれくらいかな。ここは25年くらい」
 善さん、娘が成人を過ぎているとしても、どう見ても50代前半、40年はないだろう。
「昔さ、練馬の東伏見、西武新宿線の、12くらいだったかな、『魚善』という店でアルバイトしてて、そのまま14年くらいいたかな」
「じゃ、なに、善さんがこの店を始めたわけ、次いだんじゃなくて。練馬からののれん分け」
「そう、練馬の『魚善』はなくなちまったけど、そういやあ子供のときも好きでいってたんだろうね」

 
「オレさ、魚屋が好きでね。なんて言うのかなお客が来てさ、いろいろ聞いてね。刺身を引いてあげるだろ。一言二言話をしてさ」

 外を見ると行き交う人が傘を差している。雷の音も凄まじい。
「梅ジュース飲む」
 グラスに氷、そこに梅ジュースを入れて水で割ってくれる。
「これウチのの手作り」
 まな板に向かってマコガレイ、ヒラメの縁側を切り発砲の船に乗せてラップでくるむ。そのマコガレイがいい色合いである。『魚善』では養殖魚を使わないので、白身が多くなるんだと思われる。また塩ゆでした磯つぶ(エゾバイ)をこれもパック詰め。

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「あのさ、こっち(八王子)へきて驚いたの。こっちはさ魚屋だと刺身切ってパックに詰めとくじゃん。これいやなんだよね。できればさ、客の注文で切りたいわけよ。だってさ切って時間が経つとどんどん味が悪くなるだろ。そんなの食って欲しくないんだよな」
「でも今時、魚屋とあれこれ話していく人も少ないだろ。仕方ないよ」
「わかってるんだけど、この前も女の人が刺身を買うっていうんだけど、それがさ、お父ちゃんが帰ってくるの11時過ぎだっていうの。それなら自宅で刺身に切って欲しいって言ったわけ」
「それじゃ商売になるわけないだろ」
「そうだよね。でも注文受けてから切りたいよね」
 外は土砂降りの雨、ここがいちばんの降りと思われた。
「もう少しだね。西の方が明るくなっている」

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 電話が頻繁にかかってくる「お弁当用のサケの切り身とっておいて」だとか刺身の予約。またあとから奥さんが来て配達もする。
「まあ、オレ、魚屋が好きなんだね。おいしい魚売って、店で『おいしかったよ』って言ってくれる。これがいいんだね」
 店の前の平のケースには丸、切り身が満杯になっている。そして刺身も並んできて、
「がんばってよ善さん」

 嵐は去っていったが雨は降り止まぬ。傘を借りて帰ってきた。浅川の上にかかる虹の美しいこと。


魚善 東京都八王子市散田町3丁目21-25 電話042-664-2130


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 慌ただしいというよりも落ち着かない日々を暮らしている。木曜日には内視鏡検査で大腸のポリープを切除。金曜日には胃の内視鏡検査を受けなければならない。と言うことは明日からほとんど絶食状況になるのであって、出来ればうまい夕食でも食いたいと思えども家族の反応はいたって冷淡。まったくとりつく暇もない。
 そんな夕方、思いついて八王子小宮の「スーパーイシカワ」まで行ってみる。午後4時過ぎの刺身のケースはすでに満杯状況。奥から石川榮次さんがあと一カ所開いているかななんて出してきたのが真つぶ(エゾボラ)の刺身。これだっ、と真つぶとカツオの刺身を買って、とぼとぼと帰宅。7時近くまで画像の整理にかかる。

 夕食はマサバのいり焼き、カツオと真つぶの刺身。あとはなし。何しろ夕食に家族は不在。いつ帰るともわからない。太郎とふたりで寂しく、そしていい加減な夕食の用意をする。
 マサバのいちばん悪い時期にどうしてマサバなのかと思われるかも知れない。これはマサバの子(卵巣)が欲しかったため。味コンテンツにマサバの卵巣は欠かせない。当然、身にうまみはなく、しかたなく万能料理である「いり焼き」にしたのだ。いり焼きの材料はサバと玉ねぎ。玉ねぎがなかったら白ネギでもいいかというと否である。いり焼きは玉ねぎなくして成り立たない。またマサバの他にサワラ、メダイでもうまい。

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「スーパーイシカワ」の真つぶ(エゾボラ)には貝殻がついている。真つぶの刺身に貝殻がないというのも情けない。これで480円

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カツオの刺身は400円

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いり焼きはご飯にもあうのだ。


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