さかな季語事典: 2006年10月アーカイブ

 北海道は厚岸、白糠と、発泡の箱が並んで中身はシシャモなのである。当然、干物だろうと思われるかも知れぬが、近年この地域から来るのは生なのだ。これは毎年量が増えている。
 シシャモは干してこそうまいという固定観念が広まりすぎているために「生」がまずいように思われている。それがだんだん「生うまいぞ」という反応に変わりつつあるのがここ数年のこと。この変化を見ているのがなんとも面白い。
 せっかく生で入荷したものなのだから、まず第一に刺身で食べたい。食感の悪い柔らかい身なのに味が濃いというか「うまいーい」刺身になる。そして塩焼きのうまいこと。
 秋にしか食べられないのが生のシシャモである。そろそろ北海道には冬が来てしまう。お早めに!

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 おでんのネタと言えば関東では練り物が中心となる。あんまり魚貝類とは縁のない関東と違って関西ではイイダコが入り、バイが入り、クジラのコロなんてものもある。また東北などではモスソガイ(「べろつぶ」「おでんつぶ」)が入っていることがある。
 そして我が家のおでんにときどき登場するものがエチュウバイなのだ。これがカガバイなのかエチュウバイなのか? 我がデータベースでは問題点を残しているのだが先送りして話を進める。まずエチュウバイを軽く殻ごと湯がく。これを昆布、サバ、カツオ節、酒でとった薄味のおでんだしで温める。イイダコも入れたかったが今回はミズダコで我慢。
 おでんの鍋に巻き貝とタコの赤があるとぐんと本格的な風情になる。また、おでんが子供や女性だけでなくオヤジも楽しめる一品になる。

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 先週のこと。浦安で生まれて船橋で育った『源七』のあんちゃん、せっせと「こはだ(コノシロの10センチ前後)」を開いている。そして振り塩。
「こはだ、今がいちばんうまいのかな。オレなんかさ、毎日食べてもこれだけはあきないな」
 その内の10枚を分けてもらってボクも好みの塩を振る。酢で洗う時間もあるし、塩加減だけは誰にも任せられない。
「ウチじゃさ、これを酢で軽く洗って甘酢で30分くらい漬けるの。すると子供もよく食べるしさ」
「オレは、酢で洗って、それだけでいいな」
「そうだね。子供や母ちゃんのこと考えなければそっちの方がうまいよな」

『源七』で塩をした「こはだ」は腹合わせにして袋に入れて持ち帰る。ちょうど40分が経過している。これを酢で洗い、ほんの少し砂糖を入れた酢に漬ける。これを30分ほどで引き上げて、また腹合わせにして冷蔵庫に仕舞い込んでおく。

 そして晩酌の肴は当然のごとく「こはだ」なのだ。自家用だから背ビレを落として四等分に切っただけ。徳島県人なので酢締めにもスダチをかけてアテにするのだ。
 この秋の「こはだ」に脂があって、それは微かだが甘味すら生んでくれている。そこに青魚の旨味が加わっている。「こはだ」で飲(や)る日本酒のうまいこと。沼津の「白隠正宗」がどんどんなくなっていく。

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相模湾の小ガツオ

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 釣りに熱中していたとき、秋になると小田原に出かけてカッタクリで狙っていたのがカツオなのである。相模湾でのカツオ釣りには2種ある。沖合でカツオのなぶら(群)を探して生き餌、一本釣りするもの。岸が間近に見えるところで釣る「カッタクリ」。カッタクリの仕掛けは単純で手釣り用のテトロン糸にコマセカゴ、重り、そしてバラフグやサバ皮の疑似餌でカツオやいなだ(ブリの幼魚)を誘って釣り上げる。沖合でなら2キロ、3キロがねらえるが、カッタクリにくるのはせいぜい1キロ前後の小ガツオばかり。
 この小ガツオの味が懐かしいなと秋になると毎年思っていたのだ。なぜならばなかなか湘南からは魚が来ない。それがどうした弾みなのか八王子綜合卸売センター「高野水産」に山と来た。

「一本やるよ、持っていきな」
 実際に値段からすると1本で200〜300円と言うところ。小さなカツオは安いのだ。

「これは小さいな」
 さっそく食べてみようと、『市場寿司 たか』へと持ち込んだのだ。たかさん、さっそく生と「あぶり刺身」とで下駄にのせて出してくれる。生姜をするのももどかしく醤油につけてつまんでみる。

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「あれ、これ脂じゃないよな。けどうまいじゃん」
 これはたかさん、
「どっちがいいかな」
「オレは生のままかな。このあぶったのはもともと好きじゃないし。でもあぶったのもうまいよ」
 実際食べてみると生もあぶりも旨味があるし、その上食感がいいのだ。

「そうだね。近場の鎌倉から来た荷だから鮮度がいいのかね。もちもち餅っとしてるね」
 たかさんと刺身にあぶりに、そして握りにして相模湾の秋の味覚を堪能した。
「幸せだな! たかさん」
「幸せだな! ぼうずコンニャク。出来ればこんなうまいもんは孫と食べたかったよ」


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 メバチ、しかもこの大きさじゃうまくないだろうな? 考えた末に買ってきたのがメバチのかまトロ肉。ちょうど胸肉に残る脂身なのである。まあ刺身にすれば旨味はなくてもそこそこ食べられるだろう。でも「ねぎま」にしてうまいとはとても思えないのだ。でも市場を見回す限り鍋に仕立ててうまそうなネタが見つからない。できればカキを買いたかったのだがあいにくまだ9月なのである。パック詰めやカンカンのカキは週明けから入荷が始まるはずである。

「ねぎま」というのを知る人も市場にあっても少なくなっている。面白かったのは市場で「なぎま」の話をしていると「焼き鳥屋に行くんですか?」なんて完全に勘違いをしてくれる若い衆がいる。彼の出身は静岡県。当地で「ねぎま」というのは「葱間」、ネギの間に鶏の正肉を挟んで焼いたもの。マグロが材料の「ねぎま」を簡単に説明すると、江戸時代、マグロの脂身、すなわち中トロや大トロの安かったときに、これと白い一本ネギを汁にした「ねぎま汁」というのが食べられていた。それを鍋に仕立てたもの。すなわち「ねぎ」と「ま」ぐろで「葱鮪(ねぎま)」汁なのである。

 そこで仕方なくマバチのかま肉を買って帰る。そして家族はなんと大好きなたこ焼き。子供の友達までさそってタコだチーズだウインナーだと大騒ぎ。そんな隅っこで小鍋仕立てのねぎま鍋。
 まず最初にカツオ節出しをとる。イノシンは少なくしたいのでカツオ節は少な目。このあっさりした出しに酒、ほんの少しの味醂、塩、醤油で味付けをする。普通、ちりには昆布だしだけと決めているのだが、ねぎまには旨出八方と決めている。たとえば同じ組み合わせなら魚すき、すなわち魚を使ったすき焼きでもいいが、この場合も味付けはしっかりつけるに限る。
 この小振りのメバチのかまトロで作った「ねぎま」であるが、やはりこれでは旨味に欠けてうまい鍋にはならなかった。しかもネギもまだまだ甘味が少なく旬とは言えない。次回は本鮪の八の字、下仁田ネギの上等を買い込んで「ねぎま」といきたいものだ。

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