食べるエビ・カニ学: 2008年9月アーカイブ

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 広島県倉橋島の日美丸さんから、大きなフジツボが送られてきた。
 なんと大きなフジツボであることか。
 これがまさか市場で普通に見かける青森県産のミネフジツボと同種であるとは思えなかった。
 いったいなんだろうと、あれこれ迷いに迷った。
 そして駒井智幸先生(千葉県立中央博物館)に見て頂き、「ミネフジツボですよ」となったのだ。
●注/駒井智幸先生は甲殻類の分類ではまさにトップランナーである。

 瀬戸内海はまことに不思議なところだ。
 水温が低いので、マボヤやトゲクリガニがいる。
 北海道道東で食用になっているスナエビがいる。
 この生き物からして青森県陸奥湾に似ている。

 この大きなミネフジツボがうまかった。
 フジツボの石でできた噴火口を思わせる部分を周殻といい、なかに爪のようなものがあって蓋板という。
 蓋板が4つに分かれているのだけど、これをつまんで軟体部分を引きずり出す。
 うまく取り出せたら、この淡黄色の部分を食らう。
 濃厚な甲殻類の旨味が口全体に広がってくる。
 軟体を食べ終わったら、こんどは噴火口を逆さまにして、なかにたまった汁をすする。
 この汁が舌を押さえつけるような旨味を含んでいる。

 青森県のミネフジツボは何度も何度も食べているが、そのたびにうまいとも思い、また値段の高さも思い知る。
 今回、日美丸さんから送って頂いた、ミネフジツボを築地場内で買ったなら、間違いなく5000円以上する。
 そのほとんどを我が家で食べてしまったのだ。
 これはなんとも贅沢だ!
 蒸し上げた画像をもう一度見ながら、倉橋島にミネフジツボを取りに行きたしと思う。

広島県倉橋島 日美丸
http://ww5.enjoy.ne.jp/~kogera0401/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ミネフジツボへ
http://www.zukan-bouz.com/koukakurui/fujitubo/minefujitubo.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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 関東の市場でフジツボが売られていたとして、それは十中八九、いやほとんど百パーセント青森県産のミネフジツボだろう。
 ミネフジツボは青森県では古くから食べられており、養殖されている。
 不思議なことに呼び名は「かき」だ。
 “小型のグラスほどもある”というのがあって、それならチリ産のピコロコだったりする。
 両種の特徴は“大きくなる”ことにつきる。
 さて関東の市場で見かけるフジツボはこの2種だけと思って間違いないだろう。
 フジツボというのは歩留まりからして、最高値の魚貝類だと思われる。
 例えば1キロ2500円也で買って、可食部は10分の1よりも、はるかに低いだろう。
 それでも毎日のように見かけると言うことは、フジツボはまだまだ魅力のある商材・魚貝類といえそうだ。

 国産のフジツボには他にアカフジツボ、オオアカフジツボ、クロフジツボ、オオイワフジツボ(?)が食用となる。
 クロフジツボは伊豆半島などで昔から食用とされていたもの。
 ただし非常にローカルな食材だし、岩に強固に張り付くという習性から、採取はなかなか困難を極める。
 オオイワフジツボは広島県倉橋島の日美丸さんに送って頂いたものを、ボクなりに同定したものだが、これは保留にしておきたい。
 アカフジツボ、オオアカフジツボはよくブイや発泡の浮きに付着している、そのなのとおり赤いフジツボのこと。
 とても味のいいフジツボなので、今、養殖などが試みられている。

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 このアカフジツボを築地場内で発見した。
 トレイ1ぱい(約500グラム)1000円だった。
 『一吉』という仲買で産地ははっきりしない。
 「たぶん北海道でしょう。大都(魚類)で仕入れたんですけど」ということ。
 それで大都魚類に問い合わせたのだけど、どうしても産地がわからなかった。
 ちなみに現在、アカフジツボの養殖を行っているのは宮城県であるようだ。
(参考/『フジツボ類の最新学』日本付着生物学会 恒星社厚生閣)

 持ち帰って、『フジツボ類の最新学』の記述を参考に同定してみる。
 周殻(フジツボの富士の山状の殻)と背板、楯板を見る限り、アカフジツボである可能性が非常に高い。
 いくつか殻の白いものが混ざっているのも決め手になりそうだ。

 その昔、磯釣り(防波堤釣り)をやっていたとき、ときどき野宿に近いことをやる。
 当然簡単な料理を作るのだが、もっとも基本となるのがみそ汁なのだ。
 いろんなものをみそ汁の具に使い、ボクがその美味の王様に違いないと考えたのがアカフジツボ(オオアカフジツボかも)である。
 すばらしい出しが出るし、殻を割りながら食らう中身もいい味なのだ。

 その原始的な野外での食事とはうって変わって、家庭では蓋つき手つき鍋で酒蒸しにする。
 少々、水を加えて、蒸気を鍋にこもらせる。
 できるだけ早く、火を通していく。
 まあ、酒蒸しなんて簡単至極な料理で、ささーっと五分もかからない。

 富士山の噴火口から、楊枝を使って身をせせりだし、せせりだして食べるのだけど、クチバシがザリっとつぶれて、その根元の身らしきものが濃厚な旨味を綿ボコのように保有している。
 綿ボコだけど、やはり身だろうね。
 間違いなく、腹にたまらない綿ボコを楽しんだら、噴火口にたまった汁を飲み。
 ときどき蒸して出た、汁をスプーンで飲む。
 濃厚で、塩味をつけていないのに塩辛い汁は、フジツボの生体からでた旨味の全部に思える。

 残念ながらフジツボの酒蒸しは酒の肴にはなりはしない。
 合いの手に酒を飲むのがわずらわしくていけない。
 純粋に純粋にフジツボを味わう料理だ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、アカフジツボへ
http://www.zukan-bouz.com/koukakurui/fujitubo/akafujitubo.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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オーブントースターなどで3分前後焼いて食べる

 今年のシーフードショーはとても楽しかった。
 いろいろ出合いもあったし、発見もあった。
 なかでももっとも「美味な出合い」が毎味水産の海老せんべいなのだ。
「海老せんべい」とあるけど、それはエビそのもので、「せんべい」というより「焼きえび」とした方が正確だろう。
 クルマエビ科のバナメイを乾燥して焼いている。
 そこに三河一色ならではの「海老せんべい」の技法が生きている。

 この加工品の困ることは食べ始めると切りがないこと。
 食べても食べてももの足りない。
 一般に言われる「海老せんべい」と違って、ひとつが一匹のエビなのであるから、その見た目の豪華絢爛。
 なんだか食べていて王様気分になれる。

 毎味水産水産は三河三大エビ問屋のひとつとされる。
 エビの世界では有名すぎる会社なのだ。
 そこで作り出されるエビ商品、三河産水産物の加工品に注目していきたい。
 
毎味水産
http://kotomi-suisan.jp/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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