市場図鑑・市場案内: 2006年6月アーカイブ

 今回の原釜へは日本全国から魚貝類を取り寄せて、新しい流通の世界を造り出そうとするヘンリーブロスの江嶋さん、石川さんにのこのこついていく形である。すなわちお二人の産地を見て回る旅についていったのだ。ヘンリーブロスの起点のひとつ、銀座「黒尊」を出発したのが深夜0時過ぎ。さすがに銀座といえどもこの時刻は華やぎが冷めて、そこに雨が降りしく。

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底引き網の船は早朝5時半、すでに入船していた

 常磐自動車道、国道8号線と遠路原釜に到着したのが5時半のこと。すでに底引きの大型の船が着岸していて、元気いっぱいの原釜女たちが魚貝類を選別している。そのカゴには膨大な甘だこ(ヤナギダコ)、ヤナギムシガレイ、マガレイ、マコガレイ、ヒラメ、ウスメバル、アイナメ、カナガシラ、ホウボウ、マアナゴ。場内のあちらこちらにどろっと広がって置かれているのがマナマコ。なんどもなんどもぬめりをとる作業は繰り返されても、まだドロリとしている。これはどうも干しナマコになるのではないか? もしくは切りナマコだろうか?

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 甘だこはザルカゴに入れられ足でなんども踏みつけられ海水でぬめりを取る。かなりハードな作業を美しい女性がもくもくとこなしている。来るたびに思うのだが福島の港で見かける女性はみな魅力的。

 このなかにマダラ、ケムシカジカ、とどき(サブロウ)、マフグ、ヌマガレイ、マツカワガレイ、ホシガレイ。大きなアカムツがあるかと思えば、ぽつんとアマダイ、
 原釜では巻き貝は総てが「つぶ」となるのだが、この日見られたのはヒメエゾボラ、チジミエゾボラ、ヒメエゾボラモドキ、シライトマキバイ、ナガバイ、ネジボラ。いつもたくさん落ちているチシマガイが今日は1個だけ、ホタテガイが少し。スルメイカはやはり少なく、形のいいのはすでに発砲に並べられている。
 原釜の底引きも6月一杯で2ヶ月の禁漁に入る。言うなれば最盛期ではないのだが、いちばんたくさんの底引き船が入船するのが金曜日である。7時過ぎにはだだっ広い底引きの競り場が隙間なく埋められてしまっている。
 その端っこに、ほっき(ウバガイ)の水揚げが始める。ほっきの船がもどるたびに大急ぎで貝殻にキズのあるもの壊れているのを選別される。そして壊れているのはこれまた大急ぎで貝殻を剥かれる。この作業はなんだか見ていて楽しそうだ。老いも若きも、男女関係なく黙々と貝殻を剥いているのだが、そこには穏やかな笑顔が浮かんでいる。今日は豊漁なのだろうか?

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 L字形の縦長の広い部分に当たるのが底引き網の選別競り場だとしたら、底辺のややこぢんまりした場所に入ってくるのが刺し網の小型船。こちらには活けのマコガレイ、マサバ、いなだ(ブリの幼魚)、ヒラマサ、ガンギエイの仲間、マガレイ。

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 底引きの魚の競りが始まっている。競りは並んだカゴに競り人が番号つきの紙に値段を書いて入れていくもの。魚貝類を整理、並べる喧噪から、競りが始めると底だけに静寂な時間が訪れる。競りの結果も入れた値の紙をたんたんとひっくり返して終了となる。競りが終わると、すぐに片づけられ、また後から入港してきた船が魚貝類を並べていく。

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 そのなかで競り場の端っこに集められてきたのがアブラツノザメ。これを剥きざめにして出荷するのだ。

 漁港には11時前まで外は大雨。慌ただしく南下する国道は深い水たまりが出来てしまって、危険極まりない。また睡眠不足で疲れはピークとなっている。楢葉町まで来て、「道の駅ならは」の温泉につかって一休み。銀座まで帰り着いたのが5時前である。疲労困憊で有楽町に向かう途中、ちょいとガード下でいっぱい。
 帰宅は7時過ぎとなる。疲れたぞ!


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 東京都の北、隅田川をわたって千住にある足立市場を見てきた。残念なことにミニ築地でしかなかったものの、少なからず収穫もあり、という不得要領な市場の旅となる。
 さて、東京都中央卸売市場足立市場は日光街道千住大橋を北千住に渡ってすぐ、隅田川に面してある。電車を利用するなら、京成千住大橋駅から日光街道を南に下ることしばし、左手がこぢんまりした入り口となっている。正門前にたどり着いたのが7時過ぎである。この時間なら仲卸が品物を並べ終わっている。

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 千住に市場が出来たのは古く徳川以前の1500年代の半ば。主に近郊の野菜、また川魚などを取り扱っていた。そして江戸期、明治、大正、昭和とやっちゃ場(青果市場)として名をはせて、日本橋にあった魚市場から関東大震災時に分派してきた東京北魚市場と合わさって1979年まで賑わいのある市場であった。これが、やっちゃ場が同じく足立区入谷(決して江東区ではない)に移転してからはやや低迷しているのであるという。

 正門を過ぎてすぐに食堂が並ぶ小さな棟がある。そこを通り過ぎると右手に八百屋、また加工品を売る小さな店舗があり、先に進むと金比羅宮がある。その右手に建物があって、入ってみると妻野菜や昆布、乾物などの店がある。その建物を通り過ぎて正面が水産仲卸の棟である。店舗数は69、そこにあったのは築地のミニ版とでもいったものである。

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 見回して足立市場ならではといった特色のある店舗は見あたらない。箱単位で取引をする店、特種とこの箱取引を兼ねる店などどの店も築地にあるものと寸分変わらない。また塩干が場内の端にあるのも築地と同じだ。ただし八王子などと比べると遙かに上物が多い。また値段も築地よりも一段安いように感じる。結局2回ほど回って、残念なことにコレといったものに出合えなかった。やはり、ここにあるのはミニ築地でしかない。
 仕方なく、優しく声をかけてくれたマグロ屋の『樋倉』さんに「足立市場らしい店はありませんか? 例えば川魚問屋さんとか」と聞くと。旧日光街道沿いに2軒あるという。場内で探すのを諦めて、旧日光街道を北に歩く。この狭苦しい道にクルマが連なり、そのクルマを縫うように、川魚問屋を探すがなかなか見つからない。歩く内に見つけたのが「青物問屋」の古いカンバン。これがあちこちに散見する。これはこの日光街道沿いにやっちゃ場があり、青物問屋が軒を並べていたよすがとして飾ってあるのだろうか? それとも今でも青物問屋なのか?
 千住仲町に入ってやっと見つけたのが『鮒輿』。中を撮影させてもらって、創業のことを聞くと、なんと現当主が16代目、創業380年になるという。それなら芭蕉が奥の細道で千住の宿に来たときにも『鮒輿』はあったということだ。

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 もう一度だけ足立市場にもどって場内をざっと見て回る。すると茶屋が数列並ぶなかに面白い建物を見つけた。これは行商の人たちが下ごしらえをするところ。冷蔵ケースを乗せたトラック、それにバイクで引くリヤカーが建物を囲む。リヤカーには氷のケースがはめ込まれていて、老人がパックつめした魚を並べている。

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「これはなんというものですか?」
 バカな質問だが、こう言うしかないのだ。
「『りんたく』っていうね」
 屋号を聞くと『魚敏』であるという。
「これはもう許可が下りないんだよ。このバイクで引くのはオレの代までだね」

 この行商の茶屋で聞いたのはやっちゃ場が一緒にあったときの賑やかだったこと。足立市場の旅の終わりは、なんだか寂しいものとなった。


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 市場通いは毎日のこと。毎朝、8時過ぎに八王子魚市場、八王子綜合卸売センター、八王子総合卸売協同組合と全部回るので顔なじみも半端な人数じゃない。そして市場を一通り見て回って最後に『市場寿司 たか』で面白いネタを撮影するのが日課。そこに市場仲間が参加するのも、また楽しくて、そしてその意見も貴重なものだ。
 今日、たかさんに握ってもらったのは、高知県浦戸湾のヤイトハタ、気仙沼のmakoさんから送ってもらったオオカミウオの生とさらっと煮たもの。そして今日市場で見つけた壱岐のハチビキ。これを、たかさんと、ああでもない、こうでもないと静かに話していると、ちん入してきたのが市場の面々。せっかくmakoさんがくれた秘密兵器「もうかの星」をなんとか握ってみようと相談していたのに仕方のないヤツラよ(結局「もうかの星」は握りにできなかった)。
「うまそうなもの食ってるじゃないか」
 という獰猛な目つきにたかさんがどんどん握って行く。

「高知だっけ、ヤイトハタうまいぞ」
「オオカミウオってのは名前の割に味がないな」
「ハチビキ、キロで600円だっけ。オレすぐ買いにいくわ」
「お〜い、酒はないか」
「ないない」

 店長を捜して、また従業員を捜してどんどん『市場寿司 たか』に集まって来る。こんな大勢での寿司図鑑撮影は初めてだね。
 まったく、市場の困った連中だが、みな人なつっこくて優しいんだよ。

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気仙沼のmakoさんのサイトへ
http://www7a.biglobe.ne.jp/~Fish-Fish/
土佐の廣丸へ
http://www.zukan-bouz.com/zkan/hiromaru/index.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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