毎年、困ってしまうのが高知の永野さんから“えがに”トゲノコギリガザミのメスが到来して、その旨さを表現することである。ぜんぜんうまく、その「うまさ」が表せない。お手上げである。
例えば、我が古女房が目の前で“えがに”を食べている。それはもの凄く険しい顔つきになっているのだ。これなどグンカンドリが獲物をくわえてきて、それを横取りしようと近寄ってきた仲間に対する「アレ」そのものだ。とにかく一杯確保して、「みんな少しずつ身と内子を残しときなさいよ」と言った途端に黙って“えがに”と格闘している。
あとは完全に食べ尽くすまで無言となる。どうやらボクもそうなるらしい。この内子のコクというか、旨味というかを舌で堪能しながら、あまりの衝撃に脳天がしびれていく。そこにカデンツァのように来るのが身の爽やかな、それで明確な甘味。まさにモーツアルトのピアノ協奏曲を呼吸少なく一気に聞き通す、そんな30分間なのである。
そして本日は家人の命令で「残しておいた」、内子と身を使った恒例の玉子焼きを作るのだ。これはとても単純すぎるもの。いい鶏卵を求めてきて、銅の玉子焼器を熱して、“えがに”入りの卵を流し入れる。入れた途端に火を消して、トロリトロリなのをご飯にかけるだけなのだ。そう言えば昔は天津丼にしていたのが、単純に玉子焼きになったのは我が家では“えがに”を食べることでの進化に違いない。
さて、この時期にしか食べられない究極の美味“えがに”は永野さんの「土佐の廣丸」へ。また永野昌枝さん、廣さん、ありがとうございました。
土佐の廣丸
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市場魚貝類図鑑のトゲノコギリガザミへ
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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