漁師料理・郷土料理: 2006年9月アーカイブ

 八王子の老舗魚屋「天野」さんに戦後すぐ店で売られていた魚貝類のことを聞いた。
「昔は品揃えは少なかったな。干物やのり。鮮魚はアジにスルメイカ、マカジキもあったかな。でもぜったいになくてはならないのはスルメイカとくさや。これがないと機屋(織物の工場)から文句が来たよ」
 織物の町、八王子ならではの話であるが、それほど多摩地区ではスルメイカはなくてはならない食材であったのだ。このスルメというのは大正、明治、江戸時代には乾物の「鯣」であったかも知れないが、戦後からは間違いなく鮮魚としてのスルメイカだった。これは戦後、貨車で魚が八王子駅に運ばれてきて、駅そのものが市場だったときを知る老人に聞いている。
 そんな東京都の山間部や多摩地区、日野八王子での夏祭り、秋祭りに欠かせないのがスルメイカとジャガイモなどの煮染め。
 秋山村生まれの八王子総合卸売協同組合「やまぎし」のよしさんなど、子供の頃は祭にこれが食べられるのが楽しみだったという。それが一般家庭の日常に取り入れても、とても簡単な料理で、しかも手間いらずなのだ。
 今回のものはゴボウ、ニンジン、シメジなどを加えたがジャガイモとスルメイカだけでも一向にかまわない。砂糖、醤油、少量の酒、水を煮立たせてスルメイカのげそやエンペラを切り込み、根菜類を入れて一気にたきあげるだけ。スルメイカからはビックリするほど多量の旨味成分が染み出してくる。ここに昆布やかつお節は無用の長物である。そして出来上がり。見た目は悪いがまことにうまい過ぎる惣菜となる。

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市場魚貝類図鑑のスルメイカへ
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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