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水産棟に入ると、競りは終了している。残っている物が積み上げられることもなく、きれいに片づいた先に仲卸の灯りが見える。
仲卸の数は39、これは東京足立市場に近いのではないか、どこかしら似た雰囲気がある。また足立市場は青果が分離して活気が落ちたと言われているが、こちらはまだまだ市場内に喧噪感があって賑やかだ。
仲卸の作りは最近のものと違い、あまりはっきりした仕切がない。だから床に台を置いて、平面を作り、そこに荷が並んでいる。その平面的な一面が一店舗ということになる。
とにかく手前から見て歩く、ウニ、むきえび、パック詰めのアサリに鮮魚も豊富である。後々わかることなのだが、場内の仲卸はみな店舗が大きく、取り扱う水産物の種類も多い。
ヤリイカに九州のチダイ、首折れサバ、養殖マサバ。また鹿児島県産のクロホシフエダイがあるのが面白い。この一店舗目の水産会社は新潟県佐渡島に本拠地があるのだという。
見て回るどの店舗も規模が大きく、置いてあるものは多岐に渡る。鮮魚、塩干、惣菜、冷凍物、練り製品などが雑然と(そう思える)並んでいる。すなわち一店舗でほとんどのものが揃うのだ。
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きんき(キチジ)、ニシン、マコガレイに青森産のなめたがれい(ババガレイ)、北海道からの八角(トクビレ)。無造作に床に置かれた魚を見て歩く。
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安達さんに案内されているとはいえ、店と店の区分がわかるようでわからない。
細い通路を通り抜けると、いきなり目に飛び込んできたのが大きなアカムツで1キロ近くある。値段がキロ当たり13000円というのが凄い。「このアカムツすごいね」というと千葉県内房にある竹岡であがったものだという。
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航空便のマダイ、東京湾産でも最上級のスズキ、値段もさることながら、こんな店があるというのは柏のすごいところだろう。
千葉県は水産県でもあり、アサリ、ノリ。東京湾のスズキにメダイにマダイ、外房の「いなだ(ブリの若魚)」、イセエビにアワビ類と豊富である。年間を通すと地物とも言えそうな魚が見られるはずだ。
また各店舗に置いてあるシジミのほとんどは茨城県涸沼産である。そこに青森県産があって、西日本の島根県産などは見られない。
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場内を歩いていると、店頭にずらりとマガキ、イワガキが並んでいてなかに島根県隠岐のものがある。これが『柏渡力』という店。
ボクのバッグに「ぼうずコンニャク」というのを見つけたのか、よく見てますよと声をかけてくれる。
この店の実力など築地場内にあっても引けを取らないものと見受けられた。
見て回ること、1時間半ほど。魚の少ない時期なのに、思った以上に荷がある。また高いもの、安いものと多彩なのもいい。
不思議なのは鮮魚店の数に比べてマグロ屋のが少ないことだ。置いてあるマグロは本マグロを始めて、なかなか素晴らしいのだけど、この市場で目立つのは鮮魚である。
塩干・惣菜の店を見ているとさすがに千葉県産のものが多い。ここでの主流は銚子産の干物類だ。そこに先ほど旅した島根の海産物を探すがなかなか見つからない。唯一見つけたのが浜田市の「山がれい(ヒレグロ)」の干物である。
市場から出ると遙か向こうに高層マンションが幾棟も建設中となっている。あれは明らかにつくばエキスプレス柏の葉キャンパスあたり。この『柏市公設総合地方卸売市場』にもっとも近い駅である。
今、見てきたあまりに有機的な市場の情景と対照的ではないか、考えてみると現代人はあのように無機的なものしか作り出せないようになってしまっている。その無機質な人間が、無機質な言語である「食育」なんて言葉を作るのだ。まったく愚か者め! せめて時代の子供達を無機質な生き物に変えないためにも市場の役割は大きい。柏市の市民よ市場をもっと大切にしろ!
さて『柏市公設総合地方卸売市場』水産棟の実力は思った以上に高い。例えば、電車を使えば築地まで1時間足らずでたどり着けるだろうけど、そんな必要性は、この品揃えを見るとないように思える。近年地方市場が抱える問題点は丹念に市場まできて品揃えする魚屋、地元のスーパーなどの凋落に起因する。それに加えるとしたら、市場で「自分の目で見て魚を仕入れていく」優秀な板前が少なくなっている。
市場というものが、いかに食に置いて重要な役割を担っているか、食材を知れば知るほど痛感する。食に関わる人々は、市場をもっともっと活用せねばならない。
柏市公設総合地方卸売市場
http://www.city.kashiwa.lg.jp/cityhall/sosiki/B_KEIZ/KEIZ_KOU/kashiwa_ichiba/Index.htm
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/