漁師料理・郷土料理: 2007年5月アーカイブ

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「ご飯があったら最高ですね」
 これはつい口に出てしまったのであって、「ご飯食べたいな」とお願いしたわけじゃない。でも諸岡さんの奥さんが奥に消えて、それほど経ったわけでもなく、お盆にのせられてきたのがこれなのだ。この瞬間のスーパーうれしい気持ちをなんと表現すればいいのか? わからないんだよね。言葉が出てこない。

 ここにあるものは総て地元でとれたものばかり、不必要かとは思うがひとつひとつ解説する。
 まずはお盆の上の列、左から。
1/エシャロット。これはらっきょうの間引き、もしくは若いものである。これはもともと農家などで食べられていたのが全国的に流通するようになったもの。目新しいものだからフランス語の「エシャロット(半結球ネギ)」の文字を当てたようだ。疲れているときには、アリインというユリ科植物に含まれる成分がよくきくのだ。
2/若アユの唐揚げ、お盆の右上の塩コショウをつけて食べる。まだアユ独特の風味はほとんどないが、香ばしくてうまい。
3/テナガエビ、スジエビの佃煮。これはエビの風味が生きていて美味。ご飯と食べると、ご飯の軟らかさと、エビの香ばしさが相まって何とも言えず豊かな気分になる。
4/冬にとれるシラウオの釜揚げ。松田さん、諸岡さんともにシラウオの釜揚げは「ほんまにうまいな」と力説するもの。少々塩が強めであるが、だからこそご飯に合う。
中列小皿左から
5/フキの佃煮。これはやや醤油がちているがそれほど塩辛くなく、フキそのものの甘味が感じられる。
6/フキの煮物。これはあっさりと炊いた物。フキの香りが強い。
下の列左から
7/貸し出している田で作られた米を炊いたご飯。茨城の水郷地帯、利根川周辺は関東屈指の米どころなのだ。
8/みそ汁。味噌は近所からいただいたものだという。豆腐、インゲン、キャベツ。思ったよりも味噌の塩分濃度が低く、香りがいい。
9/ごろ(アシシロハゼなどの)の佃煮。甘さが程良く、ややほろほろとしてうまい。これもご飯に山盛りにのせて食べたい。

 これ全部をご飯をお代わりして一気に食べてしまった。実を言うと、もういっぱいご飯が欲しいな、と思ったが恥ずかしいのでよした。今考えるともういっぱい食べれば、もっと幸せだったかも知れない。

 しかし川岸屋の朝ご飯はうまいのである。こんなことを思っていたら、
「昔ね NHKが取材に来たのよ」
 と奥さんが笑ってる。そうか古渡あたりでは評判の料理上手であったのだ。

 またこんど来たときにも、朝ご飯食べられるかな?
 
川岸屋 茨城県稲敷市古渡103
参考文献/『平成調査 新・霞ヶ浦の魚たち』霞ヶ浦市民協会
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 原釜での長い長い競りもやっと終わろうとしていたとき。水を流しながら「どんこ(エゾイソアイナメ)」を卸している女性を見つける。
「これどんな料理になるんでしょう?」
「そぼろだね」
 見ていると肝は捨てているように思える。
「そぼろってね。鍋で炒って、味噌と砂糖を卵を入れるんだ」

 原釜の人たちは皆早口の上、なかなか方言が聞き取れない。でも要するに、どんこを卸して、細かくする。これを鍋で炒って味噌と砂糖と卵を加えて、そぼろ状に仕上げるもの。
「どうして肝を捨ててるんですか」
「これ入れてもいいんだけど生臭いでしょう」
 とすると本来は肝を入れるんだろうか? 休憩所でも聞いてみると
「やっぱり肝は入れるね。あとネギだろ、唐辛子ね」
 どうやら肝を使う方が本来の形であるようだ。これでご飯のおかずにするそうである。
「子供の頃はよく食べたね」

 それで『八巻水産』でどんこを分けてもらい、実際に作ってみる。

 どんこは身だけにし、スピードカッターですり身にする。これに肝も加えてテフロンフライパンで炒りながら酒、砂糖、味噌を加えて軽くコンガリするくらいに炒る。最後に七味唐辛子を加えて出来上がり。ネギを入れるといいと教わったのだが、これは後から加えてもいいし、まずはもっとも単純な“そぼろ”にしてみる。今回は最後に溶き卵を入れたのだが、最初から調味料をすり身に混ぜ込んだ方がよかったように思える。

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卸したどんこの身と肝

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これを炒りながら調味料を加える

 甘味は抑えてあるのだが、どんこの肝や身のあたりから甘味が加わって優しい、子供にも受けのいい味わいとなった。七味唐辛子を入れたのは大正解。このユズや山椒の香りで、魚の生臭みはまったく消えてしまっている。子供達がとくに気に入ったのが焦げたところ。この香ばしさと適度な甘味、旨味でご飯とともに“そぼろ”もどんどんなくなっていく。

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出来上がり

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非常にご飯にあう

市場魚貝類図鑑のエゾイソアイナメ
http://www.zukan-bouz.com/taraasiro/tigodara/ezoisoainame.html
●原釜の底引き船「恵永丸」ほかに教えていただく


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