市場図鑑・市場案内: 2006年9月アーカイブ

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 深夜0時過ぎの東京駅、ここから沼津に向かう。今回はヘンリーブロスの方達と一緒。彼らはまったく新しい形での水産物流通を考えている。ボクはそれをお手伝い。深夜の東名はクルマも少なく、2時過ぎには沼津に到着。驚いたことに彼ら行きつけの「ホルモン番長」で深夜の食事。この店、まことに美味なのでビックリ。またヘンリーブロスの面々の若さにも圧倒される。

 深夜3時過ぎに沼津魚市場に到着。今日は志下トロ(沼津市志下のトロール船)は出船せず、戸田トロを待つ。黒板を見ると定置も巻き網も出ていない。その上、やってきた戸田トロの水揚げも非常に少ない。ここで出来るだけ、若いヘンリーブロスの社員に魚貝類の種名・方言を教えていく。午後5時になって八王子の居酒屋「メリメロ」の安藤君も到着。全員集合したかたちでまた若い方達に魚貝類の知識と値頃感を教えていくが、これがなかなか難しいのだ。
 そこに沼津魚の達人・菊地利雄さんが来て、水揚げの状況や今日の値段の行方を知らせてくれる。

 底引きの水揚げ、「本えび(ヒゲナガエビ)」が多く、アカザエビ、サガミアカザエビ、「赤えび(ツノナガチヒロエビ)」あとはユメカサゴ、キアンコウ、「目光(アオメエソ)」など。
 赤沢(伊東市)の定置があがる場所に行くとやはり今日は水揚げがないことがわかる。「頭屋分店」さんが寂しそうだ。その隣に狩野川の「づかに(モクズガニ)」。内子の状況はいかがだろう。また伊豆七島からだろうかテングダイが2匹、沼津周辺の港からアカイシガニ、イラ、カマスザワラ、ウルメイワシ、モロ、ヘダイなどが少ないながら並ぶ。そして陸送の中にイルカを発見する。

 7時過ぎに競りが終了する。安藤君の仕入れは佐政水産の青木修一さんにお願いする。青木さんは問屋の社員と言うよりも魚類学者と言った方がいいかも知れない。たぶん沼津の魚類を標準和名・方言ともども知るのは彼以外にはいない。
 競りが終わると菊地利雄さんの悪戦苦闘が始まる。競り落とした魚貝類を梱包し、また発送する。しかもボクがいろいろ質問するので余計に疲れるだろうな。そろそろ還暦も近いのに体力的に大丈夫かな?

 やっと一息ついて、11時前まで休息所で仮眠。
 早いお昼ご飯を魚市場近くの「双葉寿司」でとる。そのあまりのうまさに声も出ない。

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 食後、菊地さんに「お世話になりました」と言って東名にのる。結局、帰宅は3時過ぎとなる。帰宅すると同時にシャワーを浴びて2時間ダウン。しかし疲れ果ててしまったのだ。


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 市場の寿司屋である『市場寿司 たか』のお客は当たり前だが市場で働いている人たちが多い。彼らはみな食品を扱う仕事をしているだけに、なかなか味にはうるさいし、また毎日のように『市場寿司 たか』で食べているとさすがに「飽き」が出てくる。そんなときに彼らの我が儘をいちいち聞いている内に寿司屋としてはいささか変化球的な代物が作り出されてくる。
「あのさ、巻物が食いたいんだけど、太巻きでさ、卵もマグロもキュウリも食べたい」
 こんなことを言ってくるし、
「オレさ、歯が悪いから乗せるのを全部細かく切って、そこに玉子焼きをいっぱい乗せてよ」
 こんな我が儘というか、やんちゃな注文をしてくる肉屋もいるのだ。
「今日は熱があってさっぱりしていて、そしてパワーが出るヤツ」
 これは無理だろうというのもある。

 そんななかで、たかさんが風邪をひいた市場人に隠れメニューとして作っているのがこれなのだ。
「これって栄養的にもいいんじゃないかな。納豆が植物質でねぎとろは脂があってイカにはタウリンがあるだろ。絶対に精がつくよな」
 まあ、本当に風邪に効くかどうかわからないのだが、この「ねぎとろいか納豆丼」がうまいのは間違いない。ボクも我が儘なのでここに刻んだたくわんを散らしてもらう。とろと納豆のそれこそトロトロ感にイカが意外なほどに味わいを深く複雑にして、そこにネギのアクセント。これじゃトロトロでうますぎてやりすぎじゃないの? ないの? と思ったところにたくわんの爽やかな甘味が加わってくる。まあ、これだけうまけりゃ風邪も治るだろうな? という味わいになる。
 これは隠れメニューなので値段がない。それで市場人が勝手に名物の「豪海投げ込み丼」と同額の600円を置いていくのだ。当然、ボクはもっと身内だから500円にしてもらっている。

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「市場寿司 たか」のことは
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八王子の市場のことは
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 東名高速が2つに路線が分かれたときに、遙か西の山が閃光をはなった。雷だろうか? と思う間もなく雨粒が落ちてきたが数滴。それが御殿場を過ぎる頃には土砂降りとなる。雷の閃光が山並みを浮き上がらせる。時刻は2時半。このままでは沼津港に早く着きすぎるので裾野インターで下りる。裾野インターから沼津までは長い長い下り道。ほとんど信号にも止められずに、沼津市街に入り、漁港についたのが3時ちょうどである。

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 かれこれ4ヶ月ぶりの沼津魚市場だ。いつもより早く10日に解禁したトロールは今日が初競り。静浦の大成丸、志下の大共丸がすでに魚の選別を始めているが、漁獲物の漁は解禁初日なので半端な量ではない。いつもなら知っている顔に挨拶をして回るのだが、とても声をかけられない。そしてすぐに戸田の慈愛丸、清正丸、光徳丸、日ノ出丸などもきてトロールの競り場は埋め尽くされていく。

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 今年初めての水揚げなのだが、どの船でも赤ものが多い。赤ものというの超高級魚のアカムツ、「かさご」と呼ばれるユメカサゴ、「赤かさご」のシロカサゴ、アカカサゴ、「あぶらごそ」のヒウチダイ、マルヒウチダイ、「ごそ」のハシキンメを言う。本日はとくにユメカサゴが山のようになっていて、これを大中小に分けるのが大変なのだ。また今では高級魚になったヒウチダイも今日はそれなりにとれている。またアカカサゴは少なく、シロカサゴばかりだ。

 タラバガニ科のエゾイバラガニ、「夫婦がに(みょうとがに)」イバラガニモドキ。クモガニ科の駿河湾名物タカアシガニも見られた。「夫婦がに」はとれる量が少なく、今日などは高値取引違いなしだ。コシオリエビの仲間でオオコシオリエビを「くもえび」というのだけれど、今日はなかなか高値であるという。
 トロールのエビは「手長えび」のアカザエビ、サガミアカザエビ、「本えび」ヒゲナガエビ、「しまえび」ヒカリチヒロエビ、「赤えび」ツノナガチヒロエビ、「甘えび」ジンケンエビ。今日は何と言っても「しまえび」ヒカリチヒロエビが他を圧倒しており、仲買さんも「しまえびは安いよ」と言う。また「本えび」がやや少な目。ボタンエビは今日はほとんどの船でまとまらなかったようだ。

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 軟体類ではチヒロダコ、スルメイカ。

 魚は見事なアラは1本だけ、ソコアマダイ、ソコアマダイモドキ、「目光」アオメエソ、トモメヒカリ、ニギス、カゴシマニギス、ヤナギムシガレイ、キアンコウ、チゴダラ、「あごなし」ギンメダイ、ギス、オオメハタ、ナガオオメ、マアナゴ、トウジン、テナガダラ、「ひげだら」ヨロイイタチウオ、クロムツ、オキトラギス、ツボダイ。

 トロール以外では珍しいヒオドシ、カサゴ、トゴットメバル、「ぼうちょうかさご」ウッカリカサゴ、「おにかさご」イズカサゴ、イトヨリ、マゴチ、イネゴチ、ワニゴチ、マダイ、スズキ、イサキ、マダイ、キダイ、タチウオ、アカカマス、シロギス、イヤゴハタ、マハタ、タカベ、「もろこ」クエ。

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 午前5時になると沼津の甲殻類などの研究家、飯塚栄一さんがきて一緒に見て回ったが、やはり今日は珍しいものはなく、ただただトロールの初競り見物に終わってしまう。
 また出来れば安値のヒカリチヒロエビを買って帰ろうと思っていたら大共丸さんが「しまえび」ヒカリチヒロエビ、売り物にならないベニガラエビをうんとこさ分けてくれた。まことに感謝。

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今回のラストショットは飯塚さんと、沼津魚の達人、仲買の「山丁」菊地利雄さん


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 毎週土曜日はうだつの上がらない肉屋とともに「薩摩しょうゆ漬け」を売り出すためにほとんど何も出来ない状態にある。しかし食べてこれほどうまいのにどうして売らないのだろう。残念で仕方ない。ちなみに売上は全部肉屋のもの。我が家にはいっさい利潤は来ない。
 さて早朝6時半。八王子魚市場マグロ部では大量のメバチマグロを水で戻している。これがなかなか難しいんだね。

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 鈴木さんのところには北海道十勝沿岸産のフジイロエゾボラ。広尾の「大樹 山口商店」からのもの。でもこのフジイロエゾボラにも疑問がどんどん湧いてくる。

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 惣菜には今年初めて「おでん」を見る。その脇にはおはぎがあって蒸し暑い中、ここだけ秋なんだな。

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 八王子綜合卸売センター、「総市」には宮城県女川からサンマ。

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 サンマが女川に来るということは、もっとも脂ののっている時期が来たということか

 八王子綜合卸売センター「高野水産」には和歌山県串本「出口水産」から大きなイトヒキアジ。

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 ここまで来て「高野水産」前の「平成食品」にこもって「薩摩しょうゆ漬け」を売り始める。ぜんぜん売れなかった。悲しいな!


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 巷に「貧乏暇無し」なんていう言葉があるが「我こそ、それだ」と痛感する日々である。悲しく、悲しく、悲しくてやりきれないのである。「胸にしみる空の輝き」と朝の雑木林を下りていく。向こうには高尾山、そして遠く冨士は「秋の気配」、「風立ちぬ」というのもそろそろかな。

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 バカな哀愁心は放っておいて、八王子魚市場場内に入ると鈴木さんがエゾボラモドキを剥いている。産地は噴火湾荷主は澤田水産。見ると老眼鏡の奥の目が真剣。鈴木さんが真剣な顔つきをしているとついついからかいたくなる。ちなみにエゾボラ属の刺身用つぶはこのように貝殻を活かして剥かなくてはいけない。

 鈴木さんのところには北海道日高産の白貝(サラガイ)、同じく北海道産青柳の剥いた物、ロシア産アカガイ。特種には北三陸産とある、なめた(ババガレイ)。なんだかババガレイが来ると秋だなと思う。

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北海道日高産の白貝(サラガイ)。値段も手頃でうまいのだ

 また鳥取県網代港からは大きなハタハタ。時期的にはかなり早い入荷だし、大きさ的にも特筆すべき。

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 その近海の前に惣菜や干物を売る場所があって「横山水産」の「キムチ味いか鉄板」というのがある。コレは間違いなくうまそうである。

「源七」ではあんちゃんがアカニシの蒸した身を切っていてこれから煮付けるのだという。「海老辰」には大間からの本鮪(クロマグロ)。あまりに高そうなので味見とはいかない。
 帰ってくると「源七」の若だんなも銚子からデカイ本鮪(クロマグロ)を持ってきている。でもまだ下ろしたばかり。早くさばけよ。

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 八王子綜合卸売センター「高野水産」にも魚は少ない。「東京かじの」の迷宮に入りたくなるがぐっと我慢。なすすべもなく帰宅。

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「東京かじの」の店長はまるで妖怪使いのように思える。この面白さをわかる方は食の達人である

 午後1時まで画像の整理とサイトの改訂。
 三鷹乗り換えのつもりで各駅停車の中央線に乗り込んで気がつくと阿佐ヶ谷、そのまま再度眠ってしまって気がついたらお茶の水なのだ。
 よしなしごとは7時過ぎまで。沼津の飯塚さんから魚が来ているので大急ぎで帰宅。帰宅後雑事多々。いつ眠りにつけることやら。


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