福島県相馬市原釜、この時期になると産卵に集まった「水どんこ(クサウオ)」が刺し網でいっぱいあがる。
オットサンが近間(前海)でとったものを、港でオッカサンが待ちかまえて、いきなり頭を落として皮をむく。
会津浜街道、すなわち太平洋側は美人の一大産地である。
当然、原釜の女達も美人揃い、魅力的な方が多いのだけど、接岸したクサウオをおもむろに引きちぎるように剥く光景を見ていると、どこか芯の強さや、旺盛な生活力まで感じて、よりいっそう魅力を感じる。
さて、この水どんこを剥いたものを「むきどんこ」というのだけど、関東にもしばしば出荷してくる。
値段は内蔵も頭もなく、真子だけが抱き合わせとなって、キロ当たり500円(卸値)から600円という安さだ。
労力(働き)からすると、まことに浜の女達には申し訳ない気がする。
普通はこの剥いたクサウオを煮つけにする。
身は繊維を欠き、ボロボロになりやすいが、白身で上品なので煮つけると味つけ次第ではなかなかいけるのだ。
なにしろ真子がおいしいので、それだけでも価値は高い。
また味噌と煎りつけて細かくでんぶ状にしてご飯にかけてもうまい。
原釜、久ノ浜などでは生のままぽん酢で食べるのだけ、これもなかなか面白い味だ。
さて、いろいろ産地での食べ方はあるものの、よりうまい食べ方はないのだろうか?
どれも地味で、主役にはなれそうにない料理ばかりだ。
それで昆布締めにしてみた。
たくさん買い込んで、出来たものを、すしとして握ってもらったら、まったくうまくもなんともない。
当たり前だけどクサウオは昆布締めにしてうまくないのだ。
さて、この昆布締めをいかにすべきか?
捨てるわけにもいかないし。
それで今回は締めた昆布に乗せたまま、強火で焼いてみた。
これがうまいのだ。
塩味控えめなのでぽん酢で食べたのだけど、水分の多い身が適度にしまり、昆布の香りが立つ。
端的にうまい。
クサウオの個性も、身自体のうまさも、そんなに感じないし、あえてクサウオでなければならない理由もないのだけど、やはり絶品ではある。
ようするにクサウオの昆布締め焼きは、クセのない魚を焼き、魚の味よりもぽん酢とか昆布の風味を楽しめる。
結論からすると、クサウオは浜の女達に教わった食べ方で食べるべきだと、改めて思い至る。
そう言えば未利用魚を活用しようなんて、水産庁などでも宣伝しているが、このような試行錯誤、挑戦をやらなきゃ道はひらけない。
ボクなどすでに未利用魚に挑戦して30年にもなるが、日々まずいもの、とても食べられないものを食べて、しかもまた食べようとしているのだ。
昨今のグルメ雑誌などを見ていると「うまそうなもの」ばかりが載っている。
これがまことにつまらないし、くだらない。
だいたいグルメ雑誌の写真はありとあらゆる印刷技術を駆使してうまそうに作り変えているのだ。
あえてつけ加えると「そんなにうまいものだけ食ってどうするの」とも聞きたいね。
そろそろボクも「まずいものを食うからうまいものがわかる会」を作り会長になろうかな?
2009年1月29日
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、クサウオへ
http://www.zukan-bouz.com/kasago/kusauo/kusauo.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/
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