食べるエビ・カニ学: 2009年1月アーカイブ

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 料理は簡単な方がいい。
 常々そう思っているので、お手軽で便利な食材はどこを歩いていても、すぐに目に飛び込んでくる。
 安いウルイを築地場内やっちゃ場で見つけた。
 ときどき大量に安く出回るベニボタンは地元八王子にあった。
 これに常備しているとんぶりを合わせて10分以内にできる超簡単サラダをつくる。

 さてまずは材料の説明から。
 ウルイ(オオバギボウシ)は ユリ科の植物で春先の若い葉を食べる。
 山菜としては有名なものだが、似た植物に毒のあるコバイケイソウというのがあって、「間違って食べて中毒」というニュースで有名だ。
 三多摩地区の日当たりのいい場所に生えているウルイも、最近ではなかなか取りに行けなくなっている。
 でもありたがいことに山形県などから、栽培したものがたっぷり入荷してくるようになった。
 太陽光を遮断し軟化栽培したもので、ちょっと香りは薄いものの味はいい。

 とんぶりはホウキグサの身をゆでこぼしたもので、袋詰めされてスーパーでも普通に売られている。
 ボクが30年以上前に上京したときに、最初に見つけた面白い食べ物がこれで、以来なんとなく常備しているもの。

 ベニボタンは「紅ぼたん」という商品名で標準和名ではない。
 ややこしいいい方だが、パナマ、エクアドルなど中米あたりに生息するミノエビの仲間。
 海外のエビなので標準和名がなく、商品名を使うしかないのだけど、和名をつけるなら、「●●ミノエビ」とすべきなのに、“売れそうな名前で出ています”というちょっと面倒な状況にある。
 ただミノエビの仲間はみな味がいい。
 当然ベニボタンも、味はいいし、知名度が低いので安いという、まことに庶民にはありがたいものなのだ。

 こんなことを書いている最中に料理は進行している。
 たっぷりお湯を沸かす。
 脇でマヨネーズにとんぶりを放り込みかき混ぜて、レモンと塩コショウで味を調える。
 鍋にお湯を入れて、まずはウルイをゆでて、水に放り込みあら熱をとり、ザルに上げておく。
 その同じお湯で今度はベニボタンもゆでて、こいつも水に落として熱を冷まして殻を剥く。
 後はウルイを適当に切り、エビと合わせて、とんぶりマヨネーズをかけるだけ。

 見た目も悪くないし、エビは甘い、ウルイも甘みがあって、とんぶりのプチプチに太郎はマヨラーでもある。
 お父さんの酒の肴としても優秀であるからして、またうれしからずや。

 こんな料理を作ることで主夫は、忙しいなかに時間を稼ぐ。
 ことほど左様に、今を生きるというのは慌ただしく忙しいのだ。
 最近有識者という無知なヤカラが、「最近の主夫(婦)は暇なクセに料理もちゃんと作らない」なんてことを言う。
 それに踊らされて「料理の知識も、食材の知識も低いから教えてやろう」なんて、もっともっとおバカがいるから困ったものだ。
 これを食育というのだけど、ボクとしてはコヤツらの食材の知識や現状認識度を調べてみたい。

 やっとできた時間、家族から離れて佐藤雅美の小説を読む。
 ボクが佐藤雅美の小説を読んでいるときは、間違いなく実生活では絶不調に陥っているとき。
 今年はどうしてこんなに、ついていないんだろう。

2008年5月29日
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ベニボタンへ
http://www.zukan-bouz.com/ebi/minoebizoku/panamaminoebi.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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 アカイシガニを築地など関東の市場で買いたいと思っても、まず無理だ。
 これこそ産地でなければ手に入らないカニ。
 例えば専門の漁もなく、サザエなどの刺し網や定置網に混ざり込む。
 小振り(やや)であるし、身が少ないために商品価値が低い。
 だから漁師さんの扱いも邪険で、ときに刺し網にこんがらがってしまうと、いきなり足で踏みつぶしたりする。

 静岡県沼津市沼津魚市場には毎日のように水揚げがある。
 ただしいつも5、6匹前後。
 1月18日の日曜日の寒い寒い朝に見つけたのも、そんな一箱で、値段は書くのも恥ずかしいくらいだ。
 5匹入って、オマケの余計に小さいイボガザミまでついて重さが400グラムしかない。

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 ボクが近縁種のアカイシガザミかも知れないと真剣に見ていると、顔見知りの仲卸から、
「そんなもんみそ汁にしかならんだら、なに見とるんだ」
 なんて声がかかる。

 これを買い求めてきて、さっそく塩ゆでにする。
 まあ、大方の方はみそ汁にするに違いないのだけど、アカイシガニの身はうまいのであって、みそ汁ではその真価は問えない。

 久しぶりに食べるアカイシガニはやっぱりうまい。
 うまいけどつくづく面倒である。
 小さな身をせせりだして、せっせと食うのだけど、口の中にはカニのみ独特の旨味が強く残る。

 このような地元だけで食べられる味覚を、東京など都市部の居酒屋などでも出してはどうだろう。
 近年品書きを固定化するところが多くなって、それは利潤を追求する限り仕方のないことだろうけど、まことにつまらない。
 「アカイシガニ塩ゆで2名様限り」なんて壁にあると、それだけでうれしくなるのだけどねー。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、アカイシガニへ
http://www.zukan-bouz.com/kani/gazami/akaisigani.html
http://csi.or.tv/tsukiji/kb/rb.cgi 
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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 「いちばん好きなエビはなんですか?」と聞かれるとする。
 そしてよーく考えてみると、いつも違う種類のエビが頭に浮かんでくる。
 主に生で食べるタラバエビ科(甘エビの仲間)ばかりが浮かぶこともあり、輸入もののロブスター(ウミザリガニ)なんてこともある。
 やっぱりクルマエビに限る、と閉鎖的な思いに駆られることもあるから不思議だ。
 ことほど左様にボクの味覚力なんてあやふやなのだ。
 最近ではますます、食い物を食らうに、まっさらさらの素の状態でいたいものだと思っている。

 固定的な考え方に凝り固まった「食通の知識」のなんと愚かしいことよ、バカバカしいことよ。
 世に言う、食通のなんと存在理由の薄いことか。
 ときどきテレビでもっともらしい話を聞いていると、世も末だななんて考えますな。
 食べ物は、できるだけ、本能のおもむくままに味わっていきましょうよ。

 その本能が歓喜されたのが島根県浜田市浜田公設水産物仲買売場でかった魚貝類。
 浜田漁港の前にある無骨な建物で、地元でも知らないという地味な市場だ。
 その知る人ぞ知る市場で買ったのが大量のウチワエビ。
 トロ箱いっぱいが3千円ほど。
 なかに入っているウチワエビの数なんてとても数え切れない。

 これを買い求めて、自宅に送って、さすがに多すぎるのであちこちに配り。
 我が家にある鍋を総動員。
 塩ゆでが山のようになってしまった。
 これをかたっぱしから食べていくのだけど、食べても食べてもうまい。
 ウチワエビは比較的とれる量が少なく、どちらかというとローカルな味だろう。
 水揚げ港のある街の人がこっそり食べている。
 築地で見る回数からしても、地方地方の隠れ味。
 それにしても、この甘味と芳醇な甲殻類の香りはなんぞや。

 大山を制覇して、築地で浜田の数倍の値段で見つけても、また買ってしまおうか、と思ったほどだからウチワエビはうまいね。
 厳冬期になって、浜田でとれる魚も移り変わってきている。
 そう言えば冬の方が浜田にあがる魚の魅力は大きいのだった。
 浜田市の魚に興味がある方は市役所で聞いて頂きたい。

浜田市
http://www.city.hamada.shimane.jp/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ウチワエビへ
http://www.zukan-bouz.com/ebi/semiebi/utiwaebi.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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