返信・ありがとう・独り言: 2008年4月アーカイブ

 どうやらボクの市場食堂の見識に誤解が生じているようなので、しっかりとした定義を書いておく。

 まず理想の市場飯とはなにか? というと2つある。
1 市場の労働はきつく腹がへるのでたっぷりして、盛りだくさんなもの。例えば、カツ丼あり、親子丼ありで、注文するとすぐに出てくる。別に市場になくたって魅力を感じる店。そしてできるだけ料理は手作りしていること。船橋の市場には、おいしいか、おいしくないかは別にして、こんなタイプの食堂が多い。
2 例えば魚市場なのだから、その日競りにかかった新鮮な魚を、日々使うこと。いろんな魚貝類を使いメニューを固定化しない。また出来るだけ手作りする。例えば築地にある『たけの』、『かとう』。

 すなわち市場にあって理想の食堂は「うまい店」であることは当たり前として、「市場に来る人は魚に詳しいのだから、いい魚を安く用意している店」。それに加えるに、「魚に飽きているだろうから丼物や定番もの、お総菜の充実している店」などがいい。
 そしていちばん嫌いであるのが、中途半端な店。奇をてらっているのか、背伸びをして市販のもので飾る、もしくは市販のものを“中心”に使って(市販の食材を使うことが悪いわけではない)、受けを狙う。
 また実際には市場を歩いていない店主の店。
 最後に勝手な思い込みかも知れないが、市場人に嫌われる市場の食堂はダメだな。
 実際に市場で働いている方はどうお考えなのだろうね。その内、出来るだけインタビューしてみたいと思う。


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 八王子魚市場『源七』の閉店は痛手だ。多摩地区はかつては山間部というか、海から遠く、水産物の文化を持たない。そこに千葉県)船橋を本拠地とする店があるだけで、どんなに八王子魚市場全体の価値を高めていたか計り知れない。市場というのは“食べ物”を売るだけではなく、食文化を与えて暮れる場所なのだ。

 どうして『源七』が閉店することになったかというと、市場の半分がパチンコ屋に成り下がってしまうからだ。例えば、東京都のカジノ建設を反対する愚かな人たちがいる。なぜ、この人達が愚かかというと、カジノは入場させるに制限を儲けることが可能だ。前科とか、自己破産とか、謝金の多い人とか、ある一定の制限で正しい博打場(へんな表現だが)たりうる。
 対するにパチンコ屋というのは悪質である。入場にまったく制限がなく、郊外にでも繁華街にだってニョキニョキ建ってしまう。博打を根絶することは難しいし、動物としての人間の本能から、なくしてはならないものだろう。でもパチンコ屋の多さには辟易する。しかも市場を狭めて、こんなものを作るなんて、ほんまにパチンコ屋憎むべし!

 さて、閑話休題。
 残念無念に思っていたら、ひとつだけ救いがあった。それは、あんちゃんが八王子魚市場に居残ってくれたことだ。
 季節季節のアカガイのこと、こはだ・なかずみ(共にコノシロ)のこと。これを聞ける相手がいてくれるうれしさは掛け買いのないもの。あんちゃんの仕込んだ「こはだ」が買えるのもうれしいねー。
 さて、明日もあんちゃんと立ち話しに、市場に行くのだ。

八王子の市場に関しては
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 金曜日、築地場内を歩いていたら、いつも立ち寄るイリヤマ斎藤に見たことのないオニカサゴがいるのだ。
 九州産だというそのオニカサゴの大きさがまず大問題。重さにして1キロ以上、体長が35センチもある。こんなオニカサゴは見たことがない。
 値段はと聞くと、「大きいからね、2000円(キロ当たり)はするね」。ここで考えに考えて買い求める。これくらいのオキカサゴならまずいわけがない、帰宅して検索しないと種は判明しないのだからと、「えいや!」と2415円を支払う。
 我が家は子だくさんで貧乏なので、これは痛い出費だ。

 そして持ち帰って、なんど検索図鑑を見ても検索できない。「おいおいどうすればいいんだ」とオニカサゴでも南方系のウルマカサゴを見た経験のある若潮さんにケータイをいれる。
 それでカサゴの専門家、木村浩之先生に問い合わせたら、「その魚寄贈してください」との返事。

 夕食の品数が半分になり、姫は今日は魚が少ないね、と喜んだ。

 これは災難だろうか? それともついているのか?
 とにかく、この魚の正体、なんだろうね?


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静岡県沼津市沼津魚市場にて。千葉県銚子産

「あら(クエ)」の本場、福岡県福岡市の業者が「クエと偽ってアブラボウズを販売」したという事件で我がサイトにも問い合わせが多々ある。
 長年、魚貝類を見てくると、いろんな形でアブラボウズが活躍しているのに出くわす。例えば魚屋の冷凍庫にアブラボウズの頭がごろんと転がっていたり、半身がマグロのように切断されていたり。これをどうやって売るのだろうか? いろいろ想像を巡らせると、たぶんお弁当屋だとか、切り身での販売に回るのだろう。
 知り合いの業者から、このアブラボウズのコロを格安で買い求めたことがある。たしかキロあたり800円ほど。これが5キロほどであり、すべて切り身にしてそのまま保存してもらい、ときどきとりだしては家庭内食品偽装をやらかした。

「いいメダイがあってね。今日は照焼にするから」
 なんてわざとらしいことを言って、食卓に出す。
 大振りの立派な切り身は
「立派なメダイね」
 なんて反応が返ってくる。
「脂がのって素晴らしいわ」
 こうなると家庭内食品偽装もしめたものだ。我が家ではアブラボウズだろうがメダイだろうがうまければいい、と言うくらいの食の教育(食育って言葉大嫌いなんだけど)をしているつもりなので、これは家族がメダイといっても違和感を憶えないかどうかの実験のつもり。

 ちなみにアブラボウズを販売禁止にしている市場があるが、個人的には反対する。アブラボウズの油分はバラムツなどとは違っている。バラムツのはワックスエステルでちょっと食べ過ぎると下痢や皮膚への障害を起こすが、アブラボウズの油は普通の魚にあるものと同じで「食べる量に注意すると害はない」。ようするにバラムツで中毒するのは「事件」だが、アブラボウズの場合は無知と不注意、もしくは今回のように詐欺行為による「事故」でしかない。
 例えば市場で「アブラボウズは油が多いので食べ過ぎると下痢しますよ」という注意して売れば問題はない。後は買った人の自己責任だ。このアブラボウズを販売禁止にしなけらばならないのも個人営業、対面販売の魚屋・商店が減少したことによる。「みんなスーパーばかりで買い物しないで魚屋や個人商店を大切にしようよ」。
 この国は不思議な国で“好きでメタボになっている人間”に「メタボを解消しないと逮捕するぞ」なんてやるし、シートベルトをつけないのは運転している人が危険なもので、誰にも害のあるものでもないのに、罰金をとる。そのくせ、本当に責任をとらなければならないこと、人間は責任をとらない。もっと大人社会、成熟した社会にならないとダメだな。
 ということで「アブラボウズをアブラボウズとして売る」のは「食べ過ぎに注意してください」と明言してやるかぎりなんら問題がない。煙草の箱に「吸い過ぎに注意」と書いてあるのと同じだ。油っぽいのが好きな人、あっさりしたものが好きな人、ひとそれぞれで、好みで食べればいい。「好み」という点では煙草と比べると何千倍も罪がない。アブラボウズの販売を禁止するなら、もっとより身体に悪い煙草の販売を禁止すべきだ。

 この家庭内食品偽装以来、家族は
「あのときのメダイは美味しかったね」
 それを聞くたびに冷凍庫から在庫を出してみそ漬け、照焼、煮つけなどを楽しんだものだ。
 アブラボウズはほんまにうまい!

 市場で売られている、流通しているアブラボウズには二通りある。ひとつは関東なら銚子、宮城などにあがる近海もの。すなわち「生」。はるか遠洋でとれる船内冷凍されたもの。
 冷凍品もうまいことはうまいが、やはり格安のものは「それなり」の味しかしない。
 この魚の真味は近海ものにある。銚子から宮城、相模湾でも駿河湾、熊野灘などにもあがるもので、出来ればあまり大きすぎない10キロから20キロのほどほどの大きさがいい。この刺身は絶品である。これを軽くしゃぶしゃぶにするのもいい。とにかく食べ過ぎない、また肝などを食べないというのに注意すれば、うますぎる魚であることがわかるはずだ。

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 ここで偉いなと思うのは小田原周辺の住民方である。アブラボウズは神奈川県小田原、静岡県沼津周辺で好んで食べられている。なかでも小田原では高級魚であり、寒くなると魚屋にはかならず置かれるものだ。値段も非常に高く、一切れ2000円前後することもざらだ。
 この高値で売られている「おしつけ(押しつけ)」は間違いなく近海産。アブラボウズにも良し悪しがあって、いいものには小田原市民は財布の紐をゆるめる。

 ことほど左様に、物事は勉強しないとわからないこともあるのだ。だいたい人間というほ乳類が、食べるというのは、生命維持のため。生きていくために食べるわけだ。あのとりあえず「ルイヴィトンでも買うか」みたいな下等な買い物を、食べ物でもやってはいかん。だいたい「うまいものだけ食べたい」というのも下等だ。食に関しては、しっかりしみじみ考えて、吟味して、ときに諦めて買うのだ。食は冒険だけど、それ以上に暮らしそのものだ。自分の普段の暮らしが、食に無関心を通しているのに、とつぜん「クエ食べないと、いけないは」なんて思うのは最低である。だからだからだまされる。だましたヤツははっきりいって悪人だろう。いかに不況だとは言え、詐欺行為はいかん。でも消費者が無知であっていいなんて、ボクは思わないけどね。

 さて、こんなことを書いていると、うまい「おしつけ」が食べたくなった。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、アブラボウズへ
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