食べるエビ・カニ学: 2007年10月アーカイブ

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 八王子綜合卸売協同組合『マル幸』の店頭、しまえび4000円というのが目に吸い付いてくる。モロトゲアカエビは値段の乱高下があり、築地などでは大きいと1万円(キロ当たり)の大台を超える。大きいと23グラムから25グラムあるので1匹250円前後することになる。せめて3本は食べたいと思って、750円原価というのを飲食店で食べるといかほどになるのだろうね。『マル幸』の店頭のものはあまり大きくはない。でも八王子で4000円というのは凄い値段なのだ。
 クマゴロウに重さを量ってもらったら1本あたり70円になるという。ということは20グラムに欠けるもので、「どうしてこんなに高いんだ」と箱の中をよくみるとそのワケは直ぐに判明した。まだ生きているのだ。
 モロトゲアカエビの漁場は日本海。特に北海道西部が最大の漁場だ。そこでエビカゴで狙うのは主に、ぼたんえび(トヤマエビ)である。モロトゲアカエビは言うなれば漁の脇役なのだけど、ぼたんえび(トヤマエビ)よりうまいという評価もあるほど。
 カゴ漁であがったエビは港まで生きたまま持ち帰る。それを氷でしめて各地へ送る。この送り方に陸送と空輸があり、断然ジェット機で輸送する方が高く、そしてほとんど生きたまま関東まで来るようだ。この辺の輸送方などボクはもっと調べる必要性を感じている。例えば築地でも値の張る魚貝類はほぼ総て空輸されたものだ。

 小銭入れの中を見ると150円ある。「クマゴロウ、消費税まけろ」と会計に140円を置いて2本持ち帰る。驚いたのは撮影中にも動く、動く。シャッタースピード20分の1だとかなりぶれる。結局エビ2匹撮影するのに30回もシャッターを切ることになった。

 生きている甘エビ類(刺身用のタラバエビ科という意味合い)の入荷が最近とみに増えている。無理だと思われていた甘えび(ホッコクアカエビ)すら活けが珍しくない。でもこの活けの難点は皮が向きづらいこと。それとエビの旨味成分アデノシンモノリン酸のイノシンへの変化は、魚類などよりも早いといっても旨味成分量からすると締め(死んだもの)での入荷よりも少ないに違いない。

 まあ、活けがうまいかどうかは今年一年見つけるたびに食ってみればわかることだ。撮影後すぐに食ってみる。やはり殻は剥きづらい。剥いて取り外した足がまだ動いている。それを揚げ油に放り込んで、頭と共に素揚げにする。それを刺身、ワタ、卵とともに武内立爾さんのまな板皿に盛る。

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 やはり生での旨味は薄いようだ。ただしアミノ酸類の粘質がもたらす甘味は充分だし、食感のよさは魅力的。その上、ワタ(肝膵臓)、生殖巣の甘さにはまったく苦みがない。たった2本のモロトゲアカエビでこれほどに楽しみが得られるとは恐るべし。また、高くてもいいものなら仕入れる、クマゴロウの勇気にも称賛を与えたい。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、モロトゲアカエビへ
http://www.zukan-bouz.com/ebi/morotogeakaebizoku/morotogeebi.html
八王子の市場に関しては
http://www.zukan-bouz.com/zkan/sagasu/toukyou/hatiouji/hatiouji.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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 予め、書いておきたいのは、ボクが炊き込みご飯が嫌いであることだ。食べてみるとうまいもんだな、という気もするけど、白いご飯を前にしたときほどには興奮しない。
 でも家族の好みは真逆なのだから不思議なものだなー。鶏肉、キノコ、カニ、そしてエビと四季折々に炊き込みご飯を作る。まあ作るのはいつもボクなんだけど。

 その炊き込みご飯でもっとも簡単に出来上がるのが「えび飯」である。
 今回は沼津に揚がった本えび(ヒゲナガエビ)を使う。この炊き込みご飯のエビはなんでもいい。ただし淡水のスジエビやテナガエビは工夫が必要となる。こちらは後日説明することに。

 まずは材料。今回はたった1合だからエビとしては中くらいの大きさがある本えび(ヒゲナガエビ)は5、6本。あとは薬味用の香辛野菜。酒、醤油、塩。
1/まずは1合に合わせて水加減。ここに酒、塩、醤油(しょうゆ)で味つけする。エビには独特のクセがあるので醤油は多めでいい。
2/本えびを汚れを落として、水分をよくきり、米の上にのせる。後は炊く。

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炊きあがり。エビは丸のまま入っている。これを取り出す

3/炊きあがったら蒸らし。エビを取り出す。
4/エビの殻を剥き、適度に手で潰しながら切り、ご飯の上にもどし、混ぜ込む。

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エビは包丁ではなく手で潰しながら適度にちぎり切る

5/薬味は今回は生姜(しょうが)、茗荷(みょうが)、青じそのせん切り。これを混ぜ込むのもよし、銘々で上にのせるもよしだ。もちろん薬味はお好みで。

 我が家では「えび飯」はあまりに簡単なので手抜き料理のひとつだ。例えばお弁当を作るとき、なんにも料理が浮かばなかったら冷凍のエビを使って作ることもある。これをおむすびにして胡麻(ごま)をまぶせばなかなかキレイなのだ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ヒゲナガエビへ
http://www.zukan-bouz.com/ebi/kudahigeebi/kudahigeebi.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 レストランでオマールエビを食べるとなると大変である。1本丸ごとではなく、当然半分に縦割りにしたのがポシェ(茹で)されてドレッシングやソースがかかると3000円から6000千円くらいする。原価計算するとオマール半身が仲卸で1000円から2000円くらいなのでちょうど材料費の3倍くらいとられる。
 これを仲卸で1本かってまるまる食べても安いときには2000円、高くても4000円ほどなのでオマールは河岸で買うに限る。

 その上、レストランではコライユ(ワタ)を使ったアメリケーヌソースとか、手の込んだドレッシングとか無駄な一手間がかかっている。オマールは蒸すか茹でるか、単純に食うのがいちばんなのにモッタイナイ。

 久々にオマールを丸ごと茹でて、熱いウチに縦割りにして、子供とあっという間にむさぼり食う。ミソがまた上品で旨味がある。身はホワっと柔らかく繊維質で、口の中でほどよくほぐれる。
 それこそ2,3本が跡形もなくなるのに数分とかからない。それほどオマールエビはうまいのである。

 最後にオマールエビには2種類あり、ともに大西洋側に棲息する。大西洋のアメリカ大陸にいるものと、ヨーロッパからアフリカ大陸西岸にいるもので日本名は便宜的に「アメリカウミザリガニ」と「ヨーロッパウミザリガニ」と呼び分ける。そして市場で見かけるほとんどは「アメリカ」であり、「ヨーロッパ」は長い間見ていない。もし入荷しても「アメリカ」の2、3倍の値がつくに違いない。
 またオマールエビというのはヨーロッパでの名であり、アメリカではロブスターとなる。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、オマールエビへ
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