今回の原釜へは日本全国から魚貝類を取り寄せて、新しい流通の世界を造り出そうとするヘンリーブロスの江嶋さん、石川さんにのこのこついていく形である。すなわちお二人の産地を見て回る旅についていったのだ。ヘンリーブロスの起点のひとつ、銀座「黒尊」を出発したのが深夜0時過ぎ。さすがに銀座といえどもこの時刻は華やぎが冷めて、そこに雨が降りしく。
底引き網の船は早朝5時半、すでに入船していた
常磐自動車道、国道8号線と遠路原釜に到着したのが5時半のこと。すでに底引きの大型の船が着岸していて、元気いっぱいの原釜女たちが魚貝類を選別している。そのカゴには膨大な甘だこ(ヤナギダコ)、ヤナギムシガレイ、マガレイ、マコガレイ、ヒラメ、ウスメバル、アイナメ、カナガシラ、ホウボウ、マアナゴ。場内のあちらこちらにどろっと広がって置かれているのがマナマコ。なんどもなんどもぬめりをとる作業は繰り返されても、まだドロリとしている。これはどうも干しナマコになるのではないか? もしくは切りナマコだろうか?
甘だこはザルカゴに入れられ足でなんども踏みつけられ海水でぬめりを取る。かなりハードな作業を美しい女性がもくもくとこなしている。来るたびに思うのだが福島の港で見かける女性はみな魅力的。
このなかにマダラ、ケムシカジカ、とどき(サブロウ)、マフグ、ヌマガレイ、マツカワガレイ、ホシガレイ。大きなアカムツがあるかと思えば、ぽつんとアマダイ、
原釜では巻き貝は総てが「つぶ」となるのだが、この日見られたのはヒメエゾボラ、チジミエゾボラ、ヒメエゾボラモドキ、シライトマキバイ、ナガバイ、ネジボラ。いつもたくさん落ちているチシマガイが今日は1個だけ、ホタテガイが少し。スルメイカはやはり少なく、形のいいのはすでに発砲に並べられている。
原釜の底引きも6月一杯で2ヶ月の禁漁に入る。言うなれば最盛期ではないのだが、いちばんたくさんの底引き船が入船するのが金曜日である。7時過ぎにはだだっ広い底引きの競り場が隙間なく埋められてしまっている。
その端っこに、ほっき(ウバガイ)の水揚げが始める。ほっきの船がもどるたびに大急ぎで貝殻にキズのあるもの壊れているのを選別される。そして壊れているのはこれまた大急ぎで貝殻を剥かれる。この作業はなんだか見ていて楽しそうだ。老いも若きも、男女関係なく黙々と貝殻を剥いているのだが、そこには穏やかな笑顔が浮かんでいる。今日は豊漁なのだろうか?
L字形の縦長の広い部分に当たるのが底引き網の選別競り場だとしたら、底辺のややこぢんまりした場所に入ってくるのが刺し網の小型船。こちらには活けのマコガレイ、マサバ、いなだ(ブリの幼魚)、ヒラマサ、ガンギエイの仲間、マガレイ。
底引きの魚の競りが始まっている。競りは並んだカゴに競り人が番号つきの紙に値段を書いて入れていくもの。魚貝類を整理、並べる喧噪から、競りが始めると底だけに静寂な時間が訪れる。競りの結果も入れた値の紙をたんたんとひっくり返して終了となる。競りが終わると、すぐに片づけられ、また後から入港してきた船が魚貝類を並べていく。
そのなかで競り場の端っこに集められてきたのがアブラツノザメ。これを剥きざめにして出荷するのだ。
漁港には11時前まで外は大雨。慌ただしく南下する国道は深い水たまりが出来てしまって、危険極まりない。また睡眠不足で疲れはピークとなっている。楢葉町まで来て、「道の駅ならは」の温泉につかって一休み。銀座まで帰り着いたのが5時前である。疲労困憊で有楽町に向かう途中、ちょいとガード下でいっぱい。
帰宅は7時過ぎとなる。疲れたぞ!
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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