さかな季語事典: 2006年9月アーカイブ

今年初めてのアユ

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 八王子綜合卸売センター駐車場に着くやいなや、八王子が誇るうまい魚釣り名人・他ちゃん(「まつ浅そば店」)からをかけられた。

「早く来てくれよ。こっちは待っているんだからさ」
 とクルマのクーラーを開けて、中にあったのがアユなのだ。そう言えば、今年はアユを食べていないな、と思っていたら
「7匹くらいだけど、全部持っていってよ」
 なんて響きのいい言葉。改めてみると9匹もいる。
「これは相模川で釣ったんだけど、アユ釣りは始めたばっかだから、あんまり釣れないのよ」
「これだけ釣れりゃ凄いだろ」
「違うよ、釣る人は40以上も釣って帰るよ」
 驚いたことに、自慢話抜きでさっと店にお帰りになった。

 このなかで小振りのを選んでさっそく焼いて食う。
 じゅうじゅう焼き上げるうちに青いワタが流れ落ちてくる。そこをまずかぶりつく。強い苦みだが濃厚な旨味、川の香りがともなってズシーンっと舌を侵略してくる。そこに背肉の微かな日向臭さ、スイカの匂いとくると9本なんてあっという間なのである。17〜18センチ前後が多くて1匹だけ25センチ近いのがいるが、断然小振りの方がうまいし、身に風味がある。家人とともに焼いては食って焼いては食って。「もっと食いたいな」ともの足りない感が残る。
 また相模川のアユは香りが薄いのだというのが今回わかったのも収穫だろうか。我が故郷の吉野川と比べると味わいでは数段落ちる。でもなんといってもアユは天然に限るのだ、と痛感したのである。

 そう言えば7月のを聞くと誰がしらから「アユあるから取りにおいで」とがかかる。ひとしきり自慢話を聞いて、持ち帰り備長炭を起こして焼いては食い焼いては食い。これが今年はちっともお呼びがかからなかった。もう子(卵)を持ってしまうし、アユが大きくなりすぎる、なんてやきもきしていたのだ。「いったいみんなどうしたんだろうね」と思ったらアユ釣りはやらないと思っていた他ちゃんから来たのだ。このままでは今年はアユを食いっぱぐれるところであった。まったく松ちゃんには感謝。

 冨士川に通うM君、茨城県まで遠征するKさん、鹿野川に通っているEさん、「どうしたんでしょうね今年は」。
「まだまだ待っているからね〜」

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まつそば店 東京都八王子市大和田町6丁目12-28 042-644-0008


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