岡山は食文化が多彩だ。これは大きな河川が流れ、高原があって、瀬戸内海を目の前にして、しかも児島湾という有明海に匹敵する干潟を持っていたためであろう。よくいわれる「池田様のお陰」なんて冗談ではない。たかだか大名なんてつまらんものに食文化なんて作れるわけがない。
岡山の食文化を育てた魚貝類というと児島湾のサルボウ、アゲマキ、あみ(アキアミ)は筆頭格にあげられるだろう。ここにコイ目、ウナギ、絶滅したハイガイ、ベイカなども加わってくるのだが、ここでは置くとしよう。
アキアミは「アミ」とつくが、れっきとした十脚目のエビ。話が固くなるが、サクラエビの仲間である。アキアミの「アキ」は当然、季節の「秋」。秋にまとまってとれる「アミ」のごとく小さなエビというのが標準和名に込められている。
岡山県人は秋になると、なんと各家庭、各人各様にアキアミの塩辛を作る。このこだわりはとても他県人には手出しできるものではなく、旅人として盛りをとうに過ぎたアキアミを駅前のデパートで見つけて、「さてなにを作ろうか」と疲労困憊した脳みそを働かせる。
そう言えば、岡山中央市場で働くゴージャスなゴウチさん、今秋はアキアミの塩辛を作って分けてくれると言ったが、忘れていませんよね。ボクは岡山の「あみの塩辛」が大好きなんですから。
閑話休題。
目の前にあるアキアミ1パックを、最終的にはかき揚げにすべきか、佃煮にすべきか、悩みましたなー。それで後かたづけのことを考えて、というかいちばん簡単な佃煮をつくる。
小エビの佃煮ほど簡単なものはない。深みのあるテフロンフライパンに味醂、酒、砂糖、醤油を煮立たせる。この場合、小エビはすぐに火が通るので、決して水分は加えない。だいたい当座食べるというものに水分は禁物だ。香辛野菜は、いつもは山椒の佃煮を加えるのだけど、今回は切らしていて、単に生姜とする。
鍋の中で煮汁が煮立ってきて、やや煮詰まったら、アキアミを放り込む。これからは一気呵成に、火をゆるめることもなく、佃煮を仕上げるだけ。決して火を弱くしてはいけない。最低限中火で、煮汁がアキアミを被うくらいがいい。
調理時間はほんの15分くらいだろうか? もっと短いかもしれないが、とにかくあっという間に出来上がる。
出来上がりを待っているのは子供達だ。小エビ類の佃煮の炊きあがったばかりのをご飯にのせて食う、これはたまらない。親としては佃煮ばかりでご飯を平らげられても困るのだが、止められませんね。
残った佃煮で、飲む酒もよし。1週間の山陰、山口、岡山の旅を終えて、心地よい疲れが押し寄せてくる。
●2月17日記す。
光吉商店
http://www.mitsuyoshi-shoten.com/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、アキアミへ
http://www.zukan-bouz.com/ebi/konsai/akiami.html
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