市場図鑑・市場案内: 2007年5月アーカイブ

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 八王子綜合卸売センター『市場寿司 たか』で寿司図鑑用の撮影をしていたら、ケータイがなる。ヘンリーブロスの江嶋力さんから。「突然ですけど原釜へいきませんか」関西訛りの人なっこい声が聞こえる。やらなければならないことはいっぱいある。でも原釜は魅力的だ。

 2日の11時過ぎ、もう各駅停車になってしまっている中央線東京行きに乗り込む。乗客は思ったよりも多く、酔っぱらが多くやたらにうるさい。有楽町着が0時半である。ビックカメラの前まで江嶋さんに迎えに来てもらって、そのBMWで福島を目差す。江嶋さんは今度都内に私設市場を作ろうとしている。主に魚貝類を扱い、そこでは手軽に産地直送の魚を味わえるそうだ。これは楽しみである。

 首都高はさすがに渋滞していたが常磐自動車道はいつものようにガラガラ。いわき中央を超えると1車線となり、ここで注意すべきはタヌキの飛び出しである。この道、深夜にはタヌキの屍がるいるいと転がっている。

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 原釜に到着したのが5時前。押っ取り刀で底引き網の競り場に行くと、すでに原釜の魅力的な女達が選別にかかっている。
 いつものようにカレイ目のオンパレード。ヒラメ、「肉持ちがれい(ミギガレイ)」「あかじがれい(マガレイ)」、マコガレイ、イシガレイ、「なめた(ババガレイ)」、「黒柳(ヒレグロ)」、ヤナギムシガレイ、アカガレイ、数は少ないがホシガレイとマツカワガレイ、アブラガレイ。
 その横には「あまだこ(ヤナギダコ)」。イイダコ、ミズダコは少ない。原釜はタコの水揚げ日本一。
 いつもは彩りを欠く競り場が赤く染まっている。その赤い色合いのほとんどがキチジ。これほど多い「きんき」を見るのは原釜では初めて。

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 その赤い色合いから、まずキチジ以外の少数のカサゴ目を分けている。そこにはウスメバル、ウケグチメバル、珍しいヤナギメバル、アコウ、ユメカサゴがある。黒いのはタヌキメバル、メバル。

 今日は休みを控えての全船入港。細長く巨大な競り場は徐々に魚を入れたカゴで埋まっている。その下手、岸壁には第二陣の競りを待ち、選別の順番を待つ青いバケツが、これも競り場の屋根をはみ出して待ちかまえている。その上、沖から底引き船が帰港する。港は騒然としている。
 この喧噪はくの字形に曲がった先の刺し網でも見られる。ここで揚がるものも魚種は変わらないが活けものが多いのが特徴。

 意外に膨大なのがマナマコである。水揚げされたときは、まるで泥のようなのだが、これから徐々にぬめりや汚れを取り去っていく。その手間たるや大変なもの。ここでも浜の女達の活躍が光る。

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マナマコはとにかくぬめりを取り去る。これが大変なのだ

 カレイの白い腹が床に並び、その先にはニシンがこれも大量にある。このニシンは仙台湾あたりの群だろうか。

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 マダラ、マダラの子供、スケトウダラ、ホッケも混じる。「あんこう(キアンコウ)」、「どんこ(エゾイソアイナメ)」、スズキ、マアジ、マサバ、「手切り(てっきり ながづか)」。

太ったサクラマスを見て「やせないとダメだな」と思う。

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 大きなバケツに、そしてカゴに無数の「あぶらざめ(アブラツノザメ)」。

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 見慣れぬサメが2本あって、フトツノザメにシロカグラではないかと思われる。しかしシロカグラが福島にもいるのだろうか?

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これシロカグラであると思うのだが?

 マダイ、チダイ、カガミダイ、コモンカスベにアカエイ。
 ヤリイカ、スルメイカ。「まきつぶ(シライトマキバイ)」、ネジボラ、ネジヌキバイ、ナガバイ、「まつぶ(モスソガイ)」、ホタテにバカガイ、ナガウバガイ。
 エビは「ぶどうえび(ヒゴロモエビ)」、ボタンエビ、テラオボタン、クルマエビ、サルエビ。テラオボタンがいちばん多い。

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テラオボタン。現地では「白ぼたん」とも言うが、ほとんどの人がボタンエビとの区別がつかない。一見ボタンエビに見えるが背中に大きな丸い紋がある

ケガニ多数、そこにズワイガニ、ベニズワイ、ガザミ、ヒラツメガニも見受ける。ケガニは総て持ち重りのする見事なもの。

 睡眠不足のせいか、どこかで一休みしたくなる。ふらふらと事務所を目差していると元気な浜のお姉さんに声をかけられて記念撮影をしてあげる。まったく福島の女性は明るく、美しく、そして親切なのだ。

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 6時過ぎになって『八巻水産(ヤ印)』の八巻社長が競り場に見える。江嶋さんが魚を注文するのにボクもひとつだけ参加して天然ホタテを買う。『八巻水産』ではお土産までいただいて、時計は既に正午過ぎとなっている。

 帰途の常磐道は渋滞ゼロ。首都高の渋滞も平日並で東京着は6時過ぎ。ボクは疲労困憊で東京駅始発中央線で帰宅する。疲れて疲れたとボクが言うのはおこがましいものだ。なにしろ不眠不休で原釜への往復を運転した江嶋力さんは、まだこれからたっぷりと仕事が残っているという。がんばれ、若き社長よ。

中目黒の『ぼうずこんにゃく』では原釜の魚貝類が味わえる(ちなみにボクの店ではありません)
http://www.k-bouzu.jp/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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