おおつごもりとなって、今年を振り返るに、まったく息苦しいほどに右往左往、また悪戦苦闘の日々であった。たったひとりで世に流通する。また人と関わる総ての水生動物をデータベース化してみたいと思ったのが、ほんの15年ほど前のことなのだ。それ以前は模索の日々であった。ただただ魚貝類のことを調べて、それをワープロに打ち込む。またデジタル以前なのでポジフィルムに記録する。このデータベース化はまことに楽しいもので、スポーツにも遊技にも、まったく無関心なボクの唯一の楽しみとも言えるもの。それがここ2,3年大きな帰路にある。なぜならば明らかに一人で管理する限度を超えてしまったからだ。
関係ないことだけど昨年福島に行った折りに地元の女性に「さかなのことを調べているんです」と言ったら「サカナ君みたいね」と言われた。これが非常にショックだったのだ。実を言うとボクは生きているものにはほとんど興味がない。例えば磯遊びは大好きなのだ。多様な生物が見られるし、手に取ることが出来る。また磯というのは人が普通に生活していながら(これがボクには大切なこと)接することの出来る自然なのだ。それに対してテレビなどで映し出される熱帯の海の明らかに景色というものみはぜんぜん興味がない。水族館というところやマリンパークなども退屈で無味乾燥なところでしかない。またボクのやっていることは明らかに理科系ではなく文化系の範疇になる。あえて言えば民俗学的な方面だと思う。別の言い方をすれば人生と水産物の関わりを調べている。大好きな花森安治の「暮らし」という言葉を、新年から多用するつもりなのだが、まさにボクのデータベースの要はここにある。だから図鑑的な知識は中心にない。敢えて言うとそんな地味な存在のボクから見るとサカナ君というのはタレントとしての才能と優秀な記憶力を持ち合わせていてうらやましい存在だが、まったく分野の違う世界にいる。たぶんボクが彼と会ったとしても会話が弾まないだろう。まったく接点がない。
またボクの作り出しているデータベースの特徴は「暮らし」で表したいと思うごとく、非常に多様である。結局食べ物が中心とはなっているが、実を言うと魚貝類だけではない。野菜のデータも数百品種あり、また街のデータも数え切れないほどになっている。この「暮らし」と「市場魚貝類図鑑」をもっと接近させるのが新年からの新しい課題。新年にはもっと大きな壁にぶつかりそうだ。
「市場魚貝類図鑑」というデータベースを作り始めて、6年目となった。ページ数は実を言うと把握していない。たぶん2千ページ以上、そこに周辺記事、周辺雑記があり、ブログが6つある。このブログはボクの興味の範囲を総てデータ化しようと思い立ったのが、10年も前のことなのであり、それをそのまま作るなりブログ化すればいいという安易な気持ちで始めてすぐに行き詰まってしまった。どうもボクは自分自身の作り出したブラックホールに入り込んでしまったようだ。
そんな年となってしまったが、それでも多くの収穫を得ている。特にここで明記したいのが徐々に増えつつある無償の協力者である。まことに貧乏極まりないのでなにひとつお礼もできないでいる。ここに改めて感謝の意を伝えたい。各地からの珍しい魚貝類、また情報を寄せて頂いて、それが我が図鑑の大きな進展となっている。その荷物や情報の中に長年、疑問としていたことの多くが理解でき、また新知識ともなった。また思わぬ言葉が新たな水産物への興味を生み出した。また「寿司図鑑」の撮影かん数がやっと500種を超えた。300種を超えたあたりから行き詰まりを感じていたのがやっと半ばに至ったといった感がある。それと「市場魚貝類図鑑」総ての文章をまったく書き直すという作業を始めるところまで行き着けた。これまではとりあえず、掲載種を増やす方向性であったのがやっと転換できたのだ。
そして新年の抱負だが、ただただデータベースを充実させること、とりあえずは総てのページを改訂書き直すこと。そしてそこに「暮らし」というボクが本来中心にしたいと思っている主題を前面に押し出していくこと。これにつきる。
最後に今年はまことにお世話になりました。また新年からは魚貝類や野菜その他、何気ないものも含めて多くの情報をいただけたらありがたいと思っている。2007年もなにとぞよろしくお願いいたしまする。(五十路のぼうずコンニャク記す)
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/