2006年12月アーカイブ

 おおつごもりとなって、今年を振り返るに、まったく息苦しいほどに右往左往、また悪戦苦闘の日々であった。たったひとりで世に流通する。また人と関わる総ての水生動物をデータベース化してみたいと思ったのが、ほんの15年ほど前のことなのだ。それ以前は模索の日々であった。ただただ魚貝類のことを調べて、それをワープロに打ち込む。またデジタル以前なのでポジフィルムに記録する。このデータベース化はまことに楽しいもので、スポーツにも遊技にも、まったく無関心なボクの唯一の楽しみとも言えるもの。それがここ2,3年大きな帰路にある。なぜならば明らかに一人で管理する限度を超えてしまったからだ。
 関係ないことだけど昨年福島に行った折りに地元の女性に「さかなのことを調べているんです」と言ったら「サカナ君みたいね」と言われた。これが非常にショックだったのだ。実を言うとボクは生きているものにはほとんど興味がない。例えば磯遊びは大好きなのだ。多様な生物が見られるし、手に取ることが出来る。また磯というのは人が普通に生活していながら(これがボクには大切なこと)接することの出来る自然なのだ。それに対してテレビなどで映し出される熱帯の海の明らかに景色というものみはぜんぜん興味がない。水族館というところやマリンパークなども退屈で無味乾燥なところでしかない。またボクのやっていることは明らかに理科系ではなく文化系の範疇になる。あえて言えば民俗学的な方面だと思う。別の言い方をすれば人生と水産物の関わりを調べている。大好きな花森安治の「暮らし」という言葉を、新年から多用するつもりなのだが、まさにボクのデータベースの要はここにある。だから図鑑的な知識は中心にない。敢えて言うとそんな地味な存在のボクから見るとサカナ君というのはタレントとしての才能と優秀な記憶力を持ち合わせていてうらやましい存在だが、まったく分野の違う世界にいる。たぶんボクが彼と会ったとしても会話が弾まないだろう。まったく接点がない。
 またボクの作り出しているデータベースの特徴は「暮らし」で表したいと思うごとく、非常に多様である。結局食べ物が中心とはなっているが、実を言うと魚貝類だけではない。野菜のデータも数百品種あり、また街のデータも数え切れないほどになっている。この「暮らし」と「市場魚貝類図鑑」をもっと接近させるのが新年からの新しい課題。新年にはもっと大きな壁にぶつかりそうだ。
「市場魚貝類図鑑」というデータベースを作り始めて、6年目となった。ページ数は実を言うと把握していない。たぶん2千ページ以上、そこに周辺記事、周辺雑記があり、ブログが6つある。このブログはボクの興味の範囲を総てデータ化しようと思い立ったのが、10年も前のことなのであり、それをそのまま作るなりブログ化すればいいという安易な気持ちで始めてすぐに行き詰まってしまった。どうもボクは自分自身の作り出したブラックホールに入り込んでしまったようだ。
 そんな年となってしまったが、それでも多くの収穫を得ている。特にここで明記したいのが徐々に増えつつある無償の協力者である。まことに貧乏極まりないのでなにひとつお礼もできないでいる。ここに改めて感謝の意を伝えたい。各地からの珍しい魚貝類、また情報を寄せて頂いて、それが我が図鑑の大きな進展となっている。その荷物や情報の中に長年、疑問としていたことの多くが理解でき、また新知識ともなった。また思わぬ言葉が新たな水産物への興味を生み出した。また「寿司図鑑」の撮影かん数がやっと500種を超えた。300種を超えたあたりから行き詰まりを感じていたのがやっと半ばに至ったといった感がある。それと「市場魚貝類図鑑」総ての文章をまったく書き直すという作業を始めるところまで行き着けた。これまではとりあえず、掲載種を増やす方向性であったのがやっと転換できたのだ。
 そして新年の抱負だが、ただただデータベースを充実させること、とりあえずは総てのページを改訂書き直すこと。そしてそこに「暮らし」というボクが本来中心にしたいと思っている主題を前面に押し出していくこと。これにつきる。
 最後に今年はまことにお世話になりました。また新年からは魚貝類や野菜その他、何気ないものも含めて多くの情報をいただけたらありがたいと思っている。2007年もなにとぞよろしくお願いいたしまする。(五十路のぼうずコンニャク記す)


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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「東京のさかな」のデモ版を作成した。今日明日でなんども作り直すつもりだが、基本形はこの形で行きたいと思っている。掲載はアイウエオ順とした。

東京のさかなのページへ
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2006年12月29日の日記

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 昨日は久しぶりに早い時間に帰途につく。神保町すずらん通りの「キッチン南海」で今年最後のカツカレー。神保町駅から東京駅に出て豊田駅に。

 近所の「開花」(東京都日野市旭が丘2丁目3-14)でいっぱい。
 年末だというのに「空いてるね、今日は」と言うと、
「何言ってんだよ。さっきまで大変だったんだよ」
 常連さんも
「オレも一度断られちゃったんだよ。それでもう一度出直してきたわけよ」
「それじゃ、オレはついてるわけ」

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 しめ鯖と突き出しを肴に燗酒を2本。「開花」の銚子には1合半入るというので合計3合はいただいたことになる。
 帰宅するや、どーっと疲れが出てダウン。しかし大変な2週間であった。

 そのまま意識なく気が付いたら朝の8時となっている。姫が「市場に行こうよ」と言うので自転車で向かう。浅川から吹いてくる風の冷たいこと。それでも天は青く、そしてぽっかり雲がいくつも浮かんでいる。川原にはたくさんのシラサギ。
 市場に着くと、そこは戦場だった。ほとんど身動きとれない。

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ここは丸幸水産の前

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三恵包装は暮れでなくても混雑しているのだが、今日はより殺人的な状況になっている

「光陽」に入ってほっと一息。でも娘さんふたり、おばちゃんに、オヤジさん、お母さんの5人でもてんてこ舞いの忙しさであるようだ。その忙しさの原因が各店舗からのおむすびの注文。ほとんどの店員さんがトイレにも行けないのであるという。それで朝ご飯はおむすびにたくあん。
 この混雑で、やっと消えたと思っていた頭痛がぶり返してくる。
「十一屋ジャパン」で日野菜、しょうが、ミックスサラダ(総て漬物)を買って「平成食品」に逃げ込む。ケンちゃん、暮れだというのにまったく「売る気がない」ように見受ける。
「今日やたらと焼き豚用がでるんだよ」
 バカだな。当たり前だろ。
「伸優」で中島酒造の日出盛純米吟醸を一本買って市場を後にする。ボクははっきり言わしてもらえば暮れの市場は「大嫌いだ」と浅川に向かって叫ぶ。
中島酒造
http://www.nakajima-sake.co.jp/html/shop/jyungin.html

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今年の正月は隣町ながら地の酒にいたすことにした。この「高尾山」なかなか値段の割にはうまいのだ

 帰宅してまたまたダウン。身体がなかなか元に戻らない。
 午後、八王子に出て「岩田製麺」(東京都八王子市元横山町3丁目11-5)で手もみ麺、焼きそば麺。「神山豆腐店」(東京都八王子市元横山町3丁目11-8)で木綿豆腐2丁、油揚げ5枚買う。そして「小宮山青果店」(東京都日野市西平山5丁目22-7)で白菜と焼き芋を買って帰宅する。しかし「小宮山青果店」の焼き芋はうまい。


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 秋から考え始めていて、この新年一日から開始するのが東京に来た魚貝類の総覧である。そろそろ東京に来る魚の9割以上、たぶん主要な魚貝類は総てデータに取り込めたと考えている。それを文章と画像で整理していきたいと思う。
 特に現在の魚屋料理屋、そして市場などの価値観は毎日のように記録整理が必要な項目。これを記述する基本としても、すぐに公開して、しかも毎日改訂していく必要性を感じる。
 ここでの「東京のさかな」のページに参加していただける魚屋・料理屋・仲卸や輸入業者の方を募集する。募集と言ってもいろいろ教えて頂ける人を今以上に募りたいだけなのだが。

ぼうずコンニャク
●yobi@ZUKAN-BOUZ.COM


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 週明け、目覚めたのは7時。明らかに寝坊である。
 朝食はハタハタの三五八漬け、ベーコンエッグ、生野菜、ワカメと豆腐のみそ汁、ご飯。
 三五八漬けは味わいが濃く、そして風味が増してきている。

 八王子魚市場には8時半。まだまだ鮮魚に動きがある。そんな八王子綜合卸売センター『高野水産』に和歌山県串本市出口水産から2キロ近いヒゲダイが来ている。これを思い切って買う。すると社長がついでに来ていたオオニベをくれる。ヒゲダイは精悍な面構えの魚、それが2キロもあって真っ黒な顔がなぜか殿山泰司に似ている。この殿山さん味の方は「★★★★★」。
 帰り際に、たかさんと無駄話。市場はそろそろ買い出し客を見かけるようになって慌ただしい。

 帰宅途中、旗野農園に我が家にあった大きな漬物重しをおいてくる。
「年内は30日までだからね」
 旗野さんが必ずおいでと言う。
 帰宅は10時過ぎ。正午まで寿司図鑑の作成。結局途中までで外出。外に出てもまったく寒くない。しかもなぜだか風がどんよりしている。バスの中は咳をする人多し。
 駅前で銀行に立ち寄ろうとしたらぐるりと行列に円が出来て入り口付近まで伸びている。並ぶのは大嫌いなので断念。そのまま回数券を買わずにスイカでホームに下りる。ホームは人影少ない。下りホームで中央線を撮影する子供を見かける。確か学校は今日まで。
 中央特快で熟睡。お茶の水のスクランブル交差点には学生がいっぱい。このほとんどが予備校を目差し、また帰るところのようだ。
 雑事をこなす内に、夕食を山の上ホテルでとる。慌ただしい日々でホテルに入って初めて今日がクリスマスなのを知る。ちっともうれしくないが仕方なく夕食はクリスマスディナー。メインを魚にすると“マダラのムニエル”だという。ウエートレスに「バカラですか」と聞くとぜんぜん理解出来なかった。出てきたものは生のタラをムニエルにしたもの。メインにマダラというのも今時思い切った「在り来たりさ加減」。ホテルでなければこんな選択は出来ない。でも火の通しかたなど、なかなかうまいものであった。疲れすぎているのでクラスワイン1杯だけにしたら少しもの足りない。

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いたってシンプルなムニエル。バターの香り高く、よくできた一品

 お茶の水には2時まで。帰宅は3時過ぎ。掲示板・メールのお掃除(迷惑メールなど)、シャワーを浴びると4時を回っている。

 昨日は寝坊した。気が付くと8時を回っている。雨の中、大急ぎで市場に向かう。
 八王子魚市場にはうって変わって鮮魚が激減。むしろ惣菜部が慌ただしい。八王子綜合卸売センター『市場寿司 たか』にヒゲダイをおき、場内を見て回る。買い出し客が目立ってきている。もう新巻鮭や冷凍タラバなどを持ちきれないほど買っているオバサンがいる。

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『市場寿司 たか』でヒゲダイの握りを撮影。「信じられないほどうまいね」というと、「それは言い過ぎだよ。疲れてるんじゃない」とたかさん。でもでもうまいものはうまい。
 帰宅は10時前。
 遅い朝ご飯を朝寝坊の家族ととる。ヒゲダイの刺身がうまい。残っていたマルハラフーズ「サンマ味醂干し」、カネマル笹市のアジの開きともにうまくて贅沢な朝ご飯になる。
 午後一時まで雑事、寿司図鑑作成、画像の整理。
 慌ただしく外に出たら雨が本降り。まるで梅雨の走りのような降り方、とても師走の雨とは思えない。中央線に乗り込むとやけに温かいので熟睡。お茶の水には2時前まで。タクシーで代官町から高速に乗ろうとしたら永福まで大渋滞。久しぶりに下を通ることに。お堀端から新宿通に入る。麹町のファミリーマート、窓際のカウンターで道路を見つめながら無心にハンバーガーをぱくつく若い娘。そとは驟雨なのである。帰宅する足はタクシーしかない。この娘、どこに帰るのだろう。
 渋滞のために帰宅は3時近い。雑事をこなして布団にもぐり込んだのが4時過ぎ。

 本日は大幅に寝過ごす。姫が市場に行こうよというので渋々着替える。
 八王子魚市場には9時前に着く。鮮魚はやはりいつもの半分もない。やはりノロウイルスのためだろうかカキが少ない。「源七」では大量のタラバを蒸している。この「源七」の蒸しタラバは最高にうまいのだ。
 姫と八王子総合卸売協同組合「光陽」でラーメン。胃がざらざら痛くて少しもうまくない。かたわらで姫が「父ちゃん、今日はラーメン全部食べられた」と喜んでいる。
 八王子総合卸売協同組合は買い出し客で込んでいる。八王子綜合卸売センター「平成食品」「ユキ水産」「市場寿司 たか」、それぞれ無駄話して通り過ぎる。なんにも買わない。
「伸優」、無駄話のために立ち寄ると八王子の酒蔵『日出山』中島酒造の酒が並んでいる。面白いので純米酒を注文する。
 帰宅は10時過ぎ。さて今日も雑事をこなして、お茶の水に出なければ。


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イサキ科を改訂

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オシャレコショウダイのページを作成
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掲載種 1827


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 秋田の、なべ婦人、踊る中年剣士さんからハタハタの三五八漬けが届いた。うれしかったな、と思うだけでなく三五八漬けを焼く香りに癒された。
 仕事明けの土曜日で身体がだるいのもあるが、もっと耐えられないのが神経が休まらないこと。こんなとき多摩地区とは言え東京都というのは殺伐としている。景色を見ても、近所を自転車散歩してもささくれだった心は一向に元に戻らない。
 それが三五八漬けの濃厚な香ばしい香りに、ついつい心が和んでくる。どうしてなんだろう? この香りというのはハタハタの硫黄分を含む魚のものと、麹由来の甘い香りが火で炙られて混ざり合ったもの。これがなんとも心も胃袋自体をもゆさぶる。

 さて話を「三五八漬け」自体のことに移す。この「三五八」とは「塩3」「米5」「麹8」の割合を示す。これとハタハタを合わせて漬け込むのだ。この「三五八漬け」と言うのは江戸時代から東北地方に伝わるもの。山間部では野菜など、海産物だとニシンやサケを、そして秋田にくるとハタハタを漬け込むのだ。毎年冬を迎えるとともに大量に押し寄せるハタハタ。これを鮮魚として食べる以上に「ハタハタずし(いずし)」「三五八漬け」「干物」「しょっつる」などに加工をする。この海辺で作られた「ハタハタの三五八漬け」は山間部へも運ばれる。古くは干したニシンや塩イワシとともに山辺の冬の貴重なタンパク源、そして贅沢な食べ物であっただろう。また魚を漬け込むというと「みそ漬け」を思い浮かべるかも知れない。でもあれはあくまで調味であって「漬けもの」ではない。秋田のハタハタの三五八漬けはまさに魚の「漬けもの」。ハタハタと三五八を発酵させて旨味を醸し出す。このためにハタハタには麹由来の甘味があり、植物から醸されるグルタミン他の旨味も加わる。

 夕方、箱を開けて、麹の香りを思わず吸い込んで、なぜか酒屋に走る。探したのは秋田県横手市の『天の戸 美稲』。これを「えええい」と買ってきて三五八漬けの焼き上がるのに備える。その熱々のハタハタにかぶりつきながら『天の戸』、これは一週間分の疲れをとりさって、まるで玉川温泉のお湯に使ったように癒される。そして飲み過ぎてそのまま深い眠りに落ち込む。

 まことに踊る中年剣士さん、なべ婦人には感謝のしようがない。何という絶妙なタイミング。今朝、また三五八漬けを焼き、これでしこたまご飯を食べて、この文章を書いている。ボクが二日で食べたハタハタ7本。秋田の海にも感謝。

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市場魚貝類図鑑のハタハタへ
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コシナガマグロのページを作成
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掲載種 1826


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 さて、本日の起床時間は7時過ぎ。3時半に寝床にもぐり込んだのでちょうど3時間半なりの睡眠時間である。布団に入るやいなや深い深いいらだち、また感傷に浸り、一度水を飲みに起きあがった。このとき時刻は4時半となっていた。人間というのは不思議なもので疲れすぎると眠れないのだ。
 さて、布団から起きるやパソコンのお掃除をする。掃き出すのは迷惑メール、迷惑投稿である。コヤツらをなんとか罰せられないのだろうか? 忙しい最中にセールスでピンポンを押すバカやろーとともに世の中から削除したい。注/疲れているので過激になっている「すまんすまん」
 八王子魚市場にたどり着いたのは8時半である。鈴木さんが忙しそうにアカガイを剥いている。
「今時はアカガイは剥かなきゃ売れないんだね」
 厚岸からのエゾバフンウニをこっそりたっぷり試食したら
「うまい」
「こらこらそこの人、試食のし過ぎはお金をとるよ」
 八王子綜合卸売センター、「高野水産」はまだ到着していない。八王子総合卸売協同組合「清水保商店」でウルメイワシの丸干し。250円を保ちゃんが200円税抜きにまけてくれた。「十一屋ジャパン」に山形の青菜(せいさい)がある。これがまたうまい。べったらで巻いた水菜もうまい。いやー試食は楽しい。起き抜けにご飯が喉を通らなかったので今頃腹の虫が騒ぎ出す。「コリアフーズ」で「今日はビビンバ作らないの」と聞くと
「なに言ってんのよ。こっちゃ暮れで忙しいのよ」
 追い立てられる。
 やっと「高野水産」が到着。社長に「金曜日なのに荷が多いね」というと
「明日は休みだからね。ひょっとして忘れてた」
 と小走りにトラックの荷を下ろし始める。
 いつもは暇そうな「平成食品」も今日は忙しそう。
「クリスマス用の鳥ももくれよ」
「なんだえ、一様クリスマスやるの」
 あちこち回って「市場寿司 たか」で青菜の巻物。これが絶品。青菜(せいさい)とワサビが合う。
 帰宅は10時過ぎ。大急ぎで外出の支度をしている。

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昨日の寿司図鑑の撮影。主役はオシャレコショウダイ


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ダンゴウオ科ナメダンゴのページを作成
http://www.zukan-bouz.com/kasago/sonota/namedango.html
クサウオ科エゾクサウオのページを作成
http://www.zukan-bouz.com/kasago/kusauo/ezokusauo.html

掲載種 1825


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 津軽海峡とくると、最近ではクロマグロ一色の報道がなされている。いかにもケレンの多い、しかもドラマ性にとんだ番組作りとなっていて見ていて恥ずかしくなるようだ。その青森沖合でこちらはいかにもしずしずと水揚げされているのがアブラツノザメなのだ。
「サメをなぜとっているの」なんて今時の都会人は思うかも知れないが、ほんの一昔前まではサメは惣菜魚としてありふれた存在であった。それが証拠に八王子市内の魚屋さんでは1970年代くらいまでサメの皮むきが朝一番の大仕事だった。これを道行く人がながめて「今日はサメでも煮てみるか」なんて思ったモンなんだろうね。
 そのサメのなかでも一番うまいのがアブラツノザメだという。煮つけ用やムニエル用にと生でも、そして最上級の練り物材料としても使われる。この青森産のアブラツノザメの頭を取り去り、皮を剥いたのを「棒ざめ」とか「むきざめ」とか言うのだが、これを関東の市場まで送り出してくるのが青森市内の田向商店である。だからサメに関わる商品・加工品が多い(その他の海産物もいっぱいあつかっているのだけど)。そのなかでもボクとしてはもっとも気に入っているのが「さめ煮つけ」である。
 サメは肉食魚なので今時問題となっている水銀の含有量が多い。でもそれを補ってもあまりあるのが素晴らしい栄養価である。特に多いのがコンドロイチン、コラーゲンという美肌のもと。美しい肌を保ちたかったらサメを週一くらいには食べるべきだ、と思うほどである。それにこの田向商店の煮つけの味付けがいい。骨密度が気になるお年寄りにもいいのではないか。またボクのような寂しいお父さんの晩酌にもイケル。
 田向商店の「さめ煮つけ」を食べるなら津軽海峡冬景色なんて演歌を流してみるのも一興である。ボクは勝手に「北風小僧の寒太郎」を唄っているけど。

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田向商店のサイトへ
http://www.tamukaisyoten.co.jp/
市場魚貝類図鑑のアブラツノザメへ
http://www.zukan-bouz.com/sameei/tunozame/aburatunozame.html


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マルスダレガイ科エゾヌノメアサリのページを作成
http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/heterodonta/marusudaregai2/ezonunomeasari.html

掲載種 1823


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 エゾバイ科には膨大な種が存在する。そのなかの多くは「ぼら」とつくか「ばい」とつくかに分かれるのである。すなわちエゾボラ属は総て「ぼら」とつき、エゾバイ属は「ばい」となる。そしてそれ以外がややややこしい。今回の「つぶ学」の主役が「ぼら」なのか「ばい」なのかはっきりしてくれというネジボラ属の2種である。確かに木ネジそっくりな形であり、抜くかねじ込むかの差はわからないが「ネジなんだ」というもの。北海道では「竹の子つぶ」って言うけどむしろネジだな。そしてどうして「竹の子ばい」ではいかんのだろう?
 またなぜこれが別種なんだろうかと思うほどに2種は似ている。形が似ているだけではなく生息域もそっくり、味もそっくり。福島県相馬市原釜のおっかさんに「これは種類が違うんです」というと。「なにつまらねーこと言ってる。男のくせして、バカいうな」と返された。当地では「ほかがい」すなわちシライトマキバイ以外の貝という意味しかない。だからだろうか貝の研究者も「ぼら」でも「ばい」でもよかんべ、ということで和名をつけたようだ。
 これから底引きでずんずん水揚げされる。そして値も安いのでおでんに入れたり、刺身で食べたり、在り来たりだが煮つけて「食べてけろ」。

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ここにもネジヌキバイとネジボラが混ざっている。わかってくれっかな、だっぺ


市場魚貝類図鑑のネジボラへ
http://www.zukan-bouz.com/makigai/ezobai/japelion/nejibora.html
市場魚貝類図鑑のネジヌキバイへ
http://www.zukan-bouz.com/makigai/ezobai/japelion/nejinukibai.html


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カサゴ目を改訂

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オニカジカのページを作成
http://www.zukan-bouz.com/kasago/kajika/sonota/onikajika.html
シモフリカジカのページを作成
http://www.zukan-bouz.com/kasago/kajika/gisukajika/simofurikajika.html

キタノホッケのページを作成
http://www.zukan-bouz.com/kasago/ainame/kitanohoke.html

掲載種 1822


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ゲンゲ亜目を改訂

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タウエガジのページを作成

掲載種 1819


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 昨日はダウンしてしまって、メールの返信もブログの更新もできなかった。によって久しぶりに日記で誤魔化す。

 朝方目覚めたのは5時半過ぎ。たまっている画像の整理。沼津からの魚貝類の整理を一時間で終わらせる。
 朝食は沼津でも手作りにこだわる「カネマル笹市」の鰺の開き。キャベツとニンジンのサラダ、シロカサゴの煮付け、ご飯にワカメのみそ汁。

 8時前に外出。ヤマト運輸で北海道の荷物を受け取り、市場へ向かう。
 八王子魚市場には9時前に到着。少々遅い時間であるが荷は動いていない。三陸からのヤリイカ(ばら)が安い。
 八王子綜合卸売センター『市場寿司 たか』の前で紋別の『まるとみ 渡辺水産』の荷物を仕分けする。クロメヌケ、キタノホッケ、オニカジカ、シモフリカジカ、変なものに宿借りしているヤドカリ、でっかいヒトデ、ダンゴウオの仲間にあとは数え切れないほどの種。

 八王子綜合卸売センター、八王子総合卸売協同組合ともやや低調。市場内はすっかり正月商材が並ぶ。八王子の市場は正月の買い出しに関しては肉も魚貝類ももっとも安いところ。今の時期、つかの間の休息か。ただ忘年会を控える居酒屋が右往左往している。

『市場寿司 たか』でアカボウ、エゾヌノメアサリの握りを撮影。

 帰宅は10時。すぐに撮影にかかる。メバル属の同定が難しい。2時前にいったん中断して八王子綜合卸売センターへ向かう。『市場寿司 たか』でクロメヌケなどの握りを撮影。また帰宅して3時過ぎから撮影と画像整理。

 6時に中断してカジカの鍋。オニカジカがうまいのである。

 食後、画像整理。11時半まで。疲れ果ててダウン。

●本日の「市場寿司 たか」のは北海道のクロメヌケを始め、たっぷり特ネタがあるのだ


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マイワシの天ぷら

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 マイワシの天ぷらを初めて食べたのはいつのころだろう? 意外に高松の食堂だったように記憶するが瀬戸内でマイワシというのもおかしい。自分で手開きして衣をつけて揚げるというのは大学頃の自炊生活にでもやっていたこと。そして記憶をたどっていくと南小岩の定食屋さんに行き着いた。南小岩から鹿骨の方に歩き銭湯に通っていた。その帰りに小さな定食屋で夕食を食べていたのだ。たしかイワシの天ぷらがいちばん安かった。

 思えばボクの小岩時代は暗かったな。大学のカラーが灰色系統で、利用する電車が総武線、住んでいるのが夏暑く冬寒い海抜0メートル地帯、周りに緑は皆無なんだから十代後半の身には応えた。でも千葉街道近くの中華料理店で食べていた下揚げして作るレバニラ炒め、フラワー通りの炒り豆屋なんて今思い出しても涎がタラリである。

 さて定食屋ではイワシが2本、みそ汁にお新香がついていた。これではちょっと寂しいので、もうひとつ。沼津魚市場近くの『丸天』の天丼にはデカーいマイワシの天ぷらが甘いタレをくぐらされてのっている。ことほどさようにイワシは天ぷらにしてうまい。
 またイワシと言ってもニシン科の「いわし」と言われる魚では、カタクチイワシとマイワシとが天ぷらでは双璧。カタクチイワシの軽さ、香ばしさに、マイワシの芳醇、濃厚な味わい。どっちがうまいとは決めかねる。ただ夏から初冬にかけてはマイワシが安いし、冬到来ともなればカタクチイワシに軍配が揚がる。そろそろカタクチイワシに材料を代えなくては。
 そして昨今、ボクにとってイワシの天ぷらは酎ハイボールの肴(あて)となる。家族にとっては“おかず”なのでとても便利な一品でもある。また、夕食を魚にするか肉にするか、家族のことを考えるとある程度のタンパク質や必須アミノ酸が必要となる。その意味でもマイワシは優秀だし、育ち盛りに、またボクのような危険な年齢にはマイワシのドコサヘキサエン酸とかエイコサペンタ塩酸なんて大切なんだろうな。
 と言いながらマイワシの天ぷら3枚で酎ハイボールが3杯目である。これじゃ体にいいわけないよ。後に続くのは「わかちゃいるけど………」ですな。
 最後にマイワシ天ぷらの作り方を。まず手開きにして、背ビレや尻ビレなどをきれいに取り去る。ここに軽く振り塩。コショウを振るのも味わいに曲がでる。これに小麦粉をまぶす。小麦粉のなかに耳かき一杯ほどのカレー粉を入れるとカレーの風味はしないけど味わいに深みがでる。このコショウ、カレー粉などは好みである。他には天ぷら地に卵黄を入れる、マヨネーズを入れる、食用油を加える、カイエンヌペッパーを振り込む、青海苔を混ぜ合わせる、どうでもいいことだから好きにしてくれ。これを表面をカラッと、中をフワリと揚げる。うまいぞ! イワシの天ぷら。酒飲みすぎるぞ! 身体には気をつけろよ! いかりや長介みたい?

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市場魚貝類図鑑のマイワシへ
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 八王子魚市場の鈴木さん(貝などを扱う)が「これ珍しいよね」とフタを開けるとヤツシロガイがいっぱい。しかも安い。
「デカイね。これはデカイ。1個500(グラム)くらいある」。フタを見ると“大阪 八代”とある。そこに近所の魚屋がのぞき込んで「亜紀ちゃんね。〈雨雨ふれふれ〉よな」。すると別口のオヤジから「〈さかなはあぶったイカでいい〉だこらほい」。ボクはこういったのりが一番嫌いだ。ついでに八代亜紀も嫌い。ついでについでに「八代亜紀」は「やしろあき」であって「やつしろあき」ではない。
 ちょっと脇にそれずぎてしまった。演歌オヤジ達よ退散。

 この大阪産のヤツシロガイには詳しい産地が書かれていない。どうも大阪産とあるものにはこのような例が多い。大阪の荷主さん、早く是正して欲しい。大阪というのも広く、せめて泉佐野なのか湾奥なのかなど明記すべきだ。でも刺し網か底引きで揚がったとしたら岸和田か泉佐野だろう。大阪では何と呼ぶんだろう?
 東京湾富津などでは「ふたなし(フタがないので)」、意味不明に「すがい」とも呼ばれる。身を取りだしてそのまま切ってもほとんど生臭無がなく、また味わいにも欠ける。だから「素貝」だろうか。
 我が家ではきれいにもみ洗いして、適当に切り、辛子を利かせた酢みそであえる。貝自体に味がないので酢みそがいい。これは肴にして日本酒に合うのだ。
 また酢みそ和えという料理はクセのない貝、クセの強い貝にともにいいので市販の酢みそも家庭に常備してもいいのではないだろうか。簡単に作れるものだが、最初は手抜きしてもいい。
 さて場内ではまだ“八代亜紀現象”が続いている。八代亜紀ってヤツシロガイと違って人気があるんだなー。

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市場魚貝類図鑑のヤツシロガイへ
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●ヤツシロガイの呼び名を教えていただけるとありがたい。


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 市場にはいろんなものを仕入れてきて、どさっと売り払ってしまう。そんな店があって、八王子総合卸売協同組合「三恵包装」なんて最たるものである。そこには全国各地からの名産品もよくくる。そして見つけたのが「にいや蒲鉾店」の珍味かまぼこの詰め合わせなのだが、これが実にうまかったというか、むしろ面白かった。
 正統派の魚の味わいをじっくり精製仕上げたというのではなく、思いっきり遊んでしまったというのが鄙にある店としては「やるな!」と思う。ボクは小田原などでつくる蒲鉾にときどき違和感を覚える。どうにも上品で食べやすくはあっても、これ「お魚なんでしょうか?」というくらいに素の味わいが消え去っている。それならウニやカニ、アワビなんかを練り込んで「遊んでしまった」んだろうね。ちなみにカニとウニはなかなか蒲鉾になじんでよかったのだが、アワビはどうかな。むしろ「ちりめん」なんかの方がいいかも? でも珍味だから高級感に欠けるかな。
 またこれだけ面白い発想をする蒲鉾店ならスタンダードな竹輪(ちっか)や天ぷらもうまそう。ボク的には「そっち」に魅力を感じまするのじゃ。

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にいや蒲鉾店 徳島県海部郡美波町木岐535-1


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 9日のニュースで秋田西岸にハタハタの押し寄せてきたのが映し出されていた。八森、深浦、ハタハタに埋もれるようにして漁師さんが悪戦苦闘している。まさに季節がもたらす豊穣をかいま見たように思えた。そして翌日曜日には秋田の、なべ婦人から「ハタハタの便り」が届く。デッカイ雌、小さなオス。そうだハタハタはノミの夫婦だよな、と改めて思ったりした。こんなところにも遠来の荷物をあける楽しみがある。
 ハタハタは秋には山陰沖からとれ始め、秋田に接岸するのが冬となっている。もともと秋田の魚そのものであったのは、寒い冬を迎えて“前浜でとれる希有な魚”の到来をまるで神の贈り物でもあるかのごとくありがたがったところにある。昔は真冬の海、沖合で魚をとるなんてできることではなかったのだ。
 魚へんに「神」とはそこからくる。雷と結びつけて「はただ神」すなわりカミナリさんと結びつけるのも同じく豊穣への感謝かもしれない。ハタハタの語源を深く探ると文献が多すぎて明らかに迷路にはまるので置いておく。
 さて巨大な「ぶりこ(卵巣)」を抱えて秋田に接岸、その翌日に我が家に到来。このうれしさは、久しく季節感を失っていた身に「冬の到来」を告げる。

 家人と「しょっつる鍋」にするべきか塩焼きにするべきか悩んで、結局塩焼きにした。そして本日は当然、「しょっつる鍋」となる。
 ハタハタはワタもウロコも取らなくていい。まことに清らかな魚である。そのまま塩焼きにするのだけれど、腹には一物もない。レンガで遠火にしてじっくりゆっくり焼き上げる。すると雌の腹がパンパンに膨らみ卵がゴムまりのようになる。焼き上がると子供たちは卵に箸を向ける。雌の場合、卵に隠れて身はちょっぴりであるが、ボクはこの上品な白身も大好きである。身をほぐして“ぶりこ”をまぶして食べるのもいい。そしてかわって雄が焼き上がる。卵がないので、こちらは人気薄なのだが、はっきりいって白子のうまさはマダラに劣らない。その上、身の方も雌よりもうまいのである。「ハタハタのお父さんは小振りだけど“しっかりした働き者”だね」なんてむさぼるように食らう。檀一雄のエッセイに太宰治とハタハタが出てきて、それこそ二人の小説家がむさぼり食うというのがある。ことほどさようにハタハタは上品に食ってはいけない。鍋でも塩焼きでも飽食するほどに食らうのだ。
 関東とはいえ内陸部の多摩地区では本日もしんしんと冷え込んできている。さすれば秋田はいかがだろう? 酒が進みすぎて、どんどん眠気の波が襲ってくる。これぞ我が至福の時。
 秋田のなべ婦人、ご主人に感謝したい。

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掲載種 1818


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 世に知られていない美味はまだまだあるもんだと改めて思い知らされたのがクサウオである。関東の市場では「むきどんこ」と呼ばれている。皮を剥いているので「どんな魚かわからない」となかなか魚屋さんにも受け入れられていないようだ。
 これがカサゴ目クサウオ科のクサウオなのである。ボクが近所の魚屋に「クサウオという魚なんです」と教えると「臭いから“臭魚”だろ」なんて失礼なことを言ってくれるが「草色の魚」であるので「草魚」である。これは丸のままを見ると一目瞭然である。
 今回原釜では地元での「みずどんこ」の食べかたさ聞いてきた。すると浜のおっかさーが
「これはね三枚におろすだっぺ。そうして生のまま切るの。それを大根おろしで食べるの」
 これに回りのおっかさ、びっくらこくほど美人の娘さーが「うんだ、うんだ」とうなずいているのだ。
「後ね。これにポン酢かけて食うのがうまいんだっぺ」
 ポン酢は某メーカーの●ぽんがいいとか「ちがうべさ」、昆布の入ったのがいいとか言うが「市販のもので充分だ」と言うことだ。その浜の女たちのほっぺが輝くほどつやつやして柔らかそう。どうも「むずどんこさ、食べてるからこうなるんだっぺ」というのは本当らしい。
「後はね。干物にするとか、煮付けもいいだっぺ」
「そうだ卵もね。醤油漬けにするとうまいんだ」
 これを原釜八巻水産(ヤ印)に分けてもらいことごとく試してみたが、すべて絶品であった。うまいぞクサウオ。

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 7日になったばかりの高速道路、なんとBMWの四輪駆動にのって常磐道に入る。オフロードカーとはいえ、車内は無音、するすると土浦、水戸、福島に入り、いわき市、楢葉、原町と来て、高速をおりる。
 運転するのは「ヘンリーブロス」の江嶋力さん。飲食店や市場の経営する会社の若い社長である。江嶋さんは飲食店、魚の流通にたずさわるなら「水揚げ地をしっかり見ておこう」という考えを持っている。ボクはそのお供としての福島なのだ。そして相馬市に入り懐かしい原釜港の灯りが見える。
 午前3時過ぎ。港には刺し網の船が帰って来つつある。マガレイ、マコガレイ、アイナメが生きていけすに入れられる。その脇には「みずどんこ(クサウオ)」。5時になると底引きの選別が始まる。こちらでもカレイ類が膨大である。それにミズダコ、ヤナギダコ。確か原釜はタコの水揚げ日本一ではなかったか。
 ケガニ、ホタテ、マダラにスケトウダラ。マサバにゴマサバ。
「今日はね。底引きは少ないんだ」
 相変わらず魅力的な浜の女が残念そうに教えてくれる。それでも様々な魚貝類が競り場を埋め尽くす。驚いたのは刺し網のマサバである。1キロを超えるのがゴロンゴロンと並んでいる。
 刺し網船は後から後から着岸してくる。「みずどんこ」をむくおっかさん。
「みずどんこはどうやって食べたらいいでしょうね」
「そうだっぺな。大根おろしで食べるんだ。刺身に切ってさ。おろしで和えて」
「生で食べるんだ」
「だす、だす」
 岸壁の向こうに入ってきたのは「ほっき」の船。船の舳先のカゴをおっかさんが乗り込んで水揚げする。
 そのほっき(ウバガイ)のかたわらではナマコを洗っている。そしてナガバイ、ネジヌキバイ、エゾボラモドキにチヂミエゾボラ。
「これは“ほかがい”だ。ほっき、とか長いつぶ(シライトマキバイ)の“他”って意味だな」
 江嶋さん共々、朝3時過ぎからの市場巡りでぐったり疲れ果ててしまう。そして休息室に逃げ込むと、ここにも浜の女たちがいる。どうして原釜の女たちは美人揃いなんだろう。これは江嶋さんも驚いているようだ。銀座黒尊のまわりには化粧臭いお水なお姉さんがたも大量にいるが
「ここにくると全然銀座の女性に魅力を感じませんね」
 独身の江嶋さんの女性観を浜の女たちが変えつつあるのかも。
 そこでいろいろ地元の仲買さんにお魚を買ってもらって11時過ぎには原釜を後にする。クルマの後ろには丸々太ったマサバをはじめ大量の荷が積まれている。
 外気温は零度前後、凍えながら8時間近く港にいたわけになる。
「疲れたね」
 ふとため息をもらすと、江嶋さんは疲れを知らぬげに常磐道を南下するのだ。

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銀座黒尊
http://www.kuroson.com/index.html


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 現代の魚貝類を語る場合、どうしても避けて通れないのが輸入魚である。冷凍技術の発達により鮮魚、または魚という概念を脱して商材となった感がある。そのなかでも世界的に人気を集めているのが白身である。古くは北半球のマダラ、また南半球のタラ科のメルルーサ属。これらが輸出入商材として世界中を駆けめぐっていた。そして近年脚光を浴びているのがナマズである。
 さてボクの前にあるものは日八王子の仲買「フレッシュフード福泉」に大量に並んでいたもの。マルハがベトナムから輸入したもので、魚の名前がカンボジアでの呼び名「バサ」である。もともとはアメリカでよくナマズが食べられているのに目をつけたベトナム戦争後移住したベトナム人が輸入し始めたもの。アメリカでは国内でのナマズとの価格差から問題となり、輸出軋轢を起こしている。またそのためなのか今では主な輸出先がヨーロッパへと移りつつあるという。

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 この「バサ」の学名はPangasius bocourti。非常に大型(250キロにもなるという記述がある)になる種であり、メコン川、カンボジア・トレンサップ湖などが原産。カンボジアでは絶滅の危惧もあるほど減少している。また非常に重要な食用魚であり最高級魚でもある。これを主にベトナム・メコン川で養殖している。餌は海産の小魚など。養殖物は非常に脂の強いものでフィレにするときにこれを大量に除去、また骨も取り去っている。ベトナムではこの脂(油)をディーゼル燃料として利用する計画もあるようだ。
 この淡水での大型ナマズは知らず知らずのうちに我らの生活の中に入り込んでいるようである。例えば市販の弁当での白身フライ、また冷凍のフライ材料など。またフィレオフィッシュなどの材料としてマクドナルドが目をつけているという報道も見受ける。
 その味わいであるがナマズという既成概念を持ってしても抗えないほどに美味である。言うなれば淡水魚とは思えない淡白さ、そして身質のよさである。主な料理法はフライ、もしくはムニエル。生の状態でふわりと柔らかいのが、熱を通すことでやや締まるが、それでもふんわりとした食感は残る。これがとても心地よい。また身にはまったく臭みがなく、微かに甘味があり、均質にとけ込んだ脂が感じられる。

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 さて、この「バサ」を調べるのに行き詰まって、結局教えを受けたのが水産物などを輸入販売しているメイプルフーズである。メイプルフーズはもっとも早くからベトナムでの水産物の開発に取り組んでいたとのこと。そしていろいろ聞いていく内に白身用のナマズは「バサ」から「チャー(もしくはチャ、tra、学名Pangasius hypophthalmus)」にかわっているのだという。それは身質的には「バサ」とかわらない上に養殖期間が短いために採算性が高いのだという。すなわち白身魚として大きなウエートを担いつつあるナマズで「チャ」も出来るだけ早く食べてみないとダメだということだ。


●メイプルフーズの矢野さん、山口さんにはたいへんお世話になりました。また「チャー」のフィレはメイプルフーズにて入手可能である。(注/主に業務用)
メイプルフーズ
http://www.maplefoods.co.jp/


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 和歌山の魚々ちゃんは魚屋さんである。しかもうら若き美人さんなのであーる。女性が魚屋にいる利点というかよさはなんだろう? と考えるに食への好奇心の強さと広さではないかと思われる。どうもやり手の研究熱心な男たちでもてんで食に対しての探求心や、魚自体を知りたいという欲求にも欠けるのが多すぎる。彼らにとっては食べ物も魚も商品ではあっても愛の対象物ではないのである。そこから生まれてくる魚屋なんて、うまいもん好きのもとめる「+アルファ」があるわけがない。楽しさがない。この楽しさを生み出すのが食への好奇心なのだ。
 魚々ちゃんが和歌山で魚貝類の水揚げでは「いちばんおもっしょいところです(面白いところ)」と言うのが有田(ありだ)である。有田市はミカンで有名なところ。東京に暮らしていると魚貝類が豊富なところとは結びつかない。
 有田に魚を見に行く(仕事)ついでに彼女はなにをしてるんだろうね。男ならただ魚を仕入れ、せいぜい飯でも食って帰ってくるのが関の山。それがうまいもん好きなら当然、有田のうまいもんをいろいろ探してくるのだ。
 そして魚々ちゃんが送ってきてくれたのが「嶋田商店」の“えびつまみ”というもの。
 お礼の電話をかけると
「あっれっ、おいしいでしょう。一度食べてみて欲しかったんです。包装紙もかわいいし、見た目の楽しいでしょ」

 実を言うとこのとき何気なく“えびつまみ”を一袋あけて、ほんの十数分で空っぽにしてしまったところだった。どうして手がとまらないんだろうね。香ばしい揚げたせんべいにエビの風味がふわり。塩味のなかに甘さが感じられて、後味が軽い。後味が軽いんだけど「尾を引く味わい」なんだろうね。やっぱり手が止まらない。やめられない。
「いや魚々ちゃん、このうまさにはまいりました」
 また和歌山へ行きたいね。

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嶋田商店 和歌山県有田市宮崎町2130-1
http://www.ebisenking.com/tokutei.html


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 市場魚貝類図鑑「寿司図鑑」をどのように作っているのかというと、「市場寿司 たか」の開き時間に魚を持ち込む、それをたかさんが握る、食べてみる。当たり前だろ、と言われそうなくらいに当たり前のことを繰り返しているのだ。そこに登場するのが市場の住人たち。本日の出演は八王子綜合卸売センター「平成食品」のシンゴちゃん。けっしてスマップ(「SMUP」ではない。でもこのアルファベット間違っているかな。ぜんぜん興味がないしあんまり見たことがないのでたぶん初めて文字として書く)のシンゴちゃんではない。だいたい似ていないらしい。
 この男の特技がたまに「信楽焼の狸」になること。ある日、「平成食品」の前を90歳だというお婆さんが通りかかり、シンゴちゃんを見た。そしてポツリと「見事な狸さんだこと」と言って拝んでいたのを見ている。そいつがまさに目の前で「信楽焼」の置物のようになっているのだ。
「こら起きろ狸」
「あああのさ、これ何」
「メアジだろ」
 コヤツ勝手に顔を出して寿司図鑑につくったメアジの握りを、勝手に食ってしまったのだ。
「うまいのか」
「あのさ、メアジってどんな魚かな」
「目が大きなアジだな」
「アジなんだ」
「どんな漢字書くの」
「目はこれ(たかさんアッカンベーをする)」
「目が飛び出るくらいにうまいから目鰺というわけよ」
 これはボクのウソです。
「そうなんだ。オレこんなうまい魚食ったのは初めてだ」

 実を言うとたかさんもボクもあまりのうまさに驚いていたのだ。このメアジ、平塚の定置網で揚がったばかり。水揚げを見に行って、こんなに幅広のメアジも珍しいなと「川長 三晃丸」の磯崎さんにわけてもらった。今年一番の不漁で魚が少ないなか輝くようなメアジは貴重なもの。まったくありがたいやら申し訳ないやら。「磯崎さん、ありがとう」。

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 メアジに関しても四季を通して食べてみると明らかに旬は晩秋から冬であるのがわかる。今年の夏、秋口のものは明らかに「ダメだな」とたかさんとメアジの評価を下げていたのだ。まずいわけじゃないが脂から来る甘味に欠けているのだ。それが今日のメアジは値千金。脂が持つ甘味の心地よく口に広がって、そこに青魚の風味がフワリを浮き上がる。やはり脂のためだろう、口の中で「とろけるよう」なのだ。念のためにマアジも握って食べ比べてみたが、マアジは明らかに旬から外れている。メアジの敵ではないのである。
 シンゴちゃんもアオリイカ、ヤリイカ、ネジヌキバイと豪華な朝ご飯を満喫して帰っていった。

 さて本日の「市場寿司 たか」ではうまいメアジにアオリイカ、そのたいろいろ特ネタが楽しめるのだ。またシンゴちゃんの冷凍肉屋「平成食品」は毎日特売だぞ!


市場魚貝類図鑑のメアジへは
http://www.zukan-bouz.com/aji/aji/meaji.html
八王子の市場については
http://www.zukan-bouz.com/zkan/sagasu/toukyou/hatiouji/hatiouji.html
市場寿司 たか
http://www.zukan-bouz.com/zkan/zkan/rink/gest.html


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 オホーツクの水産会社を探していた。特にカラフトエゾボラやシマホッケ、ツノガレイなどが手に入らないので困っていたのだ。多くのオホーツクの水産会社が箱に会社名が入っていない。または「鈴木シーフーズ」のように連絡先がないなどで手がかりがつかめなかったのだ。

 それでは北海道に行けばいいじゃないか、と思われるかもしれない。でも我が家のように子だくさんだとなかなかお父さんの旅費が出ないんですね。我が国の箱もの、コンクリート行政のなにが悪質かというと交通費や電気代、その他基本的なものを凄まじく高騰させたところにある。だから地方が活性化したかというと真逆なんだから不幸だな。そしてそれを推進した行政や大手ゼネコンだけが潤っている。ボクたちはそのツケを払わされているのだ。
 閑話休題。
 そしてある日、八王子魚市場で見つけたのが「丸富 渡辺水産」の箱。紋別とは願ってもない。そこでずうずうしく電話をかけてみた。そして我がサイトにオホーツクの水産ぶつをもたらしてくれそうである。これがうまくいけば我がデータベースも大躍進となる。

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箱に入っていたのはカラフトエゾボラとヒノキの肌合いのようなエゾボラ。まさにオホーツクならではの巻き貝である。

まるとみ
http://marutomi-kani.com/gotyumon.html


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 和歌山の魚々ちゃんから楽しいお魚セットが送られてきた。ボクはこれを「魚々便」と呼んでいる。鮮度や種類によって「市場寿司 たか」で握りに仕立てたり、また煮付けに、塩焼きにしたり、忙しい中でも楽しい時間を持つことができた。そのなかにまとまってあったのがクラカケトラギスだ。なかでも小振りのを集めて天だねに仕込んでいく。

 トラギスの仲間は比較的温かい(水温)浅場からやや深海までの砂地に棲息する小魚。大きく育ってもせいぜい20センチ上。砂地でせっせと環形動物や小エビを食べて生きている。遊魚船などでの釣りでもお馴染みだし、底引き網や定置網にも入る。
 食べると「うまいよな」とは漁師のご意見、また釣り師でもベテランやうまいもん好きには評価が高い。でも流通の場では見向きもされなかった雑魚のひとつ。それがこのところ築地でも見かけるし、それなりに値を付けている。

 話はかわるがトラギスはどこか人間的な顔をしている。例えばオキトラギスはずばり悪女。こんなに典型的な悪女顔は最近女優さんにもありはしない。でもこのドハデさの裏には情の深さを秘めているのかな。それに反してクラカケトラギスは向学心に燃える地味な好青年である。でもこんな真面目そうな裏側には社会党の浅沼委員長を暗殺した少年(1960年の話)のようなすごみも秘めていそうだ。ぼうずコンニャクの提案なのだがトラギスに限ってはじっくり顔をながめて欲しい。本当にどれほどながめても見飽きることがない。

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まさに絵に描いたような好青年。でもつき合いたくはない。食べたいけど

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濃艶、ドハデ、二番落ちした娼婦、例えるとこんなところだろうか? 永井荷風なら「おもしろかるべし」とでも書きそう


 さてそんな木訥とした顔つきは関係ないだろうが、じょじょに天ぷら種として注目を浴びてきている。きっと釣り人には「おそいよ」と思われるだろう。この魚の評価はたぶん釣り師の方が先に上げてきていたのだ。築地には天だねだけを扱う仲卸があるのだが、そこでも見ているので「キスがなけりゃトラギスにするか」と天ぷら職人に新しい常識感が生まれるのもすぐだろう。

 さて話をボクの手元にもどす。高温の油でトラギスを揚げていく。トラギスは前日に開き、少し水分を抜いている。キスよりも背ビレ付近のウロコや小骨が強いので注意が必要だ。この天ぷらのうまさよ、いかに例えるべきか? 間違いなくシロギスに劣らずであるし、また皮の香ばしさはシロギス以上だろうか? 甲乙つけがたい味わいだと思うがどうだろう?

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 この和歌山の「魚々便」こんど我がサイトで通販を始めて見たくなる。いかがでしょうかね「お魚好き」の皆さん。和歌山の雑魚、小エビなどの「魚々便」、我ながら面白そうな企画になりそうだ。

市場魚貝類図鑑のクラカケトラギスへ
http://www.zukan-bouz.com/suzuki/toragisu/kurakaketoragisu.html


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タラバガニのページを改訂。蒸し方などを追加

市場魚貝類図鑑のタラバガニへ
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