さかな季語事典: 2005年10月アーカイブ

ぶわたら(マダラ)

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 肌寒の10月ともなると、入荷してくるのが「ぶわたら」である。「ぶわたら」の語源は「腑分け鱈」、すなわち内蔵を取り、フィレにすることを宮城県で「腑分け」というにあるという。これは「ぶわらた」を製造している天祐丸、緒方清雄さんからお聞きしたこと。昔は国産、地物を原料としていたが、現在ではほとんどがアラスカなどから来た輸入のもの。これを塩漬けにする。塩漬けにしたものだから身が締まっていて、鍋などにして煮くずれない。また冷凍で常備できるのも便利だ。他にはフライや、ムニエルにも出来る。
 冬近しを感じる食材、「ぶわだら」で湯豆腐を作り、燗酒でいっぱいというのは楽しいもの。さてスーパーでお馴染みの食材である、寂しいお父さんはさっそく買いに走ろう。

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宮城県石巻市魚町 天祐冷凍冷蔵株式会社の「ぶわたら」

市場魚貝類図鑑のマダラのページへ
http://www.zukan-bouz.com/taraasiro/tara/tara.html


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駿河湾、戻りガツオ

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 駿河湾から届いたカツオ。背の部分が青く光っている。菊貞・菊地利雄さんは沼津の地魚を熟知する人であり、それが突然おくってきたくれたものだから、期待は膨らんで、どきどき心ときめいて食べてみて、また驚いた。期待を大きく上回っていたのだ。だいたい包丁の入り方が違う。これはきっと北の海でさんざんイワシを食い、脂と旨味をため込んでいるのだ。そして駿河湾までもどってきた。うまくて酒を過ごしてしまった。

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山丁・菊地さんに今年最高のカツオを送ってもらって感謝。


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 昔ながらの秋の味覚で忘れてはならないのがモクズガニ。「つがに」「ずがに」「川がに」「ひげがに」なんて呼ばれる。そして、そんな日本古来の味わいが忘れられてきて、ぐぐっとステージに登場してきたのが上海がに(シナモクズガニ)なのである。モクズガニが今では幻の味わいとしたら、上海がには築地など流通の場でも、またときにスーパーでも見かけるありふれたものとなりつつある。
 その「つがに」(モクズガニ)をとる漁師である永野廣さんにシナモクズガニを送ってみた。これは和中川がに味対決をしてもらうためだ。この2種、主にメスの子を楽しむのだが、ともに濃厚な味わい、そして風味。これが脇役とも言える身の味わいとともにどっちがうまいのだろう。我が家では高知産のと比べて雌雄がつかなかった。でも身の多さ、子の多さ、からいって和のやや優勢であることを言っておく。
 永野さん曰く、「子の味で『つがに(モクズガニ)』が絶対上ですね」とのこと。「高知によったら日曜市の店(土佐の廣丸)に立ち寄り、『つがに』を食べてみてください」と改めて高知の「つがに」の味に自信を持ってしまったようである。

画像は永野廣さん撮影。左の大きいのが和のモクズガニ、右が中国産シナモクズガニ
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土佐の廣丸へは
http://www.zukan-bouz.com/zkan/hiromaru/index.html
モクズガニのページへは
http://www.zukan-bouz.com/kani/iwagani/mokuzugani.html
シナモクズガニのページへは
http://www.zukan-bouz.com/kani/iwagani/sinamokuzugani.html


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 10月の声を聞くと市場に入荷し始めるのがボラの卵巣である。ボラは秋になると産卵場である南の海を目差す。このボラたるやまさに「とどのつまり」の「とど」。大きなボラがとれると各地で卵巣が集められて築地など関東の市場にもたらされるというわけだ。最盛期にはボラの卵巣と唐墨(からすみ)、また卵巣の壊れたものを塩漬けにしたものなどを専門に扱う店までできるのだから築地は凄い。当然、この卵巣を待っている魚屋、料理店が多数あるということで、自家製の唐墨には早ければ暮れには出合えるはずだ。八王子では老舗の魚屋「天野鮮魚店」が有名である。

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10月になって初めて見た卵巣は神奈川県三浦産


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 東京に出てきたのは30年前である。未成年なのにアパートでよく酒を飲んだものだ。そんなときにはクラスの仲間と買い出しに出かける。
「湯豆腐にするか」といったヤツがいて、さっそくスーパーで豆腐。そしてネギ、魚売り場に立ち寄って「ぶわたら」というものを買った。これが関東風(勝手につけたので悪しからず)湯豆腐との初めての出合いである。「ぶわたら」ってなんだろうね。と話しているとスーパーのおばさんが「塩味のついたタラだよ」と教えてくれたのも懐かしい。

 それからお茶の水の裏さびた居酒屋や、確か「養老の瀧」は出来たばっかりで「北の家族」というチェーン店でもタラ入りの湯豆腐だった。そう言えばホッケの干物を初めて食べたのも北海道は遠軽出身の平野という同級生が「北の家族」で注文したのが最初だったな。

 なぜ東京で食べる湯豆腐にはタラが入っているのか謎である。これは北太平洋での遠洋漁業との関わりがあると思うが、調べる足がかりがない。知り合いの居酒屋のオヤジなんて店を始めて30年を超えるが「昔からタラを入れていたんで、こんなもの聞かれてもこまる」そうな。関東風湯豆腐の謎、教えてくれる人、探しているのだ。

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我が家ではあまりいい豆腐がないときには「ぶわだら」を入れた関東風

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 ハタハタが市場に入荷してくるのは晩夏から秋口。そして10月ともなると山陰は鳥取県、兵庫県などからまとまった入荷が始まるのだ。ハタハタは真冬の魚であると思われている。しかしこれはハタハタの産地が秋田県、山形県など日本海でも北にある地での話。山陰から始まって石川県などでは秋から冬にかけてが最盛期だと思われる。また食べていちばんうまいのも卵巣の成熟度がすすみ過ぎていない晩秋だと考えている。
 秋田県の人は「ぶりこ」、すなわちハタハタの成熟した卵巣のぷちぷち、またぶちぶちした食感を楽しみ、中のエキスを吸い込んで硬い卵膜を吐き出すのだという。これも何とも言えずうまそうではあるが、まだ未成熟の卵巣の濃厚な旨さには負けないだろうか? ちなみにこの時期ならメスの身もまだまだうまいのだ。

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今年もまた鳥取県網代港のハタハタが入荷してきた。山陰でハタハタがたくさんとれることを知る人は少ないのではないか?
昔、鳥取市を散策していて食べた「はたはた寿司」。「鳥取でハタハタ」とは当時、唐突に感じましたが駅からほんの少し歩いたところにあった「はたはた寿司」は棒ずしであり、中に芥子の実が入っていましたね。懐かしい。

市場魚貝類図鑑のハタハタへは
http://www.zukan-bouz.com/suzuki/wanigisuamoku/hatahata.html


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