食べるエビ・カニ学: 2007年9月アーカイブ

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 ボタンエビを食べたことがありますか? 「はーいあります」と答えた方、『市場魚貝類図鑑』のボタンエビのページを見て欲しい。本当に「このエビだろうか?」ね。
 先ず間違いなく、その「ボタンエビ」は同じくタラバエビ科の「トヤマエビ」(これも『市場魚貝類図鑑』で見て欲しい)ではないだろうか? もしもボタンエビを食べていた、あなた、あなたは可なり希少な人である。

 トヤマエビとボタンエビは棲息している地域も、また色合いもまったく違っている。トヤマエビは日本海と北海道周辺、ロシア、アラスカ、カナダでとれる。資源も豊富で市場の「ボタンエビ」のほとんどがコレ。対するにボタンエビは南は熊野灘、北は岩手県沖くらいまででしかとれない。しかもトヤマエビよりも資源が小さい。すなわちとれる量が少ないのである。

 これを八王子総合卸売協同組合『やまぎし』で見つけて買ってきた。残念ながら産地不明。このように仲卸でありながら産地などに無関心という人が多くて困る。

 これを剥いて刺身にする。遅い遅い深夜の一人酒。でも酒は島根の「王禄」だ(島根のヤマトシジミさんありがとう!)。味は日本酒界でも屈指のもの。
 ボタンエビの甘味とまったりした旨味を口に放り込んでは超辛口の「王禄」で洗い流す。

 幸せだなボクって。きっと五十路オヤジには、これが最上級の幸せだろう。外からはアオマツムシの鳴き声が聞こえてくる。まあ外来種のうるさい鳴き声に秋を感じるなんてちっとも風流ではないけれど、ボクは全然悲観していないのだ。我が人生に……、そして「王禄」がなくなったことに……。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑のボタンエビへ
http://www.zukan-bouz.com/ebi/tarabaebi/botanebi.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑のトヤマエビへ
http://www.zukan-bouz.com/ebi/tarabaebi/toyamaebi.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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 カニの産地はいろいろある。先週食べたのは高知県の「エガニ」、そして今週は佐賀県太良町の「カニ」すなわちガザミである。ガザミはほとんど日本全国でとれる。でも量的には少ないもの。近年では中国などから輸入されるほどだから、国産品は高値で安定してきている。
 代表的な産地としては青森県、山形県、三河湾、瀬戸内海や九州が挙げられる。なかでも有名なのが佐賀県太良町である。有明海に面するこの地であがるガザミを竹崎ガニ、太良ガニなどと呼び珍重する。また味にも定評があって、名物となっているのだ。

 話は変わるが、ガザミの漁獲量はこのところ底辺で安定している。これは地球温暖化でガザミよりも南方系のタイワンガザミが増えていることもあるが、明らかに人為的な影響が重いとしかいいようがない。例えば諫早湾干拓など土木業界のための、土木業界と癒着する政治家の、一部利権確保(金儲け)が目的の開発である。たぶん庶民は将来泣きを見るだろうし、ここで農業を始める人に明るい将来はあるのだろうか? 日本中干拓地は膨大にあるが、そんなにうまくいっているとは思えない。耕作放棄地も多いはずだ。こんな悪質な自然破壊が生き物の再生産を阻んでしまっている。また浜辺のリゾート開発など、結局人類だけの我が儘でしかない。余談だがゴルフ関係、ゴルフをやる人が政治や経済政策に関わってはいけない。あれも人類の我が儘、悪質な自然破壊である。自分たちの悪質さを認識しながら生きていって欲しい。例えば朝、シャワーを浴びる、ペットボトルを使う、レジ袋をもらってしまう。これらも悪質なことであり、これを「いけないことだ」と認識しておく必要がある。その点ではボクもろくなもんじゃないと自覚している。出来るだけ止めようと努力もしている。ゴルフしている人にその認識がないのが不思議だ。ちょっと愚かではないか?
 こんな将来的には生きるもの総てに大きなツケとなる開発、人類の我が儘がガザミを減らす結果となっているのだ。また現在でも長崎県、佐賀県などが積極的に新幹線などの推進を行っているが、これも人殺し、生き物殺しの悪質な行為としかいいようがない。この国の土建業界も悪質な政治家と癒着するのではなく明るい未来や自然保護に方向転換して欲しいな。

 さて、最近盛んに入荷いてきている佐賀県のガザミ。「オスはうまいんだけど、メスはね」と八王子魚市場内『源七』店頭でも迷ってしまった。夏のオスガザミはある程度定評がある。その分値段もいいのである。メスの値段もオスにつられるように決して安くない。
 ガザミの産卵期は夏、寿命は二年ほど。一年目のメスは産卵、また冬を越し、翌年の産卵後に死ぬ。だからこの九月初旬のメスは1歳と一ヶ月あまりのガザミということだ。身の味わいは産卵と深く関わるので、これを買うというのは冒険だ。迷っていると『源七』のあんちゃんが「買うのか買わねーのか、はっきりしろ」というので1ぱい400円也を買い求める。

 結果はまずくはないが、感動できなかったし、満足度も低いものだった。何となく水っぽいのである。またミソの旨味も薄い。もう少し待つべきではないだろうか? ガザミのメスを食べるなら。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ガザミへ
http://www.zukan-bouz.com/kani/gazami/gazami.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 最近、活けクルマエビの入荷が多い。まあ、これから冬にかけて多いというのは恒例だが、本来は段ボールの箱におがくずをと一緒に詰め込まれて流通する。大きさにもよるが高値安定でキロ当たり7000円から1万円もする。不思議なのがクルマエビだけは天然ものと養殖物に値段的な差が出ないということ。市場で見ていると野締めの天然物よりも活けの養殖ものの方が明らかに高く、また天然もので大きさにバラツキがあると、また値が上がらない。クルマエビの大きさによって使う飲食店の業種が変わってくる。例えば天ぷらやでは小振りの10グラムから20グラムほどのものを喜ぶし、寿司屋では20グラムから25グラムがいい。あまり大きくなりすぎるとそれこそ洋食でのフライにしか使えなくなるのだ。

 さてクルマエビの大きさと用途などを書いたが、また大きさによって呼び名も変わる。小振りの天ぷらネタに使うものを「さいまき」、寿司ネタ用のものを「中まき」、寿司ネタとしても、天ぷらにもやや大きすぎるな、というのが「まき」である。天然物で25センチ、30センチなんてべらぼうな大きさのを見かけるが、これを「大くるま」なんていう。
 ボクが考えるにクルマエビのいちばん旨いサイズは12、13センチほど、重さ20〜25グラムのものだと思っている。このサイズのエビ独特の風味、甘味、旨味、どれをとっても文句なしである。

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クルマエビの価値を上げているのが、熱を通したときの赤い色合いの鮮やかさだと思う

 さて、中日、水曜日の市場はまことに寂しい限り。荷(魚貝類)自体も少ないし、人影もまばらだ。めぼしいものが何にもないので八王子魚市場内『源七』で「中まき」を数本買い求めてきた。1本25グラムちょうど。明らかに養殖ものであり、産地がわからない。

 これを帰宅後撮影。茹でて、天ぷらにして味をみる。「うーーーん」とうなるほどにうまい。クルマエビがどうしてこれほどにうまいのか? しかも旬はこれからなのに。海の神さんだけが知る謎である。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、クルマエビへ
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夏から秋にかけてのエガニで、いちばんうまいのは巨大なハサミ

 土佐の高知の名物、「エガニ」の正体はトゲノコギリガザミ、アミメノコギリガザミ、アカテノコギリガザミである。なかでももっとも巨大になり、土佐が誇るエガニがトゲノコギリガザミ。なんと過去には3キロなんていうのも珍しくなかった。
 そして旬は冬だ。何と言っても内子を抱えたメスを食べたら、もういっぺんでエガニの虜になってしまう。では夏から秋にはだめなのだろうか? エガニは。と疑問に思っていたら、『土佐の廣丸』永野廣、昌枝さんからオスメスとりあわせてエガニが送られてきた。

 これを蒸して、また茹でて、たっぷり飽食する。また今回は築地土曜会メンバーや『市場寿司 たか』に来たお客さん、市場仲間にも試食してもらった。
 当然、脳にがつんとくるほどの美味、内子はないものの、それに代わるべき身のうまさが楽しめた。この濃厚な旨さをいかに表現しべきか、ボクには言葉がないのだが、むさぼり食うときの沈黙こそ、その証拠となるだろう。
 実はエガニを食らうとき、誰でも野生を感じさせる顔つきになる。試食していただいた方々総てに野生を感じたことを明記したい。

土佐の廣丸への問い合わせは
http://www.k5.dion.ne.jp/~tokusan/
土佐の廣丸のホームページへは
http://www.zukan-bouz.com/zkan/hiromaru/index.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、トゲノコギリガザミへ
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