漁師料理・郷土料理: 2008年6月アーカイブ

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 どこを探しても出てこない。広島県の食に関する本。
『聞き書き 岡山の食事』はあるのに広島県はどこに行ったのだろう。
 広島県の郷土料理で煮魚を焼くというのを、調べたいと思っているのだ。

 料理名は「はぶて焼き」。
 これを初めて食べたのが、今から30年以上も昔のこと。
 その頃住んでいた小岩のアパートに友達が、なんと煮魚を持って現れた。
「実家から送ってきたんだよ、魚焼き(器)あるか」
 なんといきなり、その丸のまま煮つけた魚を焼き始めたのだ。
 彼の実家というのが広島県。
 この広島県の郷土料理の名が「はぶて焼き」というのはNHKのテレビ番組で後日知ったこと。
 ちなみに当日焼いた魚は無残にも魚焼き器にへばりついて、ぼろぼろになってしまった。
 でもこれがとてもうまかったのだ。
 魚は広島県での「めばる」、すなわちカサゴであったはず。
 以来ボクにとって「はぶて焼き」は定番料理のひとつになっている。
 ボクの工夫は、金ぐしに刺して焼くようにしたこと。
 またコツは煮つけた魚をひと晩寝かして、身を固くしめることだ。

 今回の「はぶて焼き」の材料はキュウセン。ここ連日入荷してきている。
 まずは煮つけで楽しむ。
 キュウセンの身は柔らかいので、魚のタンパク質を固める作用がある味醂を多く使う。
 水洗いしたキュウセンを湯引きして、味醂(みりん)、酒、醤油を煮立たせたところに静かに入れて、後は一気に仕上げていく。
 キュウセンは関東でこそ省みられない雑魚だけど瀬戸内海ではれっきとした食用魚。
 値段も決して安くないと言う。
 これをひとばん寝かせると煮汁は煮こごり、身が硬く締まる。
 金ぐしに刺したら、表面を焦がすように焼き上げる。
 この「はぶて焼き」は煮魚のうまさと、焼き魚の味わい香ばしさを足し算した料理ではない。
 味はあくまでも煮魚であって、そこに香ばしさが加わったものと考えて欲しい。
 これは美味とも「うまい」とも違う、まことに心和む味わいなのである。
 合わせる酒は出来うる限り安酒でよい。

 語源は、その昔、魚がとれたら大量に一度期にまとめて煮てしまっていたのだろう。
 こうすると保存がきく。
 これを食べるたびに焼くのだ。
 保存して置いたものを、ただ焼くだけでいい。
 これが「手間を省く焼きもの」となって「省手焼き(はぶてやき)」になったのではないだろうか?
 さて、我が家の広島県に関する文献が一向に見つからない。
「責任者出てこい。どうして必要なときに必要なものが出てこないんじゃ。バカもん」
 人生行路の声が聞こえるようだ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、キュウセンへ
http://www.zukan-bouz.com/bera/bera/kyusen.html


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http://www.zukan-bouz.com/

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